Z世代が学び、伝える「セルフケア」 第一三共ヘルスケアの出張授業が拓くヘルスリテラシーの未来
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情報があふれる今、健康に関する誤情報も後を絶ちません。「自分の健康は、自分で守る」、そんなセルフケアの意識を若い世代に届けるべく、第一三共ヘルスケア株式会社は出張授業を実施しています。Z世代に向けて、正しい知識と自ら発信する力を育むこの授業の集大成となる発表会をレポートし、企業のサステナビリティ活動を考えます。
Z世代から広がる「セルフケア」の輪
市販薬の選び方、スキンケア、オーラルケア、食生活など、暮らしに深く関わるこれらのテーマは、情報があふれる現代だからこそ、正しい知識が求められています。
第一三共ヘルスケア株式会社は、100年後も人と社会と地球が健やかであり続ける未来の実現を目指し、サステナビリティ活動を推進しており、その「健康課題」への取り組みの一環として「セルフケアアカデミー」を展開。「セルフケアアカデミー」では、その施策の1つとして、東京・福井・静岡・大阪・福岡の各地で、Z世代に正しいセルフケアを伝える出張授業を行っています。
2025年9月には、東京(中村中学校・高等学校、成女高等学校合同)にて、7コマにわたる学びの集大成となる授業を開催。生徒たちは、授業で学んだセルフケアの大切さと実践方法を啓発する動画を制作し、その成果を発表しました。
授業の冒頭では、第一三共ヘルスケア サステナビリティ推進マネジャーの岩城氏が、「インターネットやSNSには誤った情報や根拠のない情報も多く存在しています」と語り、生徒たちに正しい情報を見極める力と、自分自身で健康を守る力の大切さを伝えました。


今回、生徒たちが4つのチーム(1チーム4〜5人/合計18人)に分かれ、以下のテーマで動画を制作しました。
・スキンケアのHow to動画
・市販薬選びのHow to動画
・市販薬のいろは動画
・食生活・栄養のいろは動画
各チームは動画の上映前にプレゼンテーションを行い、制作の背景や工夫した点を紹介。プレゼンにも熱がこもっており、動画本編への期待を高める導入として、大きな役割を果たしていました。
また、当日は対面・オンラインの垣根を越えた協働が実現し、発表会は終始活気と集中力にあふれたものに。中には前日の夜まで編集作業に取り組んでいたチームもあり、会場は生徒たちの熱意に包まれていました。


ユニークな発想と本気の調査で動画を制作
最終授業では、ロング動画部門、ショート動画部門、総合部門の3カテゴリーに分けて審査が行われました。審査基準は「メッセージの明確さ」「表現・構成の工夫」「内容の信頼性・正確さ」「斬新さと面白さ」の4項目です。
ショート動画部門と総合部門の1位に輝いたのは、「スキンケアのHow to」チーム。ショート動画では、スキンケアに関しての「○×クイズ」を盛り込み、ロング動画では恋愛ドラマ仕立てのストーリーの中に、紫外線対策や日焼け止めの使用といったセルフケア要素を自然に組み込んだ構成が印象的でした。短時間の中でも伝えたいメッセージが明確に伝わる点が評価され、審査員からは「視聴者の関心を引きつけながら、正しい情報をしっかり届けている」と高く評価されました。


一方、ロング動画部門の1位に選ばれたのは、「食生活・栄養のいろは」チーム。ダンスを交えたストーリー構成で、食事を抜くと体がうまく動かなくなる様子を描きながら、栄養の大切さを視覚的に訴えかけました。テーマが身近であることに加え、「楽しく見られて、学びもある」バランスの取れた内容が評価されました。
そのほか、「市販薬選びのHow to」チームは、実際に薬局を訪問して薬剤師にインタビューを行うなど、リアルな現場取材を取り入れた内容に。薬の成分や服用方法の違い、選び方のポイントを紹介し、製品画像を組み合わせた見やすい構成が特長でした。
「市販薬のいろは」チームも、誤解されやすい情報を整理しながら、日常生活で役立つ正しい知識をわかりやすく伝える動画を制作。どの動画も、Z世代らしい視点と表現力を活かした作品に仕上がっていました。


学びが行動に変わった
授業後の生徒たちの感想からは、確かな変化がうかがえました。
「美容についてはよく調べていたけれど、セルフケアに関しては思い込みも多く、今回調べてみて嘘じゃない本当の知識を学べてよかったです」
「市販薬選びのHow toチームの動画を見て、お店に行って薬剤師に直接薬の選び方を聞くという方法もあるんだなと、とても参考になりました」
「学校や学年が違うメンバーとチームで協力して動画を作っていくのが本当に楽しかったです」
先生からは、次のような声が寄せられました。
「生徒たちはSNSなどを通じて、膨大な情報に日々触れていて、それらを処理している様子には驚きと感心を覚えます。一方で、入手する情報に偏りがあるようにも感じており、教師として生徒たちが正しい情報にアクセスできるスキルを身に付けられるようにしてあげたいと思っています。今回のプログラムは、生徒たちにとって良い機会になったと思います」
「薬に関するテーマもあり、やや難しい内容だと思いましたが、各チームでしっかりと情報を調べ、ていねいに動画を制作しており、その姿に安心するとともに頼もしさを感じました」
表彰式では、受賞チームの生徒が感極まり涙する場面もあり、それぞれの取り組みがいかに深く心に残るものだったかを物語っていました。




世代に合った学びが可能性をひらく
今回の出張授業は、単なる知識の習得にとどまらず、主体性を育み、発信力を高める実践の場となりました。とくに「動画制作」という形式が、Z世代にとって自然に没入できる方法であったことが功を奏したように見受けられます。
情報の取捨選択だけでなく、伝える力、共創する力、リーダーシップ、そして「自分ごととして健康を考える姿勢」まで。セルフケアをきっかけに、未来を担う若者たちがさまざまな力を育んだ授業となりました。


SDGs時代における企業の役割
こうした取り組みの背景には、第一三共ヘルスケアが掲げるサステナビリティ・コンセプト「Wellness for GOOD」の存在があります。このコンセプトは、「健やかであること(Wellness)」と「良い目的のために」、そして「ずっと(for GOOD)」を掛け合わせたもので、100年後も人と社会と地球が健やかである未来を目指すという意志を示しています。
このコンセプトのもと、同社は「People(健やかな体と心へ)」「Society(健やかな社会へ)」「Earth(健やかな地球へ)」という3つの重点領域を定め、企業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでいます。今回の「セルフケアアカデミー」は、その中でも「People」領域を体現する代表的な活動と言えるでしょう。
今回のようなリアルな授業に加え、オンライン教育も展開し、その両輪で若い世代が誤情報に惑わされずに正しい知識を選び取る力を育み、自らの健康を守る意識を高めていく。さらに、SNSなどを活用しながら、周囲へ発信していくスキルを磨くことで、個人の意識変容だけでなく、社会全体の医療リテラシー向上にもつながっていきます。これは、予防医療の促進や医療費の適正化といった、より大きな課題にも応えるアプローチとなるはずです。
また、事業面においても同社は、OTC医薬品(処方箋なしで、一般消費者が自らの判断で購入・使用できる薬)にとどまらず、機能性スキンケアやオーラルケア、食品分野へと領域を拡張。スローガン「Fit for You 健やかなライフスタイルをつくるパートナーへ」のもと、生活者一人ひとりに寄り添いながら、多様なニーズに応える製品と情報を届けています。
セルフケアを広げることは、人々の不調を防ぎ、社会の持続可能性を支えることにもつながります。Z世代との対話を通じた今回の取り組みは、未来に向けた企業のあり方を体現する実例のひとつとなりました。
執筆 / フリーライター 小見山友子






