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エネルギーをみんなに。そしてクリーンに!再エネを無駄にしない“新しい電気の使い方” 「DR」をはじめよう


この記事に該当する目標
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 13 気候変動に具体的な対策を
エネルギーをみんなに。そしてクリーンに!再エネを無駄にしない“新しい電気の使い方” 「DR」をはじめよう

9月末に、「グローバル・ゴールズ・ウィーク」=SDGs週間がありました。世界が持続可能な未来に目を向けるちょうどこの時期、考えてみたい“ある現象”があります。

それは、太陽光などの再生可能エネルギーの普及により、春や秋の昼間に“電気が余る”現象。これについて知る人はわずか25%(※1)と多くありませんが、電気が余った際には発電を止める「出力制御」という措置で対応せざるを得ず、せっかくつくった再エネが“有効活用されていない”現実があります。

こうしたなかで、注目されているのが「DR(デマンドレスポンス)」という新しい仕組み。電気が余る昼間に洗濯や給湯を行うことで、再エネを無駄なく活用し、暮らしをよりサステナブルにできます。これを環境省は「デコ活」と呼び、再エネの導入拡大で急務とされる昼間の電力需要創出を盛り上げ、”昼間に電気を使う”という新しい暮らし方を提案しています。

※1:ボストン コンサルティング グループ「昼の再エネ余剰電力需要創出に向けた消費者行動変容に関する調査」

再エネ普及の裏で広がる“電気が余り、有効活用されていない”課題

日本の電気は今、大きな転換期を迎えています。経済産業省の計画によると、2040年には発電される電気の約半分を再生可能エネルギーが占め、2022年の約2割から倍増する見込みです。これは、地球にやさしい電気が増える大きな一歩。しかし、その一方で新たな課題が生まれています。

それは、電気が“余る”だけでなく、実際にはせっかくつくった電気を使いきれずに“有効活用されていない”時間帯が増えていることです。特に昼間、太陽光発電が活発な時間帯は、需要を上回る電気がつくられ、バランスを取るために発電を一時的に止める「出力制御」という措置がとられることもあります。せっかくつくった再エネを有効活用しないのは、CO₂削減のチャンスを逃す“もったいない”対応です。
「出力制御」によって無駄になる電力量は、年間ベースで数十億kWh規模に拡大しています。2024年度の全国合計で約16億kWhに達したとの推計があり(※2)、一般家庭1世帯あたりの年間使用量3,950kWhを基準にすると(※3)、約40万世帯分に相当します。

※2:経済産業省「再生可能エネルギーの出力制御に関する短期見通し等について」
※3:環境省「令和4年度家庭部門のCO2排出実態統計調査」 資料編● 

「出力制御」は3年で約2倍に拡大

「出力制御」が行われたのは、2022年度の94日から2024年度には173日と、わずか3年で約2倍に増加しています(※4)。これは、年間のほぼ半分、日本のどこかで発電が止まっていたことを意味します。秋(10〜11月/計61日間)は特に「出力制御」が多く見られ、2023年度は61日のうち40日(65.6%)、2024年度も33日(54.1%)実施されました。曜日別に見ると、土曜日・日曜日の発生割合が高く、特に日曜日は3日に2回の割合で「出力制御」が起きています。休日は工場やオフィスの電力需要が減る一方で太陽光などは発電し続けるため、電気が余りやすいのです。つまり、休日は電気が余るリスクが平日より高く、「出力制御」対策がより重要になるタイミングです。

エリア別では、九州・四国エリアが高水準(30%超)を記録。さらに2025年度には、これまで未実施だった関東エリアでも初の「出力制御」が予測されています。こうした事実が示すのは、“電気が余る現象が全国的に広がっている”ということ。再エネをより活かすには、電気をつくる側の工夫に加え、使う側の新たな行動も欠かせません。

※4:「出力制御」の発生日の日数の算出は、全国の一般送配電事業者各社が公開している「再生可能エネルギー出力制御指示内容」の資料を元に作成

この秋はじめよう!昼に電気を使う「上げDR」で地球にも家計にも優しい暮らし

そこで今注目されているのが「DR(デマンドレスポンス)」。DRには、電気が不足するときに使用を減らす節電型の「下げDR」と、電気が余っているときに使用を増やすシフト型の「上げDR」の2つのタイプがあります。 

再エネをより有効に活用するために効果的なのが、「上げDR」。電気が豊富な時間に“積極的に使う”取り組みです。太陽光発電で電気が余りやすい昼間に洗濯や掃除、給湯の時間をシフトするだけで、再エネを無駄なく使えます。さらに、電力会社のプログラムに参加すると、協力に応じてポイント還元や料金割引などの特典が受けられるケースもあり、エコとおトクを同時に実現できます。

<今日からできる「上げDR」 !昼にシフトする工夫>
・昼に炊飯し、夕食の準備を早めにする
・休日の昼にお菓子作りをする
・タイマーを使って昼に洗濯、乾燥する
・アイロンがけや掃除を昼間に行う
・給湯の湯沸かし設定を昼に変更

「上げDR」のチャンスは、春や秋の晴れた休日の昼間。この時期は太陽光発電がフル稼働する一方、冷暖房の需要が減り、電気に“ゆとり”が生まれます。この時間帯に家事をシフトすれば、地球にも家計にもやさしい暮らしにつながります。覚えておきたいキーワードは「上げDR日和」。それは、春や秋の晴れた休日の昼間、太陽光発電で電気がたっぷりつくられ、冷暖房や工場稼働が減って電気に“ゆとり”があるタイミングのことです。この時間帯に洗濯や給湯などの家事の時間をシフトすれば、再エネを無駄にせず、地球にも家計にもやさしい暮らしにつながります。

公式に「上げDR」が行われる日は、天候や需要状況に応じて、各電力会社が決定します。事前にプログラムへ登録しておけば、実施日の前日に、電力会社からメールやアプリで通知が届き、タイミングを逃さず参加できます。取り組みに応じてポイントや料金割引など、参加メリットがあるので、ぜひチェックしてみてください。

DRプログラム①|東京電力エナジーパートナー「エコ・省エネチャレンジ」
実施時期:2025年10月13日(月)〜11月9日(日)
電気を使用する時間をシフトし、指定された時間帯の使用電力量が増加した場合、その量(=「負荷移行量」)に応じてポイントがもらえる取り組みです。参加登録すると、実施日の前日にメールで通知が届きます。日常の家事(洗濯・掃除・給湯など)を昼間にシフトすることで、手軽に再エネ活用に取り組めます。
https://www.tepco.co.jp/ep/private/savingenergy/lp/ecochallenge.html

DRプログラム②|中部電力ミライズ「NACHARGE」
実施期間:通年実施
電力の需給状況に応じて、当日までに「上げDR」または「下げDR」の依頼が、メールまたはカテエネアプリのプッシュ通知で届きます。 依頼内容に合わせて電気の使い方を調整し、アクションを達成すると「カテエネポイント」がもらえます。通知を確認して対応するだけなので、日常生活に合わせて無理なく手軽に参加できることが特長です。
https://katene.chuden.jp/clubkatene/nacharge/

DRプログラム③|東北電力「東北電力ecoチャレンジ」
実施期間:実施期間:春(3月〜6月)および秋(10月〜11月)
電力の需給バランスにあわせて、自分で電気の使用パターンを変化させることができます。東北電力が提供する「東北電力ecoチャレンジアプリ」を活用し、指定する時間に参加者が電気利用をシフトすることにより、達成量に応じたポイントを受け取ることができます。
https://www.tohoku-epco.co.jp/dprivate/sl-denka/saving/dr/

この3社のほかにも、全国の電力会社でさまざまな家庭向けDRプログラムが展開されています。実施期間や特典は各社によって異なりますので、関心のある方は各社の公式情報をチェックしてみてくださいね。

No. 企業名 サービス名称 実施期間 概要
脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動「デコ活」
https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/


執筆/フリーライター Yuki Katagiri