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「毎日トラック130台分の服がゴミに」衣類廃棄の現実と循環経済への挑戦、3R推進月間に考えるファッションの未来


この記事に該当する目標
12 つくる責任つかう責任
「毎日トラック130台分の服がゴミに」衣類廃棄の現実と循環経済への挑戦、3R推進月間に考えるファッションの未来

10月は「3R推進月間」。このタイミングで考えたい、私たちの暮らしに身近な「衣(ファッション)」と環境の未来。
クローゼットに眠っている服、サイズが合わなくなった一着。私たちは日々、多くの衣類に囲まれて生活していますが、その裏側で深刻な問題が進行していることをご存知でしょうか。実は、日本の家庭から手放される衣類の約62%にあたる年間約48万トンが、再利用されることなく焼却・埋立処分されています(※1)。これは、私たちの選択が環境に大きな影響を与えているという現実の表れです。
なぜ、これほど多くの服が捨てられてしまうのか。そして、この課題を解決し、持続可能な未来を築くために、私たちに何ができるのでしょうか。今回は、衣類廃棄の現状から、新しい経済モデル「サーキュラーエコノミー」の可能性、そして私たちが今日から始められるアクションまで、その最前線をお届けします。

見過ごされてきた現実:毎日トラック130台分の服がゴミになる

年間約48万トンという廃棄量は、にわかには想像しがたい数字かもしれません。これを私たちの日常に引き寄せてみると、その深刻さが浮かび上がります。この量は、平均すると1日あたり大型トラック約130台分に相当するのです(※1)。毎日、膨大な量の衣類が、資源としてではなく「ごみ」として処分されている。

さらに問題なのは、廃棄される服の背景にある環境負荷です。服1着を生産する際には、約25.5kgものCO₂が排出されます(※2)。これは、500mlのペットボトル約255本を製造する際の排出量に匹敵します。つまり、服を捨てるという行為は、単なる「ごみ処理」の問題にとどまらず、生産過程で費やされた大量のエネルギーや水、そして資源そのものを失う「二重のロス」なのです。

世界が動く、日本が向き合うべき3つの変化

このような課題に対し、世界では「使い捨てる」リニアエコノミー(直線経済)から、資源を「捨てずに繰り返し使う」ことで新たな価値を生み出す「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への移行が加速しています。この流れは、もはや単なる環境対策ではなく、企業の経営戦略や国の競争力をも左右する大きな転換点です。その背景には、3つの大きな外部環境の変化があります。

1.  国際規制の強化
    これまで日本は大量の廃棄物を海外に輸出することで処理してきました。しかし、「バーゼル条約」により有害廃棄物などの国境を越える移動が厳しく規制され、国外への依存は困難になっています。国内の最終処分場にも限界が近づいており、廃棄を前提とした従来の仕組みは見直しを迫られています。

2.  成長を続けるリユース市場
    国内のリユース市場は着実に成長を続けています。2023年の市場規模は3兆1,227億円に達し、2030年には4兆円規模に達すると予測されています(※4)。フリマアプリやネットオークション、リペアサービスなど多様なチャネルが登場し、消費者にとってリユースがより身近な選択肢となりつつあります。

3.  消費者意識のシフト
    物価上昇による節約志向と、気候変動問題への関心の高まりから、消費者の価値観は「安さ」から「持続可能性」へとシフトしています。特に若年層を中心に、リユースやレンタルを「賢く合理的な選択」と捉える人々が増加。環境価値を提供できるブランドが選ばれる時代が来ています。

楽しみながら参加できる!循環を広げる3つのプロジェクト

こうした大きな変化のなか、企業もまた、サーキュラーエコノミーを新たな成長戦略として捉え、ユニークな取り組みを始めています。ここでは、私たちが楽しみながら循環の輪に参加できる3つの先進的なプロジェクトをご紹介します。


株式会社ECOMMIT
「捨てるインフラはあるが、楽しく手放す仕組みがない」という課題に対し、LINEのミニアプリで簡単に宅配回収を依頼できる「宅配PASSTO」を展開。日常の延長線上で、誰もが気軽に不要な衣類や雑貨を次の使い手につなぐことができる、新しい循環型のライフスタイルを提案しています。・

株式会社ECOMMIT「宅配PASSTO」
概要:LINEミニアプリから不要品の宅配回収を申し込み、手軽に環境貢献できるサービス。
URL:https://www.passto.jp/homepickup/


JR西日本SC開発株式会社
相撲の決まり手から着想を得た「服の決まり手82手」プロジェクト。「服を捨てる以外にも、こんなに方法がある」という気づきを、リユースやリメイクなど82通りのユニークな「決まり手」として提案します。真面目な環境活動としてではなく、自分らしい選択を楽しむことを重視したアプローチが特徴です。

 JR西日本SC開発株式会社「服の決まり手 82手」
概要:服を捨てる以外の82通りの方法を提案し、楽しみながら循環に参加できるプロジェクト。
URL:https://fukunokimarite82.jp/


バリュエンスジャパン株式会社
スポーツチームのユニフォームなど、本来の役目を終えたアイテムをバッグやアパレルにアップサイクル。「好きなチームを応援したい」という「推し活」の熱量を起点に、ファンが楽しみながら循環に関わる体験を提供しています。ファンと企業、地域が連携した新しいサーキュラーエコノミーの形です。

バリュエンスジャパン株式会社
概要:スポーツ・エンタメ業界の商材をアップサイクルし、新たな価値を創出する事業。
URL:https://auction.hattrick.world

私たちの一着から始める、豊かな未来へのアクション

サステナブルファッションを推進する一般社団法人ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)の有識者たちは、今後10年でサーキュラーエコノミーは企業にとって「選択肢」ではなく「必須」になると口を揃えます。それは、私たち消費者にとっても同じかもしれません。
環境と経済のどちらかを選ぶのではなく、その両方をつなぐ「成長の新しい道」がサーキュラーエコノミーです。私たちの小さな選択が、この大きな循環の輪を動かす力になります。

<今日からできるサステナブルファッション>
・クローゼットの中を見直し、1年以上着ていない服がないかチェックしてみる。
・紹介されたプロジェクトのサイトを訪れ、自分に合った手放し方や楽しみ方を探す。
・次に服を購入する際は、「長く大切に着られるか」という視点を加えてみる。

まずは、あなたのクローゼットに眠る一着から、未来を変えるアクションを始めてみませんか。
今週末、着なくなった服を整理し、リユースサービスを調べてみること。それが、持続可能な社会に向けた、確かで大きな一歩になるはずです。

※1:環境省「令和6年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」報告書
※2:環境省「令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務」報告書
※3:環境省「令和6年度リユース市場規模調査」報告書
※4:環境省「令和6年度リユース市場規模調査報告書」/ リユース経済新聞 「リユース市場データブック2024」