東京2025 デフリンピックが開催される東京を舞台に、字幕を添える—聞こえの壁をなくす「YYSystem」が描く共生社会
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株式会社アイシンが、音声認識アプリ「YYSystem」を活用したプロジェクト「世界に字幕を添える展 in 東京」を、11月15日(土)から12月7日(日)まで開催中です。この期間は、国際的なスポーツイベントである「デフリンピック」開催に伴い、社会全体でコミュニケーションについて感じ、考える機会が身近にありました。プロジェクトでは、この機運を捉え、「聞こえ」や「言語」の壁を無くすことを目指します。
「世界に字幕を添える展」で、誰も取り残されない社会の実現について考える
デフリンピック開催直前、そしてプロジェクトの実施にあたり、 東急プラザ原宿「ハラカド」7F シブヤフォントラボで行われた『東京に字幕を添える会議』。オープニングトークではまず、YYSystem 開発責任者の中村さんが、このシステムについて紹介しました。


YYSystemは、世界にいる”20億人以上の聞こえの課題をもつ人が当たり前に会話できる社会”を目指し開発された、話し言葉を文字にしたり、音を目で見える形にできる独自のアルゴリズムを使った意思疎通システム。聴覚に障がいのある⽅々を主な対象に、「いつでもどこでも、誰とでも会話ができる・⽣活環境を可視化できる」ようにするためのものです。


中村さんは、今年5月に行われた「世界に字幕を添える展」で、ハラカド内の21のテナントにYYSystemを導入し、1300人以上の方に利用されたときのことを振り返り、「これを1日のイベントで終わらせてはいけない」と感じたと語りました。今回再び行われる「世界に字幕を添える展 in 東京」では、デフリンピックで訪れる海外の人たちにも日本のおもてなしを感じてもらいつつ、字幕があるとこんな風に便利だということ、でもまだまだ課題があるということ、そんなことを感じてもらいたいと言います。
トークセッション①デフリンピック直前!聞こえや言語の違いを越える街へ!
中村さんの挨拶のあと、最初に行われたトークセッションには、「デフリンピック直前!聞こえや言語の違いを越える街へ!」をテーマに、東京 2025 デフリンピックサッカー競技のスペシャルサポーターを務める北澤豪さん、大会を目前に控えたデフサッカー男子日本代表・林滉大選手、デフサッカー女子日本代表・國島佳純選手が登壇。
デフリンピックについて國島選手は、「4年に1回行われるところはオリンピックと同じ」だと説明し、「今回、東京で行われる、100年目というすごく大きな記念の大会で競技に出られることを嬉しく思います。」とコメントしました。


林選手もデフサッカーについて、「聴覚障害を持っている人がするサッカーで、ルールは一般のサッカーと全く同じ」と説明したうえで、「デフサッカーでは補聴器を外し、全く聞こえない状態で行うため、視野を広くもって行うことが大事」だと話しました。
北澤さんは、デフサッカー選手の林選手らについて、「我々とレベルは変わらないし、メダルも期待できる」としつつ、デフサッカーは接近戦が多く、ぶつかるシーンも多いという特徴があるので、そういった部分に注目して観戦してもおもしろいのでは、と語りました。


また北澤さんは、デフリンピックのユニフォームが2024年のパリオリンピックで選手が着ていたものと同じデザインであることをあげ、「デフリンピックは健常者が、障がい者が、と分けずに、誰もが同じ気持ちで日本代表を応援できる大会」だとコメント。さらに、「デフリンピックを開催する国として、まちづくりも使命だと思う」と話し、会場やそのほか様々な場所に設置されるYYSystemの広がりにも期待を寄せました。


最後に司会者から、聴覚障害のある人に向けたメッセージを求められると國島選手は、自身がもとは野球をしていて、そのスキルを活かして現在サッカーでキーパーとして活動していることを紹介。(野球選手にはなっていないけれど、サッカー選手になれた自分のように)諦めないことが大切だと語りました。
林選手は、聞こえる人ともプレイしてきた中で、理解しあえなくて苦しんだこともあったと話し、「デフリンピックを見ることでお互いの理解を深めてほしい。聞こえないことで、夢を追えなくなることをなくしたい。そのためには自分も、結果もしっかり残したい」と意気込みを語りました。
トークセッション②世界に字幕を添える展 in 東京 に向けて
続いてのトークセッションは、前半・後半に分けられ、「世界に字幕を添える展 in 東京」に向けて、さまざまな人たちがそれぞれの立場で今回のプロジェクトの意義を語りました。


前半には、今回のプロジェクトを応援する、映画監督の河合健さん、映画プロデューサーの小澤秀平さんが登場。二人は、11月29日より公開の、日本人のろう者とクルド人の聴者が登場する「みんな、おしゃべり!」という映画で、実際にYYSystemを使用して撮影を行ったそうで、「YYSystemは、話したことが一言一句そのまま表示されるのですごく便利だった。これまでは微妙な間違いやタイムラグなどでこう言ったシーンで実際の翻訳サービスを使った例はほとんどなく、そのまま使えたと言うのはかなり革命的」とシステムの精度の高さを非常に高く評価していました。
後半は、世界に字幕を添える展の公式インフルエンサーで YYSystem のアンバサダー、応援者である吉田まりさん、難聴うさぎさん、手話パフォーマーの北村仁さんが登壇。吉田さんは、「YYSystem は家の中でも外でもいつも使用しています。コミュニケーションの方法の一つとして、これから字幕がある世界が当たり前の世界になってくれるといいなと思います。」とコメントしました。難聴うさぎさんは「学生時代に大人数の会話で気を遣って聞こえているふりをしていたので、頭の上に吹き出しが出るとか(笑)、コミュニケーションのシーンに文字起こしアプリがあったら良いなと思いました。」と、自身の経験をもとにアイディアを出していました。また、普段、聞こえにくい方と聞こえる方のコミュケーションのサポートを行なっているという北村さんは、このプロジェクトをきっかけに、YYSystemがこれからどんどん広がっていくことを楽しみにしている様子でした。


YYSystemのような意思疎通支援技術は、単なる便利ツールにとどまらず、「誰も取り残さない」社会の鍵となるテクノロジーです。聞こえや言語の壁を取り除き、人と人、国と国を“つなぐ”技術は、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」に深く通じます。
デフリンピックでは、多くの日本人選手の活躍が繰り広げられました。100年目と言う節目のデフリンピックが行われた東京から始まるこのプロジェクトは、字幕という優しいテクノロジーを通じて、世界中に“共に生きる”というメッセージを届けてくれることでしょう。
・世界に字幕を添える展 in 東京
実施場所:東京の街全体
開催期間:2025 年 11 月 15 日(土)〜12 月 7 日(日)
関連プロジェクト、イベント:YYMaps による街歩きサポート、デジタルスタンプラリー『わいわいフレンズを探せ!』、世界に字幕を添えるコンテスト ほか
特設 URL: https://join.yysystem.com/
フリーライター Yuki Katagiri





