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一本の箸から考える、「つくる責任・つかう責任」 ー東京に残る箸職人と、AKOMEYA TOKYOの大人の社会科見学


この記事に該当する目標
12 つくる責任つかう責任
一本の箸から考える、「つくる責任・つかう責任」 ー東京に残る箸職人と、AKOMEYA TOKYOの大人の社会科見学

ごはんをおいしく食べるのに欠かせない、日本の食卓に当たり前に存在する「お箸」。しかしその裏側で、都内に残る箸職人の工房はわずか数軒しかありません。
こうした中、AKOMEYA TOKYOが行ったのが、そのうちのひとつ、川上商店での「大人の社会科見学」です。

使い捨て文化が加速する中、素材を選び、手をかけ、思いをのせて使える価値ある一膳をつくる—そんなものづくりの現場から、持続可能なものづくりについて考えました。

AKOMEYA TOKYOと訪ねた明治時代から続く老舗の箸工房「川上商店」

お米やごはんのお供、食器などを扱うライフスタイルショップAKOMEYA TOKYOは、作り手と使い手を繋ぐ“カタリスト”として、全国のつくり手の技術や想いを日々発信しています。

今回行われた「アコメヤの大人の社会科見学」は、そんなアコメヤが2026年1月に発売予定の新商品「江⼾唐⽊箸五⾓昇⻯⼤・中」の販売に先立ち企画したもの。見学先は、この箸を手掛ける「川上商店」です。

明治時代、東京・某箸店の職⼈として腕を磨き、その後独⽴した川上商店初代の川上千吉さんは、創業当初より⽊箸に⼒をいれて製造を⾏ってきました。戦後、安価で簡単に作れるプラスティック箸が主流になっても、⽅針を曲げることなく、より使いやすい⽊箸を追求。東京・日本橋馬喰町で、その精神を今も受け継ぐのが現在の川上商店です。

日本の食文化に寄り添ってきた木箸

「箸」と一口に言っても、素材も、形も、さまざまなものがあります。大皿料理の多い中国の箸は長くしっかりしたものが多く、韓国の箸はキムチなどのにおいうつりがしにくいステンレスが主流です。

明治時代から続く川上商店が伝統の技術で作り出す箸は、豆や魚の小骨、こんにゃくのような、小さいもの、滑りやすいものも掴みやすく、日本人の食習慣に合った作りになっています。持ち手の部分には滑らないような工夫がされており、先端はつまみやすいよう細く。実際に使ってみると本当に魔法のようで、他の箸ではツルツル滑ってつかめなかったこんにゃくが力を入れずに軽くつかめてしまうから驚きです。

川上商店が作る繊細な木箸は、小さな子供や、手の動きが悪くなってしまった人にも使いやすい、優しい箸。まさに“選ぶ価値のある箸”だと感じます。

素材と向き合う、持続可能なものづくり

今、日本の箸の8割は、福井県の小浜市で作られている、若狭塗のものです。しかし以前は、東京の木箸も多く流通していました。東京はかつて、家を建てる際欠かせない床柱の産地でした。そのため東京の木箸は、床柱の端材を使って作られていました。

木の箸は、こうした端材から作ることができるのも特徴です。今川上商店で扱っている木箸には、電柱として使うため、たくさん植えられた”唐松”を使った箸もあります。電柱のためにたくさん植えられた唐松ですが、今では新たに電柱を作ることは昔ほどはありません。そうして余っている唐松を箸の材料として使っているのです。

ただ、実際には今は、床柱の端材で箸を作るという昔のような作り方はなかなかできていないそう。川上商店の現社長、川上さんは、「昔に帰って、また日本の材料で箸作りができないか模索中」だと言い、国内の材料を使って箸を作ることができる工場を長野県の小諸市に作ったことも教えてくれました。

実は、自分の箸、”マイ箸”を持つのは日本人だけだと言われています。「箸には魂が宿る」と言われ、新年に新しいものに替えたり、結婚祝いに贈ったり、捨てる際には折ってから手放したりする文化は、箸を単なる消耗品としてではなく、大切に扱う対象として捉えてきた証でもあるでしょう。しかし現代では、安価で大量生産された箸が当たり前になり、背景にある素材やつくり手の存在を意識する機会は減っています。

一膳の箸がどのような素材から生まれ、どれほどの手間と工夫を経て完成するのか、それを知った上で、「選んで使う」ことは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」が目指す、持続可能な消費のあり方そのものです。

日々の食卓で手に取る一膳の箸から、ものづくりの未来や資源との向き合い方を考える。AKOMEYA TOKYOの「大人の社会科見学」は、そんな小さな選択が、持続可能な社会へとつながっていくことを教えてくれる時間でした。


執筆/フリーライター Yuki Katagiri