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「SKYDOOR」がひらく超高層と自然をつなぐ新たな境界


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「SKYDOOR」がひらく超高層と自然をつなぐ新たな境界

3月18日、港区芝浦の「ブルーフロント芝浦」で、小松ウオール工業株式会社による高層建築用・外装用移動間仕切「SKYDOOR」の新製品発表会が開かれました。
超高層建築では、これまで安全性や快適性を確保するため「開かない窓」が一般的なのに対して「SKYDOOR」は、その常識を見直し、高層階でも都市の空気や音、光を感じられる空間づくりを目指した製品です。

発表会では、技術面の説明に加え、建築家との対話を通して、これからの都市空間や働く環境のあり方についても触れられました。

高層建築に生まれた「開く外装」という発想

「SKYDOOR」は、高層建築用・外装用移動間仕切として開発された製品。
発表会では、地上約138mの高層階に設置された幅10.6m、高さ3m、6枚のパネルによる大開口の空間が披露されました。従来の超高層ビルでは、強風や豪雨から室内を守るため、外装サッシは閉じられたままであることが一般的でした。そのため、高層階ならではの眺望はあっても、外の空気や都市の気配を直接感じることは難しい状態にありました。

今回の製品は、こうした内と外の境界に着目し、開放感のある新たな空間体験を生み出す試みといえます。開発では、安全性能が大きな課題だったとされ、耐風圧性、気密性、水密性の確保に加え、日常的に使える操作性も求められました。

「SKYDOOR」は、止水バリアなどの機構によって、開放性と機能性の両立を図ることで、高層環境で求められる安全性を確保するための技術的な工夫が重ねられていることも説明されました。
単に開く設備ではなく、その場所で過ごす人の過ごし方に関わる建築要素として設計されている点が特徴です。

働く環境を問い直す建築の役割

発表会後半のトークセッションでは、建築家の亀本ゲーリー氏らが登壇し、「高層建築の未来を変える動く境界」をテーマに議論が交わされ、製品の新しさだけでなく、都市建築やオフィスの役割を捉え直す視点についても議論されました。

亀本氏は、コロナ禍を経て、人が新鮮な空気を吸い、太陽の光にあたり、自然と対話できる環境の大切さに改めて目が向けられるようになったとし、かつては密閉性の高い環境を整えることが快適さの象徴でもあったと語りました。
現在ではその価値観に変化が生まれ、オフィスの役割も変わりつつあります。また、決まった時間に決まった席で働くだけではなく、交流や休息も含めて過ごせる場が求められるようになっています。

芝浦という立地も、この考え方と深く関わっていると亀本氏は語り、東京湾や芝離宮に近く、水辺や緑の気配を感じられるこの場所で、高層建築の内外の境界をゆるやかにすることは、都市の魅力を建物の中へ取り込むことにもつながると説明。建築が周辺環境のポテンシャルをどう引き出すか、その問いに対する一つの試みとして、「SKYDOOR」は位置付けられます。

風や音とつながる空間はウェルビーイングにどう関わるのか

会場では、「SKYDOOR」がもたらす風や音、気温など外部環境とのつながりが、オフィスワーカーや施設利用者の心身の健康、生産性にどのような影響を与えると考えられるか、という質問も出ました。

これに対し亀本氏は、デジタル技術の進展やコロナ禍を経て、オフィスビルそのものを考え直す必要があると指摘しました。働く時間や方法は多様化し、従来の9時から17時という一律の働き方だけではなく、それぞれが自分に合った時間やリズムで働く考え方が広がっています。その中では、自席だけで完結する空間よりも、ソーシャルスペースやリラクゼーションスペースを含めた柔軟な環境が重要になると述べました。

「SKYDOOR」が生み出す空間は、単なる換気や演出ではなく、外気や光、音といった要素を通して、都市の中でも自然との接点を感じられます。そうした空間は、働く人にとっての気分転換や居心地の良さを支えるだけでなく、ウェルビーイングを重視するこれからのオフィス像にも重なります。効率だけでは測れない、人の感覚や過ごし方に目を向けた建築のあり方が、「SKYDOOR」によってかたちになりつつあります。

都市と自然、人をつなぐ建築のこれから

自然光や風、開放感のある空間を通じて、働く人や利用者の快適性や心身の健康を支える考え方は、目標3「すべての人に健康と福祉を」につながります。また、高層建築に求められる安全性能を確保しながら、新たな空間体験を実現した点は、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」と重なります。さらに、都市の中で自然との接点を再構築し、人が心地よく過ごせる環境を整えようとする姿勢は、「目標11 住み続けられるまちづくりを」にも通じるものです。

「SKYDOOR」が示したのは、単なる設備の進化ではなく、建物の内と外の関係を見直し、人と都市、人と自然のつながりを再構築するという発想です。これまで高層階は景色を眺める場所にとどまっていましたが、風や音、光を取り込むことで、空間のあり方そのものに変化が生まれ、建築の性能だけでなく人がどのように過ごす空間であるかを考えることが、これからの都市の質を左右する要素になるのではないでしょうか。


執筆/フリーライター Nami Harashima