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災害多発時代、レースエンジン技術が都市を守る! 非常用発電機「レイパワー」が挑む分散型エネルギーと都市レジリエンス


この記事に該当する目標
9 産業と技術革新の基盤をつくろう 11 住み続けられるまちづくりを
災害多発時代、レースエンジン技術が都市を守る! 非常用発電機「レイパワー」が挑む分散型エネルギーと都市レジリエンス

停電すると、マンションの水は止まります。

中高層マンションでは、地下の受水槽から揚水ポンプで水を上階へ押し上げ、高架水槽から各戸に給水しています。この揚水ポンプは電気で動いているため、停電すれば上層階へ水を送ることができなくなります。

東日本大震災が浮き彫りにした都市の弱点

こうした電力の供給を前提とした都市基盤の弱点が広く認識されたのが、2011年の東日本大震災でした。震災当時、仙台市では最大約23万戸が断水し、断水率は約50%に達しました。
さらに仙台市中心部のマンションでは、水道が復旧した後も水が使えないケースが起きました。停電によって揚水ポンプが動かず、上層階まで水が送れなくなったためです。給水車の水をタンクに入れ、それを階段で高層階まで運び上げるという状況も現実に起きていました。
水道だけではありません。信号機や医療設備、通信インフラなど、電源が失われれば都市機能は急速に低下します。東日本大震災は、日本の都市が「停電に弱い」ことを浮き彫りにした出来事でもありました。

防災庁創設へ、日本の防災体制は転換期に

そして今、日本政府は防災体制の抜本的な強化に乗り出しています。
2026年11月1日には、内閣直下の組織として新たに「防災庁」の創設が予定されています。総理をトップとする体制で運営され、事前防災から発災時の対応、復旧・復興までを一貫して担う「災害対応の司令塔」となります。

創設の背景にあるのは、日本列島を取り巻く巨大災害リスクです。政府は、千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ巨大地震といった複数の大規模地震の発生を想定しています。さらに近年は線状降水帯による豪雨災害も頻発し、水害リスクも高まっています。こうした複合的な災害に備えるため、防災体制そのものを再設計しようとしています。

注目される「分散型エネルギー」という考え方

こうした状況のなかで注目されているのが、「分散型エネルギー」という考え方です。中央の発電所だけに依存するのではなく、小規模な電源設備を各所に配置し、災害時でも機能を維持する仕組みです。電源を分散配置することで停電リスクを抑え、インフラのレジリエンスを高めることができます。これはSDGs目標9.1が掲げる「強靭なインフラの構築」にも通じる発想です。

その取り組みの一つが、ガス式非常用発電機「レイパワー」です。

レイパワーの山口代表は、現在の非常用発電機事業に関わる動機にもなったとして、東日本大震災の経験をこう振り返ります。

「2011年の震災当時、私は電池事業を手がける別の会社の社長を務めていました。東北に複数の工場がありましたが、水没していない拠点でも非常用発電機が動かなかったのです。非常用発電機は普段使うものではないため、点検やディーゼル燃料の管理を怠るといざというときに動かない。その現実を突きつけられました。」

レイパワーの最大の特徴は、レースエンジン技術を応用したアルミ製水冷エンジンにあります。軽量化、高効率、耐久性、メンテナンス性を重視した設計により、非常時でも確実に稼働する電源を目指して開発されました。
特筆すべきは、そのコンパクトさです。3kVAクラスの発電機は小型冷蔵庫ほどのサイズで軽量なため、建物の屋上にも設置できます。都市のさまざまな場所に分散配置できる点は大きな特徴です。東日本大震災では、地下に設置された非常用発電機が水没して動かなかったケースもあったが、こうした課題をクリアする設計となっています。

さらに、レイパワーの発電機は都市の水害対策にも貢献します。豪雨災害では停電によって排水ポンプが停止し、地下空間や道路の浸水被害が拡大するケースが少なくありません。電源が確保されていればポンプを稼働させることができ、都市機能の維持につながります。これはSDGs目標11.5が掲げる「水関連災害による被害の低減」にもつながる取り組みです。

フェーズフリーな都市エネルギーへ

開発チームは現在、連続稼働2万時間を目標に技術開発を進めています。これは時速60kmで換算すると約120万kmに相当し、一般的な自動車エンジンの耐久性を大きく上回る挑戦です。しかも素材には鉄ではなくアルミを採用しているため、軽量化と耐久性を両立させる技術的難易度は高くなっています。
背景にあるのは、災害時だけではなく、平時にも組み込める電源という発想です。都市の中に小規模電源を配置し、平時には常用電源として、災害時には自立電源として機能する。いわばフェーズフリーなインフラを想定した開発が進められています。
また、将来のカーボンニュートラル社会にも対応するため、燃料の多様化に取り組んでいます。バイオガスや水素などカロリーの異なる燃料でも稼働できる設計で、エネルギー利用の柔軟性を高めています。

山口代表は、今後のエネルギーのあり方について次のように語ります。

「カーボンニュートラルの流れの中で、将来は燃料もバイオマスガスや水素ガスなどに変わっていくでしょう。燃料ごとにカロリーは異なりますが、レイパワーの発電機はそうした変化にも対応できます。ただし、そのとき重要になるのは燃費です。ガスの価格は今後高くなる可能性がありますから、いかに効率よく使うかが技術開発の大きなテーマになります。耐久性と燃費、この両立は永遠の課題だと思っています。
私たちが目指しているのは、発電機そのものというよりも、エネルギーマネジメントの仕組みです。太陽光や蓄電池などと組み合わせながら、お客様ごとに最適なエネルギーの使い方をつくっていく。将来的には、分散型エネルギーのネットワークとして世界にも展開していきたいと考えています。」

都市レジリエンスを支える新しい電源

災害多発時代の日本において、電力のあり方は大きな転換点を迎えています。中央集約型の電力システムに加え、都市の中に分散した電源を持つことが、これからの都市レジリエンスを支える重要な要素となります。
レースエンジン技術から生まれた小さな非常用発電機。
それは、日本の都市における電源のあり方を変えようとしています。