世界最高ではなく「あなたの最高」を。「i-TOWEL」が問い直すタオルの基準
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「タオル研究所」を手がける伊澤タオルが、コーポレートアイデンティティを刷新し、新ブランド「i-TOWEL(アイタオル)」を発売しました。業界にない評価の基準を自らつくり、種類を増やすのではなく一枚の質を突き詰める。
発表会では、伊澤タオル株式会社代表取締役社長の伊澤正司さん、グラフィックデザイナーの佐藤卓さん、俳優で農業も営む小林涼子さんが登壇。「つくる責任 つかう責任」につながる取り組みを紹介します。
物差しをつくる


9月25日、伊澤タオル株式会社は、新ブランドである自家用プレミアムタオル「i-TOWEL(アイタオル)」の発表会を開催。
会場に入ると、白やグレーのタオルが、服のように吊るされて並んでいました。オレンジ色のタグの位置で掛けられた、端正な一枚一枚。登壇したグラフィックデザイナーの佐藤卓さんは、こう振り返ります。
「世界最高のタオルがあると、私も思っていました。でも、世界最高のタオルはないと、伊澤社長がはっきり言い切ってくれたんです」
そこから始まったのは、誰もが毎日使うのに何を選べばいいかの物差しがないという、身近な日用品の「つくり方」と「選び方」。根本から問い直す試みです。
「タオル業界には正確な評価の基準がなかった。それが大きな問題だと考えてきました」。代表取締役社長の伊澤正司さんは、業界の課題をこう語ります。


「日本で消費されるタオルの98.5%は海外製です。中国、ベトナム、バングラデシュ、インド、パキスタン、トルコなど限られた産地でつくられ、世界各地へ出荷されています。世界で主流なのは大きくて重いタオル。薄くて小さい日本のタオルは、ごく一部の生産ラインでしかつくられていません。しかも価格や機能、コストの基準は製造工場の側にあり、新しい価値が生まれにくい構造になっていました」
そこで同社は、独自の検査方法と評価方法を構築してきました。「基準がないのであれば、それをつくる。できれば数値化して可視化する」。2025年6月の東証への上場も、業界で主導権を持ち、その基準を広めるための一歩だったと言います。
「肌着ならヒートテックのように誰もが思い浮かべる定番がありますが、タオルにはまだそれがありません。定番が生まれれば、業界全体の底上げにつながる」と伊澤社長は考えています。
世界最高を目指さない


新たに掲げたコーポレートメッセージは「One Towel, One Quality」。その背景には、伊澤社長自身の反省がありました。
タオルの好みは人によって大きく分かれます。業界はそれに応えようと、あまりに多くの種類を世に出してきました。その結果、かえって選びにくい状況を生んでしまったのです。
佐藤さんは、地域や国によって生活習慣も肌の状態も違う以上、絶対的な一枚はないという社長の考えに深く共感したと言います。
「世界中の80億人に80億個のタオルをつくることはできません。でも思いとしては、一人の人のためにどんなタオルがつくれるかを考えて実行していく。当初はOne Towel, One Smileを提案していたのですが、議論を重ねるなかで、社長の希望から『Quality』という言葉にたどり着きました」
佐藤さんが手がけた新しいシンボルマークは、吊るしたタオルを横から見た形をもとにしたオリジナルの「タオルフォント」から生まれました。IZAWAの頭文字「i」は、「私」や「愛」にも通じます。種類を増やすのではなく、一枚の質を突き詰める。それが選ぶ人の迷いを減らす近道となるのです。


濡れた肌で確かめる
i-TOWELは、タオル研究所で培った技術と知見を結集し、用途を体を拭くことに絞りました。こだわったのは、乾いた状態ではなく濡れた状態での“肌ごこち”です。
「乾いたタオルを乾いた肌に当てることは、あまりないですよね。使うときには必ず、タオルと体のあいだに水があるんです」と伊澤社長。信州大学との共同研究を重ね、濡れた体を拭いたときの拭き取りの良さや、拭いたあとの爽快感を追求しました。
綿糸は特定の産地にこだわらず、縮れが強く長さのそろったものを選んでいます。吸水性や表面速乾性に加えて重視したのが、耐久性です。洗濯による縮みなどの形状変化を抑え、角の直角が長く保たれるよう設計しました。
2022年ごろからタオル研究所の製品を愛用してきたという俳優の小林涼子さんは、ひと足先にi-TOWELを試しました。農業の会社も営み、農繁期や撮影で地方に長く滞在することもある小林さん。ていねいな暮らしにあこがれながらも、コインランドリーの乾燥機に頼る日々が続くといいます。
「乾燥機にかけても端が反り返らないし、何度洗っても吸水性が落ちない。そこが一番ありがたかったです」
買ったときの心地よさが長く続くことが、一枚を長く使う暮らしを支えます。
100年先へレシピを残す


会場でタオルを吊るして見せるのは、伊澤社長のアイデアでした。佐藤さんは、つまんで吊るす位置にタグを付けました。小林さんも「農業の現場では吊るしておきたい場面がたくさんある」と、その使い勝手を評価します。
タグに記された番号は、その年の作り方を示す「レシピ」になっており、100年先の人たちがこの番号をたどれば、この時代のタオル作りを知ることができるのです。
小林さんは伊澤社長から聞いた「タオルはもとをたどれば綿で、綿は農産物だ」という話を印象的だったと語ります。天候や気候が変わるなかで、同じ質のタオルを作り続けるのは簡単ではないのです。
また、伊澤社長は、綿のタオルを木造建築にたとえ、木造の研究が行き届いた土台があるからこそ、耐震や免震といった新しい構造が生まれるのだと話します。
「まず綿でどこまでのものができるのか。この考え方は決して無駄にはならない」
つくり方を記録し、未来へ手渡すこともまた、ものづくりの責任です。
評価の物差しがない、選択肢が多すぎて選べない、気候の変化で原料の綿がゆらぐ。伊澤タオルは基準をつくり、長く使える一枚を届け、そのつくり方を未来へ残すことで、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に日用品の側から応えようとしています。
- ラインナップ全8色・4サイズ展開
- 価 格1,320円~3,850円(税込)
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執筆 / フリーライター 小見山友子





