剛力彩芽も感動した名プレゼン続々!「小学生SDGsサミット」に見る「しがらみのない発想」と「自分ごとに引き付けるアイデア」の重要性
女優、剛力彩芽さんと持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。2021年7月23日の放送では「小学生SDGsサミット 2021」の模様が紹介された。日本のSDGs研究の第一人者で“ミスターSDGs”こと慶応大学大学院教授、慶應大学SFC研究所xSDG・ラボ代表の蟹江憲史氏も出席したこのイベント。動画配信でチェックした剛力さんにとっても、”SDGs熱”をさらに高める上での大きな刺激となった様子だ。
ちょうど東京五輪の開会式当日、7月23日に放送された今回の特別番組。剛力さんが「最近、SDGs関連で気になる話題は」と問い掛けると、蟹江教授は「やはり、オリンピックですね」と切り出した。
蟹江 「もともとSDGsを目指すオリンピックだと言っていたはずが、もう誰もそんなことを考えていない感じになってしまっていました。誰一人取り残されないというのがSDGsの考え方ですが、これだけ世界中で取り残されている人がいる中で、オリンピックを開催することの意味を、もう少ししっかりと議論しないといけないのではないかなと思います。オリンピックって、参加することに意義があるといいますよね。参加できないということは、意義がないのか。そこのところを主催者がきちんと説明して開催しないと、何か根本がずれてきてしまうのではないか。そこが最近、気になっています」
剛力 「何のためにと言えば、もちろん選手のためなのですが、やはり世界各国から集まる中での違和感がありますよね」
蟹江 「ただ、選手は一生懸命、そこを目指してやっていますからね。後輩の山縣くん(陸上男子100メートルに出場する山縣亮太選手、慶応大学総合政策学部卒業)が日本選手団のキャプテンをやっていますし、頑張ってほしいとも思っています」
そんなタイムリーな話題で始まった番組だが、今回のメインテーマは「夏とSDGs」。夏と言えば、夏休みの宿題などを思い出す人も多いかもしれないが、“SDGs版自由研究”ともいえるような小学生対象のイベントが、6月26日にオンラインで開催された。
それが朝日小学生新聞、読売KODOMO新聞が主催し、伊藤園が共催する「小学生SDGsサミット 2021」。持続可能な社会の実現に向けて、小学生と一緒に課題解決に取り組む内容で、今年は『SDGsの目標期限となる2030年の夏に、みんなが快適に暮らすためのアイデア』について、国内外の小学5、6年生から500以上の応募があった。その中から優秀作品賞に選ばれた3人がプレゼンテーションを行った。
また、SDGs研修の第一人者である蟹江教授が「SDGsってなんだろう」と題した基調講演を行い、今世界がどのような課題を抱えているのか、小学生の身の回りの事象と関連付けて解説。SDGsが掲げる17の目標と169のターゲットをどのようなアプローチで実現していくべきかを問い掛ける中で「大人にはしがらみがあり、余計なことを考えてしまう。だから小学生の素直な発想が大事になります」「大人も子供も、お互いに学びながら取り組んでいければ良いと思います」などと呼び掛けた。
剛力 「YouTubeでライブ配信され、アーカイブもみられるのですが、蟹江先生の講演はとても分かりやすく、初心に戻れるものでした。その先生の話をいつも隣で聞かせてもらっていることが、誇らしくもなりました。参加されてみてどうでしたか」
蟹江 「やはり、子供たちのアイデアって素晴らしいなというのが第一印象ですね。本当に突拍子もないものもいっぱいあって、まさにこれが原点なのだなと感じさせられましたね」
剛力 「“大人のしがらみ”というワードも出てきました」
蟹江 「“しがらみ”を知らない子供たちは、すごく純粋に考えられる。大人は、これはまずいかなとか、ここは攻めないほうが良いかなとか、変なことに忖度したりするけど、目標に向かって『これをやればいいじゃん』って素直に考えられるのはすごく新鮮だし、われわれも学ばなきゃいけないなと思いますね」
剛力 「子供の時の感覚って、本来なら忘れてはいけないもの」
蟹江 「そうですね。大事なこと。このサミットもそうですけど、今の世の中って子供であるとか、若い世代から学ぼうとか、一緒に議論しようという動きが出てきている。それはすごく良いことだと思います」
剛力 「朝日新聞社と読売新聞社が協力してやっているというのも・・・。ライバルと言えばライバルですけど」
蟹江 「未来を考える上で一緒にやりましょうという、非常に美しいコラボレーションですよね。メディアとかマスコミが一緒にやるって、すごく大事だと思う。SDGsってみんなの話じゃないですか。読売だけ、朝日だけでは、そこの会社だけが推進しているのかなと思われてしまう。でも、みんなでやることで『これは、みんなのものなんだ』と思える。他の新聞社の方も、遠慮なく飛び込んできてほしいですね」
ここからは、実際に「小学生SDGsサミット」で優秀作品賞に選ばれた3つのアイデアを紹介していく。
1.人工的なクモの糸で世界を救おう=黒木秋聖さん
”人工的なクモの糸”をつくる企業の取り組みをテレビ番組で知り、発想。クモの糸は1キロあたり鉄の340倍、炭素繊維の15倍の強度を持つ素材で、この環境に優しい人工的なクモの糸でネットをつくり、中に苗木などを入れて人が行けないような砂漠化した場所にドローンや小型飛行機で運び、緑を復活させる。この他にも、植物を育てていない人に税金を科すことで人々の意識改革を促すという税制に関するアイデアも発表した。
2. 「空気から水をつくる装置による砂漠での街づくり」と「画期的な暑さ対策」=小泉英太郎さん
空気から水をつくる装置を砂漠地帯に円形に設置することで、オアシスをつくるアイデア。円形に配置する理由は水を取り合わなくて済む「平等性」を考慮したもの。さらに、全世界の人が取り入れられる暑さ対策として、世界中の都市の窓ガラスに「透明酵母菌熱吸着シート」を貼ることを提案。目に見えない細菌の力を借りて、温度の調節、空気の浄化をする。
3.「5つのルールで心を変えよう!!」=山田遥斗さん
これ以上温室効果ガスを増やさないために、話題の「セブンルール」ならぬ「5ルール」を提案。
・マイボトルに5度のドリンクを入れて持ち運ぶ
・週5日は牛肉を食べない
・シャワーは1回5分まで
・5飯(ご飯)を残さない
・5人以上の友達と本を交換する
という「5」に関する5つを例に、英語でもプレゼンを行った。
剛力 「実は、私もクモの糸ってすごく気になっているんですよ。クモの糸の繊維でお洋服をつくる、そうすると長く着られるというアイデアをテレビか何かのメディアで見た記憶があります」
蟹江 「すごい発想ですよね。本当にクモの糸を使うかどうかは置いておいても、強い繊維を使ってドローンで立ち入れないところにものを運ぶというのは実現できるんじゃないかなと思いますね」
剛力 「配送とかなら今もあるけど、それを植樹に使うという発想がすごいなと思いました。クモの糸だから、地面の落ちても自然に還るということまで考えている」
蟹江 「今は、プラスチックだって生物由来のものとかあるじゃないですか。そういうヒントはあるけど、それを自分の発想で良いことに使っていこうと考える力はすごい」
剛力 「この年齢で税制のことまで考えているのはすごいなと思いました」
蟹江 「小学生新聞とかを読んでいる人が応募しているので、もともといろいろな記事を読んで学んでいる人たちなのかなとは思います」
剛力 「そうですね。私も小さい頃から新聞を読んでおけばよかったなと。彼らのプレゼンを見させていただいて、本当にしっかりしているなと思いました」
剛力 「続いて小泉くんのアイデアですが」
蟹江 「多角的とか考えてアイデアを出しているわけじゃなく、シンプルなことなんだと思います。砂漠で水がないから水をつくろう。でも、空気はある、と。そういう自由な発想がイノベーションの源泉になるのだと思いますね」
剛力 「この子が、昔の建物を修復して建て替えられ続けているから、そういうものも残せるという話をしていた時に、SDGsって昔の生活に戻らなきゃいけないのかなという話しを聞いたことを思い出しました。でも、こんなに技術が発展している世の中で、それはすごく苦しいよねという。でも、小泉くんは昔の生活を当たり前のように取り入れようとしている。それは苦しいとかではなく、美しい」
蟹江 「すごく、いい発想ですよね。2050年の脱温暖化に向けたシナリオとして、2つのベースとなるシナリオをつくったことがあるのですが、一つは“サツキとメイの世界”と通称したもの。要は里山とか昔の生活に戻っていくというものです。でも、そこで便利さはあるみたいな。ネコバスとかが走っていて。もう一つは科学技術があるドラえもんの世界。これは、両方ありなんです。小泉くんのアイデアも、その中の一つのシナリオになるんじゃないかと思います」
剛力 「そして、3つ目は…山田くんのアイデア」
蟹江 「TED(世界的に有名なトークカンファレンス)のプレゼンテーションみたいですね」
剛力 「プレゼンテーションが、すごく上手でしたよね。最後に『僕の話が短く感じたと思います。それは皆さん、僕の話に興味があるからだと思います』とか。まさに、そう思いました。マイボトルに5度のドリンクを入れると体への吸収が早いとかも、初めて知りました。ただ、『5』という数字に特化するだけではなく、なぜそれをするのか、しっかりと調べている」
蟹江 「すごいですね。『5』といきなり出てくると、アピールする力がある。コピーを考えるような、すごくキャッチーな言葉を使うセンスがある。かなり工夫したんじゃないかなと思います」
剛力 「いろんな人に話を聞いたということも言っていましたが、人から聞く力も素晴らしいですね。この『小学生SDGsサミット』の模様はYouTubeでもご覧になれますので、ぜひこれは見ていただきたい。社会人として、プレゼンする方は参考になるかと思います」
蟹江 「あとSDGsってどういう風に取り組めばいいのか、どう自分ごとに引き付ければいいのか分からないという人、案外と多いので、そういうヒントにもなるんじゃないかなと思います」
こうした子供たちのSDGsのプレゼンに耳を傾けた剛力さんには、思うところがあった様子。温暖化、ゲリラ豪雨といった地球環境の変化も感じやすい夏を迎える中、SDGsを学び始めた意義、「SDGs MAGAZINE」というラジオ番組を始めた意味に思いを馳せた。
剛力 「SDGsの勉強をし始めたから、こうしたSDGsに関する話題に耳を傾けることが増えましたが、SDGsに掲げられている課題は急に出てきたものではなく、少しずつ影響は表れてきていたんだなと理解できるようになりました。より意識をして、この先に進んでいかないといけないなと思いますね」
蟹江 「そのコメントは、すごくいいと思いますね。やっぱり、知ることによってその問題があると分かって、そこからガラッと意識が変わる。それは、本当に大事だと思います。今まで、何も考えてこなかったのに、このラジオを聴いたりすることで、ちょっと調べてみようかと、そういうことがきっかけとなって、『えっ! こんなにやばいの』ということに気が付き始める。そうすれば、本当に意識が変わってくると思います。今、若い子たちの間ではSNSなどを通じて仲間を増やし、仲間がつながっていって大きな動きになるとか、そういうことが起こりやすくなっている。だからこそ、まずは知ること。次にアクションを起こすことが大事ですよね。そうすれば、大人がうかうかしていられない世の中になっていきます」
剛力 「私自身も、アクションを起こすときが来たなと思っています。やらなきゃいけないとかではなく、知るということ。年十年に一度の災害が最近は毎年あるとか、その場所では何十年に一度でも場所を変えて毎年起こっているとか。意識を変えていくと、そう思えると思うんです。それが大事だと思います」
蟹江 「子供たちの取り組みの話しもそうですが、身近なところから発想を飛躍させるということはすごく大事なこと。SDGsは大きな目標だけど、案外身近にできることっていっぱいあると思うんです。出来ることから進めていくことで、大きな動きにもつながっていく。ぜひ、この番組をきっかけにして取り組みを始める、意識をし始めるところからまず始めてもらえればいいのではないかなと思います」
剛力 「まだまだ自分一人でできることは本当に小さいことかもしれないけど、考えてから行動に移すというところまで行きたいという思いがありますし、それをみんなで共有していきたい、そのためにどういうことができるかやっていきたいなと思います。子供たちのプレゼンを見て、自分の意見を言う、しっかり伝えていくということは何に関しても大事だなと改めて思いました」