食品添加物「あり」「なし」どっちがSDGs?正しい食品表示の読み方とは
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食品のパッケージでよく見かける「無添加」や「〇〇不使用」の文字。この春からこれらの表示が制限されていることを皆さんはご存知でしょうか。消費者庁が3月に「食品添加物表示制度」という食品添加物の不使用表示に関するガイドラインを改定したことで、商品包装に記載するルールが厳格化されました。この背景には、例えば、原材料に添加物が使われても、加工時に使っていないと「無添加」と表示できていたことや、本来食品添加物の使用が禁止されている食品にも関わらず「〇〇不使用」と故意に表示し販売されていたなど、消費者の誤解を生むケースが増加していたことが挙げられます。また、消費者庁としてはこれらの表示によって、本来安全なものと認めている食品添加物が、逆に健康に悪く安全ではないというイメージとして消費者に浸透することへの懸念もあったようです。
商品を選ぶ際、パッケージの表示は一つのきっかけになります。それだけに、今後の食品の選びにはある程度の知識が必要になっていきそうです。
・食品添加物とは?
・意外と知らない?スラッシュルール
・食品添加物とSDGsの関係
・ラベルが目印!SDGsな商品の選び方
・知識とアンテナを広げることが大事
食品添加物とは?
食品添加物は、食品の製造過程(豆腐の凝固剤に使われるにがりなど)、または食品の加工・保存(保存料、甘味料、着色料、発色剤、酸化防止剤、香料など)の目的で使用されるものです。安全性が評価され厚生労働省で認められたものだけが、食品添加物として使用できます。食品添加物というと自然界には存在しない化学合成されたものをイメージしますが、パエリアの黄色に使うサフランや黒色に使うイカ墨のように、一般的に食品として利用されているものもあります。日本における食品添加物は合成添加物以外にもこのような一般飲食物添加物と呼ばれるものや、動植物から得られる天然物質である天然香料と呼ばれるものなど食品添加物の定義が広く、現在使用が認められているものは1500種類以上にのぼります。
意外と知らない?スラッシュルール
食品表示法では、原材料と食品添加物を明確に区別して表示することが義務付けられています。その中で一番目にする機会が多いのは、スラッシュ(/)記号で区別した表示方法です。これによりどこまでが原料でどこからが食品添加物なのか、はっきりと区別できようになりました。明確に区別するためには、他にも改行して表示する表記方法などもありますが、食品表示のスペースが増えてしまうことや、なるべく食品添加物を分かりにくくさせたいという理由などから、スラッシュを採用する企業が多いようです。
食品添加物とSDGsの関係
皆さんの中にも、食品添加物はできるだけ避けたいと思っている方も多いのではないでしょうか。日本で使用が認められている食品添加物の中には、健康被害を理由に海外では使用を禁止されているものもあり、そのほとんどが化学合成添加物です。摂取しすぎたり他の添加物と反応することで、発がん性物質が生成されたり、染色体異常を起こす原因になったりと、健康的な生活を妨げる可能性があります。
一方でSDGsの観点から言うと決して悪いものではありません。例えば、保存料や酸化防止剤などはおいしく長持ちさせるために必要なもので、食品ロスの対策になっていますし、介護食や離乳食に使われる増粘剤や、栄養の補助に使われるビタミンやミネラルなどの強化剤は健康維持にも繋がっています。特に食品ロスは世界でも大きな問題です。FAO(国際連合食糧農業機関)によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されています。日本でも1年間に約522万トン、1人当たりで換算するとお茶碗1杯分のごはんが毎日捨てられている計算になります(令和2年度推計値推計値)。一方で世界の飢餓人口は増加しており、2020年は8億1100万人、世界の10人に1人が飢えに苦しんでいるといわれ、このままでは2030年の「飢餓ゼロ」の達成は困難であると国連も継承を鳴らしています。食料自給率が低く、多くの食べ物を輸入に頼る日本において、食品ロスは世界的に見ても解決が急がれる問題です。
食品添加物がなければ、安定した食の供給は成り立ちません。また、食品添加物がすべて体に悪いわけでもありません。一つ一つを健康に問題ないのかを確認して購入することは現実的ではありませんが、食品添加物の中には、お湯をかけると減らせるものも多くありますし、商品を選ぶ際にはラベルを確認してなるべく食品添加物が少ないものにするなど、ちょっとした手間を惜しまず食品選びも心がけていきたいですね。
ラベルが目印!SDGsな商品の選び方
パッケージが商品選びになっていたという方は、是非SDGsの観点からラベルに注目した買い物スタイルを実践してみてはいかがでしょうか。
国際フェアトレード認証ラベル(フェアトレード食品)
フェアトレードとは、貿易のしくみを公平・公正にすることで、開発途上国の小規模生産者や労働者が、自らの力で貧困から脱却し、地域社会や環境を守りながら、サステナブルな世界の実現を目指す取組みです。普段私たちが安く買えるコーヒーやチョコレート、バナナなど、その安さの裏では生産国の労働者の低賃金・長時間労働や、生産性向上を目的とした大量の農薬使用による環境汚染など、様々な問題が引き起っています。適正な価格で取引を行うことで生産者の労働環境や自然環境を守るフェアトレードは、SDGsの17ゴール全てに対し、直接的・間接的に関係しています。フェアトレード商品には認証ラベルが付いています。認証元はいくつかありますが、以下の2つの国際機関の団体が発行するラベルを覚えておくとよいでしょう。
国際フェアトレード認証ラベル (The FAIRTRADE Marks)
世界フェアトレード連盟(WFTO)認証ラベル
有機JASマーク(オーガニック食品)
化学合成農薬や化学肥料や遺伝子組み換え技術を使わず、環境負荷を可能な限り低減し生産された農産物や畜産物、加工食品には有機JASマークが表示されています。化学農薬や化学肥料を使わないことは水質保全、健康的な土壌作り、生物多様性への貢献、土壌の炭素貯留効果による地球温暖化防止など、様々な付加価値があります。一方で、慣行栽培と比べると有機栽培は手間がかかり、除草などで労働時間が嵩みます。また、収量や品質が不安定なため、価格や販路の課題を抱えた農家も少なくありません。安全安心という観点からオーガニックという言葉は一般化しましたが、最近では環境に対する消費者の意識も変わってきました。勇気JASマークが無い食品に「有機」「オーガニック」といった表示をすることは禁止されていますので、このマークを目印に、少しでも環境の負荷が少ない食材を選びたいですね。
知識とアンテナを広げることが大事
今回取り上げた食品添加物の不使用に関するガイドラインの変更では、人工、合成、化学、天然の用語の使用も新たに禁止されています。これにより「人工甘味料不使用」といった表記も(例えそれが事実であっても)規制されることになります。これまで「無添加」や「〇〇不使用」という言葉を目印に買い物をしていた人の中には、その言葉にだけ反応し、実際に何が無添加なのか理解せずに選んでいた方も少なくないはずです。今回の改正によって消費者はより強い意識改善が求められます。商品を購入する際には、原材料ラベルを確かめることや、信頼できる認証ラベルを目印にして買い物をするなど、これまでの買い物スタイルを見直し、SDGsに貢献していきたいですね。
企画・ライター/黒川
編集/森川・井口