中国やインドでは花火が禁止に。次世代花火で大気汚染問題解決へ
夏の風物詩の一つである花火。ここ数年は、新型コロナウイルスの影響で、全国の花火大会の中止が相次ぎましたが、今年は、各地方で3年ぶりに花火大会が開催されることになり、注目が集まっています。
しかし、夏の夜空を美しく彩る花火が、大気汚染につながっていることはご存知でしょうか。祝日に花火を打ち上げる習慣がある中国やインド、アメリカでは、花火が大気汚染の原因になっていることが問題視されています。
私たちはこの問題に、どのように向き合えばいいのかを考えてみたいと思います。
過去には中国やインドで花火が中止に
世界でも大気汚染は問題視され、祝日に花火を打ち上げる習慣のある中国やインドでは以下のような取組みをしています。
1.中国・北京
中国では、1年で最も重要な節目の春節(旧正月)の新年を祝うための花火や爆竹が風物詩となっていますが、2022年の北京冬季オリンピック開催前は、北京市内全域で花火と爆竹が禁止となりました。
花火は、米テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」などの一部区域と、政府が許可したイベント以外は通年で禁止となりました。
2.インド
インドでは、ヒンドゥー教の祝日「ディワリ」を花火や爆竹で祝いますが、この祭日の前後には大気汚染レベルが急上昇するといわれています。
2017年の最高裁で、世界最悪とされている大気汚染対策として、祭りの定番である花火や爆竹の販売、使用を禁止する「花火・爆竹販売禁止令」が出されました。
なぜ花火が大気汚染の原因に?
花火を打ち上げたとき、同時に煙が発生しますがこの煙が大気汚染につながっていると指摘をされています。理由は、花火の煙の中に呼吸器系疾患の主要な原因となる粒子物質にくわえて、ストロンチウム、バリウム、鉛などの有害金属が多く含まれていること。煙は地域の大気汚染レベルを急上昇させ、汚染された状態が数日間続くともいわれています。また大気汚染以外にも、喘息などの呼吸器系疾患を抱えている方や体の弱い方にとっては、深刻な健康被害をもたらすことも考えられます。
もともと世界保健機関(WHO)は、日々の生活の中で世界のほぼ全人口の99%が、WHOが定める空気品質制限の基準を超える空気を吸い込み、健康を脅かしていると警告しています。
大気汚染は、工場の煙や自動車の排気ガス、化石燃料、微小粒子状物質(PM2.5)などが主な原因だといわれ、花火の煙は決して大きな原因であるとはいえないかもしれません。それでも、わたしたちの娯楽の一つである花火の煙が、空気を汚染していることは事実です。
大気汚染を気にしない新しい花火とは
オランダのロッテルダムに拠点を置くソーシャルデザインラボのStudio Roosegaardeは、サステナブルな祝祭というコンセプトで、生分解性を持つ素材でできたオーガニック花火「SPARK」の開発を発表しました。
オーガニック花火といっても、私たちが知っている花火とは少し異なり、デザインとテクノロジーの融合から生まれた無数の集合体になります。生分解性を持つ素材なので、場所を選ばず使用することができるのも大きな特徴です。
また、海外のみならず、日本でもエコな花火づくりに取り組んでいる企業があります。関西に本社を置く株式会社柿木花火工業では、花火を打ち上げたときにでるゴミに着目し、エコ花火を開発しています。このエコ花火の開発で、ゴミの排出量を従来の1/15まで減らしたそうです。
弊社はこのゴミの減量化を目指し、新たな環境に優しい花火の開発を目指しました。
開発に4年の月日をかけ、生分解性のプラスティックを使用するなど原料を見直すことで、ゴミの排出量を通常の15分の1程度まで減量した「エコ花火」を完成させました。
エコ花火の特徴は、玉皮(花火の外郭部)と割火薬(花火玉を爆発させ星を遠くへ飛ばすもの)から構成されています。この玉皮に生分解性プラスチック(国産 株式会社セーコン)を用いることで、魚や鳥等が破片を食べても影響がなく、出来上がった花火玉は一般的な花火玉と同じように扱えます。また割火薬は弊社独自の植物の種を使用しており、焼け焦げて地上に落下してきますが、弊社の割火薬は燃えてしまいますので、回収の必要はありません。
花火は大気汚染の原因となっていることは事実ですが、一方で心豊かな生活を送るための私たちの娯楽の一つでもあります。
今回ご紹介したオランダの企業のように、生分解性を持つ素材でできたオーガニック花火が開発されたり、ゴミの排出量を減らしたエコ花火が開発されたりと、今後さらに同様の取り組みが増えれば、より一層、花火を楽しむことができるでしょう。
ひとつひとつの小さな積み重ねの取り組みが、大きな結果につながるということを忘れずに、取り組んでいくことが大切なのではないでしょうか。