お隣さんへの挨拶、ペアーズを使うよりハードルが高くなってませんか?
突然ですが、『電車内の無差別殺傷事件が多くて怖い。』そんな風に思ったことがある人はいるでしょうか?実際のところ、日本の他殺率(人口10万人当たりの他殺者数)は世界と比べて極めて低く、稀なことです。それでも、リモートワークにより電車に乗ることがめっきり減った筆者も久しぶりに電車へ乗る時は少しだけ身構えるようになりました。
しかし、隣に座っている人がもしかしたら危険な人物なのかもしれないという心配はある一方、長らく同じマンションに住んでいるのに、隣人がどういう人なのか分からないということに、恐怖を覚える人は少ないと思います。
むしろ、知り合うことへの気恥ずかしさすら感じるという人も少なくないはず。そんな中、とある国では、衰退する日本のコミュニティ文化が、新たにおしゃれなエコ活のサービスとして生まれています。
衰退する地域コミュニティ
今やもう「昔の話」かもしれませんが、「お醤油が足りない、砂糖を切らしてしまった」と、お隣さんに何かを借りに行くのは日本ならではの文化だそう。
この地域コミュニティ文化は、災害時における災害発生直後の住民の安否確認、初期救助活動、情報の伝達、避難所の運営、被災した住居を狙った窃盗等を防ぐための住民による見回りなど、重要な役割を果たしています。実際に、平成7年の阪神・淡路大震災では、倒壊した家屋等に閉じ込められた人々の多くは、救助隊員等のほか、家族や近所の住民によって救助されています。
近年、地域コミュニティの衰退が進んでいる事象として、総務省は「昼間に地域にいないことによるかかわりの希薄化」、「コミュニティ活動のきっかけとなる子どもの減少」、「住民の頻繁な入れ替わりによる地域への愛着・帰属意識の低下」などを原因としています。
スイス発のシェアリングエコノミー「pumpipumpe」
そんな日本の地域コミュニティが衰退していくなか、スイスで話題になっているのが“貸すことができるアイテムのシールをポストに貼る”新しい形のシェアリングエコノミー「pumpipumpe」です。
「pumpipumpe」は2012年にスイスで発足し、2014年からは非営利団体として活動。その活動は年々拡大しており、今ではヨーロッパ全体の2万世帯以上が参加しています。
無駄な買い物を減らし、地域のコミュニティで貸し借りすることができるこのサービス。その方法はとても簡単で、どこの家にも必ずあるポストにシェアできるアイテムのシールを貼るだけです。
シールは、バーベキューセットやチーズフォンデュの機械などのキッチングッズ、ミシンなど、全部で50種類。毎日は使わないけれど、いざとなった時に必要なモノが主に展開されています。
貸し借りで生まれる「人と人」のコミュニティ
このシェアリングエコノミーが生むのは、無駄な買い物を減らすことだけではありません。
オンライン文化が普及した現代に足りていない、人と人がオフラインで繋がる瞬間や地域のコミュニティも生みます。シェアサイクルやシェアカーなど、ひとつのモノを多くの人で使い合う時代が今世界中でスタンダード化されつつあります。日本の「あたりまえ」だったコミュニティ文化「お隣さんに足りないものは借りる」アイデンティティが最先端のトレンドとして世界中で普及する日もそう遠くはないかもしれません。
地球を健康にするためのSDGs。
その鍵は日本の「先人の知恵」にあるかもしれません。