世界のCEO3,000名に調査!20%が「政府のサステナビリティー目標が達成できない」と回答
サステナビリティーの達成には、政治や個人のアクションはもちろん、企業の貢献も欠かせません。企業のサステナビリティーを重視した経営に切り替えることをが求められています。
そんな中、日本アイ・ビー・エム株式会社(IBM)が実施した最新の調査の日本語版が公開され気になるデータが。「CEOは実践しているが、サステナビリティー戦略が組織全体に浸透していない」という結果も。CEOの本音はどうなのでしょうか。詳しくみてみましょう。
世界で活躍するCEOが考える「サステナビリティー戦略」
調査結果の具体的なポイントを見ていきましょう。
(1)SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)は最優先事項の1つ
サステナビリティーの向上について、半数近くのCEOが「今後2~3年の組織における最優先事項の一つである」と回答しました。2021年のおよそ3分の1から、48%にまで増加し、37%アップしたことに。SXへの意識が高まっているのが伺えます。
(2)CEOがダイレクトにSX戦略に関与
調査対象のCEOの70%近くが、サステナビリティー戦略の策定に直接関与していると回答。多くの企業が、CEO主導でSX実現に向かっているようです。
(3)サステナビリティー投資は業績向上をもたらす
80%以上のCEOが、「今後5年間にサステナビリティー投資が業績向上をもたらす」と考えていることが判明。半数近く(45%)のCEOは、サステナビリティーがビジネスの成長を加速させると考えています。
調査結果から、世界的に企業のSX戦略は急務であるという意識が高まり、CEOが旗振りをしている、という傾向がわかります。
同調査では、取締役会メンバー、投資家を筆頭に、SXと向き合い実践しようとしていることがわかりました。日本でも、2020年8月に経済産業省経済産業政策局が発行した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」でSXが提唱され、企業にSXを求める“圧”がますます強くなっていくと考えられるでしょう。
同調査によれば、多くのCEOがサステナビリティー戦略を実施している一方で、課題に直面しているという結果も見えてきました。CEOがSXを進める上で抱える課題として、次の点が上位に挙げられています。
- ROI(投資利益率)や財務的なメリットが不明確・・・60%ちかく
- データからのインサイトの不足・・・44%
- 規制による障壁・・・43%
- 技術的な障壁・・・35%
データをうまく活用することができなければ、サステナビリティーの投資収益の測定も難しいと言えます。
IBMコンサルティング担当シニア・バイス・プレジデントのコメント
シニア・バイス・プレジデントのジョン・グレンジャー(John Granger)は次のように述べています。
「CEOは、戦争、インフレ、人材不足、新型コロナウイルスによるパンデミックなど、かつてないほど複雑な環境の中でリーダーシップを発揮しています。このような困難な状況にもかかわらず、企業はサステナビリティーに積極的に取り組み、現在ではサステナビリティーを最優先事項として位置づける企業が増えています。しかしながら、データとテクノロジーによって戦略と結果のギャップを埋められることを、多くの企業が十分に理解していません」
CEOがSXを進める一方で、サステナビリティー戦略が組織全体に浸透していないというのも、大きな課題と言えるでしょう。
すべてのCEOに提唱する6つのアクション
企業のサステナビリティーと価値向上のためのSXには、データの活用から組織全体への浸透に向けての努力をはじめ、さまざまなアクションが必要です。IBMは同調査結果を受けて、以下のアクションをすべてのCEOに推奨しています。
<(1)自社のサステナビリティーを巡る課題に対して自らの責務を全うする
–サステナビリティーの追求へ積極的に取り組む
–サステナビリティー実現へのストーリーを描き、それが自社にとって大変重要な機会であると表明する
(2)テクノロジーへ投資し、自社の技術およびデータ基盤とガバナンスを構築・維持する
–オープンで相互運用可能なテクノロジーへ投資し、全社的にデータ・ソフトウェアの採用やイノベーションを大規模かつスピーディーに進める
–「組織化」「連携」「共創」「アジリティー」「情報に基づく意思決定」のため、技術およびデータの基盤とガバナンスを構築する
(3)サステナビリティーの推進策の立案・実施において積極的に社員や人財の参加を促す
–実践スキルや専門性の高いパーパス・ドリブンな(存在意義を重視する目的意識の高い)人財を引き付け、定着させる
–サステナビリティーの推進策を立案・実施するにあたり積極的に従業員を巻き込む(4)サステナビリティーのマインドセットを醸成し、全社共通の関心事として取り組む
–社内の主要な部門やラインの責任者を巻き込んで協力体制を敷き、皆で説明責任を共有するよう徹底する
–社内の中核部門においてサステナビリティーに対するマインドセットを醸成し、全社でサステナビリティーの向上を図る
(5)エコシステム・パートナーとのコラボレーションの機会を追求する
–共通のサステナビリティー目標の達成に向けて、主体的にエコシステムを構築し、パートナーの参加を促す
–パートナーと力を合わせ、オープン・イノベーションを推進することにより、インサイトの創出や推進策の立案、取り組み効果の拡大を後押しする
(6)課題へ十分備え、指標を定めて常に成果を出すことに集中する
–透明性、長期的目標、新たな価値の源泉に重きを置いた数値や指標を定め、追跡する
–「Think big, start small」(志は大きく、スタートは小さく)の精神を持ってスピーディーなスケールアップを心がけ、それによってサステナビリティーの価値を示し、主要な利害関係者から支持を得る>
同調査では、サステナビリティー投資に対するCEOのスタンスが4タイプに分類されました。調査レポートには、現状維持型CEO、コンプライアンス重視型CEO、オペレーション重視型CEO、変革型CEO、それぞれのタイプに合わせたアクションも提唱されています。
日本におけるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の動向は、経済産業省サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会でも議論されています。併せてチェックしてみてください。
調査方法
IBM Institute for Business Value(IBV)は IBM 経営層スタディ・シリーズ第 25 版の一環として、経済分析・予測を手掛けるオックスフォード・エコノミクス社(Oxford Economics)の協力の下、世界 40 カ国超・28 業界に及ぶ 3,000 人の CEO を対象にインタビューを実施した。インタビューのポイントは、①リーダーシップやビジネスに対する各 CEO の見方、② CEO の役割と責任の変化、③サステナビリティー(持続可能性)の 3 点。サステナビリティーに関しては、課題にどう取り組んでいるか、自社にとっての好機は何か、将来の展望などについて尋ねた