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そもそも「SDGs」って一体何?


そもそも「SDGs」って一体何?

2015年に国連サミットで採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の通称「SDGs」をテーマにしたニッポン放送の特別番組『なるほどSDGs~10年後の未来へ~』が3月28日に放送された。社会活動に興味を持っているという女優、剛力彩芽さんが、日本における「SDGs」研究の第一人者である慶応義塾大学大学院政策メディア研究科の蟹江憲史教授をゲストに迎え、「SDGs」を学ぶ同番組。まずは「『SDGs』とは何なのか」という基本から、有識者ならではの視点で解説した。

あなたは「SDGs」という言葉をご存じですか?

そんな一言で始まった特別番組『なるほどSDGs~10年後の未来へ~』。パーソナリティーとしてラジオの生放送に出演するのは、今回がほぼ初めてだという剛力さんは「楽しく、わかりやすい内容になったら」と意欲を語った。

そもそも「SDGs」とは一体何なのか。

「エグザイルの新しいグループ?」
「K-POPアイドル?」
「コロナウイルスと関係あるのでは」

番組で紹介された“街の声”はこんなところ。テレビ、ラジオ、新聞などメディアでも最近よく聞くようにはなったものの、知っていると答えたのは50人中10人だった。2019年8月の朝日新聞の調査でも認知度は27%と低く、興味・関心はあってもまだまだ詳しい中身を知らない人が多いのは間違いない。

「SDGs」の読み方は「エスディージーズ」。15年9月に国連サミットで世界のリーダーによって採択された国際社会共通の目標のことで、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。頭文字に複数形の「s」をつけて「SDGs」と呼ばれている。

同じく国連サミットで採択された宣言をもとに01年に策定された前身の「ミレニアム開発目標(MDGs)」は先進国主導で決まったもので、途上国から地域の偏りなどの「見落としがある」との反発も出た。それを受け、「SDGs」は、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを謳い、先進国と途上国が一丸となって達成すべき目標で構成されているのが特徴となっている。

気になるその中身は、どんなものなのか。「SDGs」は「17のゴール(目標)」と、そこから枝分かれした「169のターゲット(具体目標)」からなる。「17のゴール」は以下の通りだ。

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

貧困や飢餓、気候変動という社会問題に加え、働きがい、まちづくりなど経済活動にかかわる分野まで、現在の世界が抱える課題が包括的に挙げられている。この「17のゴール」を目指す上で必要なものとして具体的に示されているのが「169のターゲット」。例えば、「1.貧困をなくそう」では、以下のような「ターゲット」が並ぶ。

1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困 をあらゆる場所で終わらせる。
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、 女性、子どもの割合を半減させる。
1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービ スへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、 天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的 資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、 気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に 暴露や脆弱性を軽減する。
以下略

外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダ」仮訳より

「SDGs」について、剛力さんは「正直、私自身も詳しくなくて、最近知ったのが本当のところです。このお仕事をもらって、自分なりに勉強して、エコにつながる洗剤を手に入れたりとか、リサイクルに向けたりしています」と明かす。そこで、指南役として登場したのが日本における「SDGs」研究の第一人者である慶応義塾大学大学院政策メディア研究科の蟹江憲史教授。剛力さんは、「ミスターSDGs」とも呼ばれる専門家に詳しい解説を仰いだ。

剛力さんがまず「かわいいですね」と注目したのが、蟹江教授が襟元に着けていたカラフルな円形のピンバッジだった。実はこれ、国連本部が販売しているもので「バッジに使われている17色は17のゴールを意味しています。SDGsをサポートする人がつけている『ホイール』と呼ばれるものです」と蟹江教授。このピンバッジを身に着けるビジネスパーソンが今、日本の企業などで増えているのだという。

「外務省のホームページには、よりよい世界を目指す国際目標とありますが……」と、その中身に切り込む剛力さん。すると蟹江教授は「難しいですよね ボーっとしていてわからないですよね」と応じ、かみ砕いた言葉で「SDGs」の意味を説明した。

「2030年のみらいのカタチを表していると考えてください。世界には今、いろいろな問題や課題がありますが、2030年の世界のために、少なくとも抑えておこうという17個の目標(ゴール)が並んでいるのです。この17個を抑えて2030年に進んでいけば間違いないという“未来の骨格”を表しているのがSDGsと言っていいかと思います」

この「SDGs」には196の国連全加盟国が賛同しており「みんなが『これを目指そうよ』となっているので、大胆なことが言えるのです。17の目標の下に、より具体的に何年までにこういうことをやろうよとか、どのくらい削減しようとかのターゲットが169個ぶら下がっている。例えば12番目の目標の3つ目のターゲットには『2030年までに世界全体の一人当たりの食品ロス(食料の廃棄)を半減させよう』とある。そういうのを全部合わせると169個ということです」

ところで、この「SDGs」になぜ多くの企業が注目し、積極的に取り組むようになったのか。持続可能な社会というものに対する地球規模での危機感の高まりはもちろん第一にあるが、さらに大きな影響を及ぼしたのが17年に開催された、政治経済のリーダーが集まる世界経済フォーラム「ダボス会議」だといわれる。そこで「SDGsを達成することで12兆ドル(約1320兆円)を超える経済価値が生まれ、3億8000万人の雇用が創出される」との試算が発表されると、それまで地味だったイメージが一変。ビジネスの力を使って世界を変えていこうという機運が高まり、多くの民間企業が関心を持つようになった。

日本では経団連も「SDGs」推進の姿勢を打ち出し、学校教育の場で教えられて若年層の認知度も高まったことで、今や企業のブランディングにもかかわるワードとなってきている。いわば民間を巻き込んで「官民連携」の流れが生まれたことで、政府、省庁の枠を超えて大きな注目を集めるようになったわけだ。

もう一つ、わかりにくいのが「SDGsの表す「持続可能な~」という文言。蟹江教授は「今も将来も、同じものがより良くなって続いているというのが『持続可能』という言葉の意味です。例えば、男性ばかり働いて女性が働いていなかったら、それはなかなか社会が先に進まないですよね。みんなが楽しめる社会、幸せになる社会という非常に明るい未来を描いているのがSDGsです。もう一つの特徴は、やり方が決まっていないということ。目標とターゲットが決まっているけど、やり方は自由。自分がやりやすいように、やりたいようにやる。すると、同じ目標を目指す人がつながって、規模もどんどん大きくなっていきます」

蟹江教授の説明に「SDGsは広めることもそうだし、自分たちが何をできるか考えるきっかけにもなりますね。どうしても形としてゴールがあると、こうしなきゃいけないという決まりごとがありそうですけど、そうではなくて、そこに向かって自分たちが何をできるとかということですね」と剛力さん。蟹江教授も「そういう面白さがあるのがSDGs」と呼応。「国連が決めたというと堅苦しいものをイメージしがちですが、割と柔らかいものなんです。目標のために何ができるのか。国連が決めたことだからと言って構えないで、考えるのが一番大事」と続けた。

「SDGs」の成り立ち、意味がわかってきたところで気になるのが、社会や経済への影響、さらに世界の「SDGs」への取り組みについて。番組の後半では、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しむ現在の世界情勢など具体的な事例を交えて、「SDGs」を深掘りした。

(※番組後半の記事はこちらから)