1年間に4万種の生物が絶滅に!世界三大珍味を生むあの動物も絶滅の危機に
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7月下旬、世界の絶滅危惧種をまとめたレッドリストが更新されました。大きな背びれが特徴のバチョウカジキや渡り鳥のウズラシギが新たに絶滅危惧種に指定され、今回の更新で、絶滅の危機がある野生生物の種数は4万1,459種になりました。
さらに、卵がキャビアとして珍重されるチョウザメは、世界に生息する全26種が絶滅に危機に面しているとされました。つまり、これから先、キャビアが食べれなくなってしまうかもしれません。
今回は絶滅危惧種に指定されると社会や私たちの暮らしにどんな影響があるのか、考えていきたいと思います。
世界の生き物が徐々に減っている?
WWF(公益財団法人世界自然保護基金)とZSL(ロンドン動物学会)が算出している、2020年の「世界の生きている地球指数(1970~2016)」によると、過去50年で生物多様性は約68%が失われているそうです。中でも、すべての地域で淡水域での「生きている地球指数」は減少しているようで、日本の在来種である淡水魚のニホンウナギも絶滅危惧種に指定されています。
ウナギだけでなく、以前は太平洋クロマグロも絶滅危惧種でした。現在は、太平洋クロマグロは準絶滅危惧にランクが引き下げられましたが、いずれにしても日本人が愛する魚が危機的状況にあることには変わりありません。
なぜ、ウナギやマグロが絶滅の危機に?
環境省のによると、1975年以前は、1年間に絶滅する種数は1種以下でしたが、現在は1年間に4万種もの生きものが絶滅しているようです。1年間に4万種とは、驚愕の数字ではないでしょうか。
生物が絶滅に追い込まれる原因はさまざまありますが、ここではウナギやマグロのような河川や海洋の生き物の主な絶滅原因を見ていきましょう。
1.気候変動
温室効果ガスなどの影響もあり、気候が変わっています。水温の変化や、生物多様性の変化も影響し、生物にとって棲みづらい環境に。
2.土壌や海洋の汚染
マイクロプラスチックや重金属、廃棄物、船舶からの燃料や投棄などにより、生き物が暮らす環境が汚染されます。
3.沿岸や海上、海底の開発
開発に伴い、化学物質の流出や汚染、廃棄物の増加、海底の破壊などが懸念されます。
4.漁業や海運
違法な漁や、海運事故、投棄なども問題に。
5.外来種
もともと地域に生息していなかった生物(外来種)が、在来の生物を食い荒らしたり、駆逐したりすることにより、在来の生態系が変化し、生態系サービスの劣化が起こることがあります。
絶滅危惧種に指定されると、どんな影響が?
絶滅危惧種のリストは「レッドリスト※」と呼ばれ、国際的には国際自然保護連合(IUCN)が作成、国内では環境省や地方公共団体、NGOなどが作成しています。
※環境省は、日本に生息・生育する野生生物について、生物学的な観点から個々の種の絶滅の危険度を評価し、レッドリストとしてまとめています。動物については、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、汽水・淡水魚類、昆虫類、陸・淡水産貝類、その他無脊椎動物の分類群ごとに、植物については、維管束植物、蘚苔類、藻類、地衣類、菌類の分類群ごとに作成しています。
では、ある種がレッドリストに入ると、私たちの暮らしにはどのような影響があるのでしょうか。ニホンウナギの例を見てみましょう。
1.価格の高騰により手の届かない存在に
ウナギの数が少ないため、需要に対して供給が上回り、市場価格が高騰します。深刻な状況が続けば、ますますウナギは高級食材になってしまうでしょう。
2.代替品の販売
ウナギの供給不足に伴い、別の原料を用いてウナギの蒲焼を模した商品を開発しています。実際に、イオン株式会社では新たな「蒲焼」商品として、パンガシウス(ベトナムの養殖場で養殖されたナマズの一種)を店頭で販売している。
3.トレーサビリティーの確保
希少性が増すと、密漁の懸念も増します。違法に取引されたものではないウナギを選ぶことが重要ですが、現状はすべてのウナギがトレースできる訳ではありません。信頼できる購入先を見つけることが求められます。
4. 予約販売などによる発注量の適正化
絶滅危惧種に関わらず重要なことですが、希少なウナギの食品ロスをなくすためには、発注数などの販売管理がより重要になります。株式会社ヨークベニマルでは、土用の丑の日の前後に、スーパーバイザーによる店舗別の過不足を徹底。また、割引や特典のPRで予約注文を行い、確実な販売に繋げている。
生物の絶滅を防ぐために…私たちができることは?
生物が失われることで、他の生物への影響も出てくるかもしれません。日本の在来種を失うのは、とても残念なこと。ウナギをはじめ、危機にさらされている生物を守るために、私たちにはどのようなことができるのでしょうか。
1.脱プラスチック活動をする
まずは自分が使用したものが、生物が棲む環境を壊しているかもしれないという意識をもちたいところ。近年、スタイリッシュな脱プラスチック商品が多く流通しています。一度「プラスチックをできるだけ消費しない」とルールづけると、モノを購入するときも、マイボトルやマイバッグを持ち歩くときも、ゲーム感覚で楽しくプラスチックゴミを減らせるでしょう。
2.二酸化炭素を含む温室効果ガスを減らす
温室効果ガスを減らすために、公共交通機関を利用したり、家庭では衣服で調節してエアコンの温度を28℃にしたり、小さな心がけを続けていくことも大切です。電気やガスを環境に配慮されたものに変えていけるといいですね。
3.河川・海に親しむ活動に参加
海辺や川辺で生物に親しむイベントが、全国各地で行われています。自然の中で楽しむうちに、より問題意識が芽生えてくるかもしれません。家族や友人とレジャーを兼ねて、クリーンアップ活動などの環境保全活動に参加するのもおすすめです。
近い将来、ウナギやマグロなどをはじめとする、日本人が愛する魚が食べられなくなる恐れがあります。SDGs目標14の「海の豊かさを守ろう」や目標15の「陸の豊かさも守ろう」にもあるように、絶滅危惧に関して、私たちができることを考えなくてはなりません。今と変わらず美味しい物を食べ続けるためにも、小さなアクションから始めていきたいですね。
企画・編集 / 佐藤
ライター / 継田