日本各地でオーロラ観測!?2025年ピークが予想される「宇宙天気災害」に意識を!
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先月、世界各地でオーロラが観測される珍しい現象が起きました。ふだんは見られない低緯度の地域でも観測されています。日本でも北海道をはじめ本州各地でオーロラが確認され、XなどのSNS上では、次々とオーロラ写真がアップされて話題となりました。
今回の一連の現象は、5月8日から連続して起きた大規模な「太陽フレア」の影響によるものです。「太陽フレア」とは、太陽の表面にある黒点付近で起きる爆発現象のことをいいます。
太陽フレアの規模は、観測されるX線の強さによって5クラスにランク分けされており、最大のカテゴリーが「Xクラス」です。今回は、そのXクラスの太陽フレアが合計13回観測されています。
特に、5月15日に発生した太陽フレアはX8.7と最も大きいものでした。またXクラスのフレアが72時間で7回発生したことは、観測史上初めてのことだそうです。
神秘的で美しい「オーロラ」は、どうしてできるのか?
オーロラは、太陽から放出される目に見えない電気を帯びた粒の流れ「太陽風」が、地球の大気にぶつかることで発光する現象です。地球をはじめ水星や金星などの太陽系の惑星は、常にこの太陽風にさらされています。
理科の授業で、地球が北極をS極、南極をN極とするひとつの大きな磁石だと習ったのを覚えていますか?「太陽風」は、地球のN極やS極に引き寄せられます。オーロラが北極や南極に近い場所で見られるのはこのためです。
今回のような大規模な太陽フレアが発生し、強い太陽風が地球に吹き付けると、地球の磁場が大きく乱れる「磁気嵐」が発生します。すると、オーロラのベルトが低緯度の地域にまで拡大します。そのため、今回は日本からもオーロラが見られたのです。
緯度の低い地域で見られるオーロラを「低緯度オーロラ」といい、赤く見えるのが一般的です。今回SNSに投稿された日本各地のオーロラも赤い色でしたね。
オーロラは日本の古文書にもたびたび登場しています。 鎌倉時代の公家・藤原定家が書いた「明月記」には、日没後の空に現れた赤い光「赤気(せっき)」に恐れを抱いたことが記されています。この赤気こそがオーロラだと考えられています。
また、江戸時代の国学者である本居宣長も「不思議な赤い光を見た」と日記に記しています。このように、赤いオーロラ=低緯度オーロラは昔から日本で見られていた現象でした。
突然空の色が赤くなるオーロラは血の色を連想させるため、不吉なことが起きる前兆と思われていたようです。昔の人はさぞかし怖かっただろうと想像がつきますよね。
宇宙天気と宇宙天気予報とは
オーロラの出現と併せて今回大きく報道されたのが、通信障害や衛星故障です。地磁気が乱れることで、電力設備の故障や誤作動の恐れもあり、幅広い分野で深刻な影響がでる可能性があるといわれています。
今回は幸いにして大規模な通信障害などは報道されませんでしたが、過去には1989年に、カナダのケベック州で大規模停電が起きました。この時発生した太陽フレアはなんとX15クラスだったそうです。
このような太陽風による磁気嵐の乱れなど一連の自然現象を「宇宙天気」といい、それによるさまざまな被害を「宇宙天気災害」といいます。そして災害被害を防ぐために太陽活動を観測し、起こりうる現象を予測するのが「宇宙天気予報」です。
情報通信研究機構(NICT)が運営している配信サービス「宇宙天気予報」では、リアルタイムで太陽表面の様子などを見ることができます。
さらに興味がある方は、地磁気観測所のウェブサイトもおすすめです。ここでは、磁気嵐速報や過去3時間の地磁気活動、前日の地磁気活動などのデータを見ることができます。過去3時間の地磁気活動が「穏やかです」となっていると、なんだかホッとしますよ。
太陽の活動期はあと1、2年でピークに?!
太陽はおよそ11年周期で変動を繰り返しています。黒点の出現数が11年周期で増えたり減ったりを繰り返し、それにともなって太陽フレアの発生数も変化しているのです。実は今、太陽は非常に強い活動期にあり、2025年がピークになるという試算もあります。
先月発生した太陽フレアによる巨大磁気嵐は、数十年に一度あるかないかというレベルだったといわれています。巨大地震などと同じく、さらに大きな太陽フレアがいつ起きてもおかしくない状況といえるでしょう。
新しい自然災害「宇宙天気災害」に備える
スマートフォンが使えないなどの通信障害や大規模停電が起きたとしたら、私たちの生活が大混乱するのは目に見えています。昔の人たちが赤いオーロラを見て感じた恐怖とは別次元の恐ろしさとリスクが、現代社会に生きる今の私たちにはありますよね。
太陽活動というとスケールが大きすぎてピンと来ないかもしれませんが、新しい自然災害として、心の準備くらいはしておく必要があるのではないでしょうか。
執筆/フリーライター こだま ゆき