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楽しいはずが…ひとり親家庭が直面した物価高騰による“厳しい”夏休み


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10 人や国の不平等をなくそう
楽しいはずが…ひとり親家庭が直面した物価高騰による“厳しい”夏休み

子供の頃はとても楽しみだった夏休み。ところが大人になり、親になった人たちからは「早く終わって欲しい…」という本音が聞こえることもしばしば。その声はシングルの家庭だとより顕著のようです。

養育費保証サービス「養育費保証PLUS」を運営する株式会社Casaが今年、シングルマザーを対象に行った、“ひとり親世帯の夏休みの生活状況について”のアンケート調査。この結果から、“夏休みを満喫したい子ども”と、“より負担が大きくなる母親”で、夏休みに対するギャップが発生していることがわかりました。

2024年のシングルマザーの夏休みの生活状況を調査

今年6月、子どもの貧困対策“改正法”が成立しました。改正法案では、離婚後のひとり親への養育費の支払いを促すため、政府が、養育費を受け取っている親の割合を定期的に調査し対策の検証を行うことが定められています。今後はこの改正法に基づいて、必要な予算措置などの検討が行われていきます。

一方で、改正法案は成立したものの、シングルマザーへの支援やリアルな生活状況について世の中の理解はまだまだ高まっていない状況です。そんななか話題となっている“ひとり親世帯の夏休み問題”。このリアルな実態を把握するため行われたのが今回の調査です。

生活費が上がる一方、上がらない賃金

シングルマザーの夏休みの生活状況を把握するため、まずCasaが調査したのは、家計や生活費に関することについて。

物価の高騰をうけ、今年の夏休みの家計について(例年との違いを)聞くと、「とても厳しくなった」「少し厳しくなった」と答えた人は合わせて94%に上り、家計が厳しいと感じている人が非常に多くいることがわかりました。また、夏休みの生活費についても「上がった」と答えた人が93%となりました。

今回アンケートの調査対象となったのは日本シングルマザー支援協会の会員で、雇用形態としては「正社員」が56%、「自営業」を除く雇用形態として不安定な「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」「無職」の割合は全体の36%でした。物価高騰が続く一方、賃金については上昇した人は20%弱で、「変わらない」と答えた人は60%を占める結果となりました。

物価高騰と夏休みの生活費が圧迫されている中で、賃金が上がっていないことがさらに苦しい状況をつくっているといえます。

夏休みが子供の”体験格差”を生んでしまう!?

さらに、シングルマザーの方が、子供の夏休みをどのように捉えているのか、リアルな声を聞くと「現状の期間より短くしてほしい」と答えた人が56%という結果に。

理由については、子どもの面倒を見るための労力や、生活費、仕事との両立に対する負担などをあげる方が半数近くを占めました。
また、「アクティビティを体験させる余裕がない」という人も半数を超える結果となり、金銭的にも労力としても夏休みがシングルマザーにとって負担になっていることが分かります。

家事・育児と仕事を両立させるのは、両親揃っていても大変ですが、それがより大変になるのがシングルマザーです。

夏休み期間中に諦めたことについての質問でも、「アクティビティ」と回答した方が最も多く38.3%、次に自分自身の趣味が23.4%という結果になりました。シングルマザーならではの事情から、夏休みは、“体験格差”が発生する機会になってしまっているとも考えられます。

日本シングルマザー支援協会 代表理事の江成道子氏は、「ひとり親世帯に限らず、物価高騰は多くの家庭に大きな影響を与えています。特に子どもがいる世帯にとって、例年は楽しい夏休みが、今年は厳しいものとなっています。母親の疲労という観点から見ると、通常でも子どもが家にいる時間が増える夏休みなどの⻑期休暇は心配が多いですが、今年は特に、食費や光熱費の増加による負担も懸念されています。この状態が続けば、母親の労働意欲にも悪影響を及ぼしかねません。今後については、子どもの見守りや預け先の確保、そして何よりも物価高騰に対応した賃金アップの施策が求められます。」と見解を示しました。

企業への依存ではなく、政策としての対応が期待されるシングルマザーをはじめとしたひとり親家庭の問題。毎年夏休みを楽しみにしている子供たちのためにも、来年にはなにか少しでも状況が改善していることを願います。

・日本シングルマザー支援協会 代表理事 江成 道子氏
一般社団法人グラミン日本 アドバイザリーボード、さいたま市男女共同参画委員、日経×woman アンバサダー2018年6月フォーブスジャパン「新しいイノベーション!日本の担い手99選」に選出。
シングルマザーの自立支援に特化した活動をしており、会員数10,500名、パートナー企業数は250社を超える。自治体とのひとり親支援連携協定の締結。
企業と自治体との連携の中、収入アップを軸としたシングルマザー支援を行う。
こども家庭庁主催共有座談会のゲストスピーカー


フリーライター Yuki Katagiri