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“日本の切り札”を大阪万博で披露!次世代太陽光発電「ペロブスカイト太陽電池」


この記事に該当する目標
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 11 住み続けられるまちづくりを
“日本の切り札”を大阪万博で披露!次世代太陽光発電「ペロブスカイト太陽電池」

「ペロブスカイト太陽電池」をご存知ですか。 ちょっとむずかしいその名前、最近よく耳にするようになったな、と感じている人も多いかもしれません。「薄くて、軽くて、曲げやすい」という特徴を持ったペロブスカイト太陽電池は、徐々に私たちの生活の身近なものに実装されていきそうです。

実用化に向けた動きが加速!ペロブスカイト太陽電池とは

経済産業省は先月、次世代の太陽電池として注目される「ペロブスカイト太陽電池」について、2040年には20ギガワットを賄うという普及目標を発表しました。一般的に1ギガワットは原子力発電所1基分に換算されるので、原発20基分相当となります。国は補助金などで導入を支援し、再生可能エネルギーの拡大を目指す方針です。

このペロブスカイト太陽電池、実は桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が2009年に発表した日本発の技術です。電気を発生する材料のペロブスカイト薄膜を印刷物のインクのように“塗って乾かす”方法で作られます。作製当時の発電効率は3~4%と低く不安定でしたが、直近10年間で変換効率は約1.5倍に向上し、2024年11月現在では26.7%までになっています。

フィルム状で柔軟性に優れるペロブスカイト太陽電池は、広く普及しているシリコン太陽電池からの置き換えが期待されています。

シリコン太陽電池については過去の記事で説明しているので、ぜひ読んでみてください。
軽くて曲げられる?!次世代太陽電池の有望株「ペロブスカイト太陽電池」とは

ペロブスカイト太陽電池の種類

ペロブスカイト太陽電池は、フィルム型、ガラス型、タンデム型(ガラス)に大別されます。フィルム型は、軽量で柔軟な特徴を活かして、これまで設置が難しかった建物壁面などへの導入が可能です。日本はこのフィルム型で技術的に世界をリードしています。

ガラス型は、ペロブスカイトをガラスとガラスの内側に塗布して作られる技術によって作られます。高層ビルや住宅の窓ガラスなどに“発電するガラス建材”として代替設置が期待され、設置環境に合わせてさまざまなサイズや透過性などに対応できるのが利点です。

タンデム型(ガラス)は、現在一般的に普及しているシリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池を組み合わせたものです。研究開発段階にあり、世界的には巨大な市場が見込まれると考えられています。

現在国内では、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた開発が進められており、来年度からは一部の企業で事業化が開始される予定です。国際的に存在感を増しているのが中国で、スタートアップ企業が複数設立するなど国際競争も激化してきているようです。

ところで、ペロブスカイト太陽電池の主な原料であるヨウ素は、日本が南米チリに次いで世界第2位の生産国だということをご存知でしたか? なんとシェア約30%を誇ります。ヨウ素は日本の国土に豊富に含まれる地下水から取り出されるため、原材料を安定した価格で調達できるという大きなメリットもあるのです。資源に乏しい日本では安定供給性のある電力エネルギーをどう賄うか大きな課題ですが、そういう意味でもペロブスカイト太陽電池が大きく期待されていることが想像できますよね。

進むペロブスカイト太陽電池の技術開発

ペロブスカイト太陽電池は、電気自動車の屋根などに搭載する開発も進んでいます。エネコートテクノロジーズとトヨタ自動車は2023年から、車載用ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた共同開発をスタートしています。

日本はシリコン製の太陽光パネルにおいて、2000年頃には世界シェアの50%に達していました。その後中国などの海外勢に押され、シェアは直近1%未満となっています。2030年代後半には、その太陽光パネルの大量廃棄がピークを迎えると想定されています。そこで既存のパネルを廃棄せずに架台として再利用して、その上にペロブスカイト太陽電池を設置する取り組みもあるようです。

大阪万博ではペロブスカイト太陽電池のある未来を体感できるチャンス?!

あと4ヶ月ほどに迫った大阪・関西万博では、ペロブスカイト太陽電池をさまざまな形で披露しようと、国内メーカーが準備を進めています。

パナソニックグループのパビリオンでは、ガラス建材と一体化したペロブスカイト太陽電池「発電するガラス」を使った吊りオブジェのアートを見ることができそうです。設置場所の自由度が高い特性を活かして、都市の景観に溶け込むデザインの自由度の高さを体感できる展示内容になる予定です。

画像出典:パナソニックグループ プレスリリース

また、西ゲート交通バスターミナルの全長250メートルの屋根に設置されるのは、積水化学工業が開発中のフィルム型のペロブスカイト太陽電池です。蓄電池に電力を貯めて、夜間のLED照明の点灯に活用される予定です。

万博は世界中から多くの人やモノが集まる一大イベントです。2025年大阪・関西万博がきっかけで、ペロブスカイト太陽電池は新たなアイディアやイノベーションを生む存在になるかもしれませんね。


執筆/ フリーライター こだまゆき