SHIBUYA SKYでヘラルボニーによる企画展『「PARADISCAPE」異彩を放つ作家たちが描くせかい』を開催
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「渋⾕スクランブルスクエア」の14階・45階・46階・屋上に位置する展望施設「SHIBUYA SKY」。渋谷上空229mから広がる360度の景⾊を味わうことができる本施設の46階に直結している屋内展望回廊では、「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES」と題して、本格的な企画展を定期的に開催しています。なお、2025年1⽉16⽇(⽊)からは、シリーズ第8回目となる企画展『「PARADISCAPE」異彩を放つ作家たちが描くせかい』が行われるのだとか。ここでは「ヘラルボニー」が魅せる本展を通して、SDGsについて考えていきたいと思います。
“ふつうじゃない”ことの新たな可能性を示す「ヘラルボニー」
改めて、ヘラルボニーとは、「異彩を、放て。」をミッションに掲げながら、新しい⽂化をつくるアートエージェンシーのこと。国内外の主に知的障がいのある作家の描く2,000点以上のアートデータのライセンスを管理し、様々なビジネスを展開しています。このエージェンシーの特徴は、⽀援ではなく対等なビジネスパートナーとして、作家の意思を尊重するところにあると言えるでしょう。異彩を放つ作家たちに対し、正当なロイヤリティを⽀払う仕組みもしっかりと構築しているそうです。この姿勢は、「10. 人や国の不平等をなくそう」にも繋がっていますよね。クリエイティブな能力を高めつつ、社会的・経済的な機会にアクセスしやすい環境が整えられているように感じます。また、ビジネスを通して幅広い形の「異彩」を社会に送り届けることで、従来の「障がい」のイメージにも変化が発生するかもしれません。80億⼈の異彩がありのままに⽣きる社会の実現を⽬指していることが伝わります。
SHIBUYA SKYを体験し生み出された作品の数々
そんなヘラルボニーが今回の企画展で描くのが、全ての⽣命が同様に輝く⾃由な世界。共⽣と多様性が織りなす明⽇のパラダイス。再開発で移ろいゆく都市の上空で、⽣物たちが⼒強く躍動する様子を捉えました。多様な⾊彩や繰り返される形は、 都市の⽔平線と重なり、⾊めくビルボード、⾏き交う情報と共鳴、 ⽣命のリズムが眼下に広がる都市の情景と呼応していきます。
ちなみに「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES」では、「視点を拡げる」を共通テーマに、アーティストが展望装置である本施設を体験したインスピレーションから制作された作品を、過去の7回でも展開してきました。今回も同様に、⼀部のアーティストが実際にSHIBUYA SKYを体験し、新たな作品を生み出したとのこと。
それでは次からは、一体どんな作品に出会えるのか、出展作家の方々などをチェックしていきましょう。個性豊かな生き物を発見する冒険へ出発です。
3つのテーマに沿って移り変わる眺め
3つのテーマに分けて作品の展示を行うという本展。最初のテーマは「アーバンサファリ」です。現代的な都市⽣活と野⽣動物の⽣息地が隣り合わせにあるかのような想像で、鑑賞者に新鮮な驚きを与えてくれます。
本展のキービジュアルにもなっているこちらの作品は、やまなみ⼯房の⿃⼭ シュウ氏が手掛けたもの。SHIBUYA SKY 46階からの眺めを特別だと語る彼の目には、写真とは違うずっと遠くの空と街が、⾃分の頭の中で空想とリアルでごちゃまぜに映ったそう。豊かな色彩、そして緻密な筆使いに心奪われます。
続く「群と移動」というテーマでは、厳しい⾃然を⽣き抜くための群れが形成する美しいシルエットや、動きのリズムが⾃然界の調和を感じさせるよう。
⽣まれながらにして脳性⿇痺と知的障がいがある⽥﨑 ⾶⿃氏は、ウミウの表情や動きにそれぞれの個性を与えました。群れの中での役割や関係性が複雑に浮かび上がっていることを感じさせます。
最後のテーマ「境界のない世界」では、⼤地の多様性と⽣命⼒を育む⼤らかさ、さらには海の神秘的で深淵な世界に浸ることができるはず。
岩瀬 俊⼀氏は、彼独⾃の視点で余⽩を余すことなくモチーフを配置しました。紙⾯いっぱいに広がる動物たちは、勢いを感じさせつつ、ゆったりのびやかな優雅さも感じさせますね。このような豊かな表情を持つ生き物をはじめ、多彩な⾊の組み合わせの⾵景が溶け合う作品群は、⾃然界の驚異と美しさ、そしていのちの輝きそのものを観る者に訴えかけるでしょう。
肩の力を抜いて自分らしさを発見できる場所
さてここまで、それぞれのテーマから作品を抜粋してお届けしましたが、⽣命が皆等しく輝いている⾃由な世界に触れてみると、「自分のままでいいのだ」とすっと認められるような感じがしました。こうした鑑賞が、多様性に目を向けるきっかけになりそうだなと感じると同時に、この気づきこそ「16. 平和と公平をすべての人に」の取り組みにも繋がっているように思います。
また、アートというのは、観る人によっていろいろな捉え方ができることも醍醐味ですよね。一人で企画展の世界観にどっぷり浸かるのももちろん素敵ですが、どう感じたかを誰かと共有することで、新しい視点を得られるのではないでしょうか。相手の感じたことを受け止め、多様で多彩な価値観を知る。『「PARADISCAPE」異彩を放つ作家たちが描くせかい』が、あたたかい世の中をつくる第一歩として果たす役割は大きいのかもしれません。
アイキャッチ画像:©渋谷スクランブルスクエア 「PARADISCAPE」異彩を放つ作家たちが描くせかい
執筆/フリーライター 黒川すい