女性の活躍が社会を変える原動力に|東京都女性活躍推進大賞が描く未来のカタチ
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1月28日、東京都庁で「令和7年度 東京都女性活躍推進大賞」の贈呈式が開催されました。本賞は、女性の活躍推進に優れた取り組みを行う企業や団体、個人を表彰するもの。12回目となる今年度は、11の受賞者が選出されました。式典で小池百合子都知事は、「女性の力こそが社会を変える原動力」とコメント。SDGsの目標5「ジェンダー平等」にも直結する、最新の女性活躍の現場をレポートします。
現場の小さな声が組織のカルチャーを塗り替える
今回の受賞企業をみていくと制度の整備という段階を越え、現場の声から組織のカルチャー(文化)そのものをアップデートしている姿勢が浮かび上がりました。
事業者部門で大賞を受賞した株式会社白川プロの事例は、その象徴といえます。24時間365日稼働し、不規則な勤務があたりまえとされてきた映像制作業界。その過酷な環境下で、同社は社員一人ひとりの人生に徹底して寄り添うことを選びました。
シフト制を柔軟にアレンジし、介護や育児といった個別の事情に合わせた独自制度を拡充。結果として、業界では異例ともいえる「介護・育児を理由とした離職者ゼロ」を達成しました。働き方を仕事に合わせるのではなく、仕事を人生に合わせる。変革に挑む組織が心に留めるべき重みがありました。
また、同じく大賞を受賞した医療機器メーカーのテルモ株式会社では、一見小さな、しかし当事者にとっては切実な現場の声が変化の起点となりました。
きっかけは、女性社員から上がった生理時の漏れへの不安。同社はこれを真摯に受け止め、なんと30年ぶりに工場の作業着のパンツの色を、白色から紺色へと変更しました。言いにくいことを言える環境を整え、それを迅速に形にする。その積み重ねが、女性が安心して実力を発揮できる土壌を育んでいます。
10年の積み重ねが花開く 自発的なキャリア形成への挑戦
同じく大賞を受賞した株式会社オリエントコーポレーションも、長年取り組んできた改革が大きな実を結んでいます。
同社では、女性執行役員が全国の女性管理職一人ひとりと個別面談を実施し、現場の声を直接経営層が拾い上げ、さらに、異業種と連携したネットワーク活動も展開しています。
インタビューに応じた担当者は、「ここに至るまで10年、11年と活動を続けてきました。先輩たちが積み重ねてきたことが、ようやく今、花開いてきたと感じています」と語りました。
長く続く組織だからこそ、活動がマンネリ化するリスクもありますが、同社は昨年プログラムをリニューアルするなど、常に「今」に合わせたアクセルを踏み続けています。「ここで終わりではなく、次につなげていかなければならない」という言葉からは、持続可能な推進への強い使命感が伝わってきました。


「変化を恐れない」リーダーが挑む40年目の組織変革
優秀賞を受賞した株式会社ウィルミナの代表取締役社長にも、変革の舞台裏を伺いました。
40年の歴史を持つ同社に、4年前、スタートアップ出身の経営者が就任してまず取り組んだのは、組織に深く根付いていた「会社は男性が回すもの」という無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の打破でした。
「まずは企業のビジョンとミッションを時代に合わせて再定義し、それを社員一人ひとりに浸透させることから始めました」と振り返ります。
しかし、長年培われた文化を変えるのは容易ではありません。「正直なところ、私よりも既存の社員の方々のほうが、変化に対する戸惑いや抵抗が大きかったと思います。これをやってどんな効果があるのか。その意味が本当に理解され、腹落ちするまで、粘り強く対話を重ねるプロセスが何より大変でした」。
制度を作るのは簡単ですが、それが組織の血肉となるまでには、時に痛みを伴う変化への覚悟が必要です。2024年には、同社では女性管理職比率が53.8%に達しましたが、それは数字を追った結果ではなく、一人ひとりの意識がアップデートされた証。「浸透させるまでが本当の仕事」という言葉には、変革に挑む組織が心に留めるべき重みがありました。
業界の悩みを共有し共に進む新しいパートナーシップ
一方、一社単独の努力ではなく、業界全体を巻き込んだ「共創」の動きも加速しています。
特別賞を受賞した「Asset Management Women’s Forum」は、資産運用業界の女性活躍を推進する業界横断のネットワークです。男性中心のイメージが強いこの業界において、女性管理職のロールモデルが少ないという共通の悩みを抱えるなか、野村アセットマネジメント株式会社の呼びかけにより、複数の大手運用会社が参画して活動が始まりました。
「各社それぞれに悩みはありますが、業界共通の課題も多い。社を越えて情報交換し、ベストプラクティスを共有することで、課題解決の時間を短縮し、みんなで『いいとこ取り』をしていこうとしています」と、ネットワークの意義を語ります。
当初4社だった参加企業は、24社にまで拡大。ライバル同士が手を取り合うこの形は、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」を体現するモデルケースといえるでしょう。
また、優秀賞を受賞した大日本印刷株式会社やKDDI株式会社でも、経営層が女性管理職や候補者層を支援する「スポンサーシッププログラム」を導入。上が伴走し、横がつながる。多角的な支援の輪が確実に広がっています。
誰一人取り残さない、地域コミュニティというセーフティネット
SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」社会。その視点から地域部門で大賞を受賞したのが、特定非営利活動法人EPOです。
重症心身障がい児の通所支援施設を運営する同法人は、子どもたちの支援はもちろん、その母親たちが社会から孤立しないためのコミュニティ運営に力を入れています。24時間のケアが必要な子どもを持つ母親にとって、社会との繋がりを保つことは容易ではありません。しかし、EPOが提供する「居場所」は、彼女たちが一人の人間として前を向くための糧となっています。
女性活躍とは、決して「バリバリ働く」ことだけを指すのではありません。どのような状況にあっても、希望を持って明日を迎えられること。地域というセーフティネットが女性を支え、その力がまた地域を活性化させる。この循環こそが、真の意味でのサステナブルな社会の姿ではないでしょうか。
私たち一人ひとりが描く「WA(輪)」の未来


式典の挨拶時に小池知事は、「Women in Action」、その頭文字をとって「WA(輪)」を旗印に、「女性活躍の輪」を日本全体に拡げていきたいとコメント。
女性活躍推進は「誰かのためのチャリティ」ではなく、組織や社会が変化の激しい時代を生き抜くための「生存戦略」でもあるのです。
受賞した11の物語は、どれもが小さな一歩から始まっていました。東京という大都市で芽吹いた輪が、日本中、そして世界中へと広がっていく未来。それは女性だけでなく、男性も、子どもも、高齢者も、すべての人にとって生きやすい世界であるはずです。
<令和7年度 東京都女性活躍推進大賞 受賞者一覧>
⚫︎大賞
【事業者部門】
株式会社白川プロ、テルモ株式会社、株式会社オリエントコーポレーション
【地域部門】
特定非営利活動法人 EPO
⚫︎優秀賞
【事業者部門】
株式会社NISHI SATO、株式会社ウィルミナ、大日本印刷株式会社、KDDI 株式会社
【地域部門】
特定非営利活動法人ママチャーリーズ
⚫︎特別賞
【事業者部門】
Asset Management Women’s Forum
【地域部門】
清水 文
執筆 / フリーライター 小見山友子





