理数能力トップクラスなのに大学の理系学部卒業比率は最下位?|国際女性デーに考える、日本の“理系女子”の未来
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科学・技術・工学・数学を指すSTEM分野、その大学卒業者に占める日本の女性⽐率は、わずか17.5%。この比率は、OECD38カ国の中では最下位なのだそう。しかし、世界的に見ると、日本の15歳時点の女子生徒たちは、数学・理科の学⼒トップクラスを誇っています。決して能力が低いわけではないのに、この状況は一体どうして起こっているのでしょうか。その背景には、どうやら性別に関する“思い込み”が潜んでいるようです。こうした状況の改善を目指し、東京都が初めて開催したイベント「キラリ☆サイエンスFes!」。本記事では、その取り組みに焦点を当てます。3月8日の“国際女性デー”に合わせて行われた本イベントから、女性の選択肢拡大について考えていきましょう。
成績≠進学率……日本に“理系女性”が少ない理由
まずは改めて、⽇本でSTEM分野における女性の⽐率が低い理由を深掘りしていきます。前述の通り、理数の成績が優秀にもかかわらず、STEM分野に進む割合が低い日本。その原因の一つとして挙げられるのは、性別に関する「無意識の思い込み」でしょう。


例えば東京都⽣活⽂化スポーツ局『令和5年度性別による無意識の思い込み実態調査』によると、男性よりも女性の⽅が教科に対する“無意識の思い込み”を持つ人の割合が⾼いという結果が出ています。しかも、成長とともにその思い込みを持つ人が多くなる傾向にあるのだとか。


また、多くの女子生徒が、理系の仕事と言えば専門職をイメージし、「理系に対して⽇常⽣活との関連が想像しにくい」と感じていることを示すデータも。こうした意識が、理系分野を遠ざける要因になっていると考えられます。
進路のカギは「職業観」への早期アプローチ
成長とともに性別に関する思い込みが強まることを考えると、文理選択を行う高校生までの経験の積み重ねが大切になってくるのかもしれません。


実際、『R6 Studyplusトレンド研究所調査』の結果が示すところによると、理系を選択する学生は、小学校から高校までの間に理系体験を多く経験している傾向があるそうです。また、文理選択をした時期を見ると、約4割が中学生の段階で方向性を決めているのだとか。したがって、早い段階で理系体験に触れることで将来の選択肢が広がる可能性があります。


それに加え、子どもの進路相談に乗ることも多い保護者側のアップデートも必要不可欠でしょう。東京都⼦供政策連携室『令和7年度 第1回SNSを活⽤したアンケート結果』では、子どもが相談をした時に、「男だから」「女だから」という視点で進路選択に意見を寄せたことがある保護者が一定数存在していることが分かりました。保護者も性別に関する「無意識の思い込み」に気づくことが必要──そのような背景も相まって、今回のイベント「キラリ☆サイエンスFes!」は、子ども・保護者どちらも参加できる形式で行われました。
メイクやファッションも“科学”でできている


さて、そんな「キラリ☆サイエンスFes!」は、親子ともに理数への意識が変化しそうな工夫が随所に散りばめられていました。会場に並んだ多様なブースは、STEMを“身近なテーマ”として感じることができる内容が勢揃い。例えば、美容液づくりやARメイク体験、さらにはモーションキャプチャー体験など、普段の生活の中で、AIやデータ解析といった技術が使われているのだと感じられました。


さらに、これらの体験コーナーと合わせて、ステージコンテンツも見逃せません。特に印象的だったのは、慶應義塾⼤学総合政策学部 教授・中室 牧⼦氏と、(公財)⼭⽥進太郎D&I財団 COO・⽯倉 秀明氏が登壇した「親の⼀⾔がチャンスを奪う!?〜データで⾒る、⼦どもの可能性の広げ⽅」という保護者向けプログラム。“子どもの可能性を最⼤限に広げるヒント”が詰まった学びの場として機能していた本プログラムでは、親の思い込みや関わり⽅が⼦どもに与える影響について、最新データを用いて解説されました。参加した保護者から⼦育てに関する質問が上がるなど、濃密なディスカッションが繰り広げられた場面も。登壇者と参加者が一体感を持って、日本の理系女性の未来に向き合おうとする姿勢が伝わってくるようでした。
ジェンダー平等の第一歩は「選択肢」を増やすこと
人口減少社会にある日本において、持続的な発展には多様な人材の活躍が欠かせません。人口の半分を占める女性の可能性を十分に活かすことこそ、日本の未来にとって重要な課題でしょう。


「科学は難しそうだと思っていたけれど、楽しいと思えた」、「今まで興味のなかった分野にも興味がわいた」、「私も理系女子になりたい」……小さな体験が、将来の選択肢を大きく広げるきっかけに。イベント終了後に聞かれた子どもたちの声には、本イベントの意義が宿っていました。「女性の可能性を十分に活かす=女性がもっと理系に進むべき」という簡単な話ではありません。性別に関係なく、自分の興味や得意分野に基づいて進路を選べる社会づくりが大切なのです。そして、一人ひとりが輝く環境を創ることが、東京、日本の発展、そして持続可能な社会の実現につながるのです。国際女性デーに開催された本イベントは、SDGsが掲げる目標のうち、『4.質の高い教育をみんなに』・『5.ジェンダー平等を実現しよう』に強く結びつく取り組み。東京都の挑戦を皮切りに、女性活躍の輪が広がっていく……そんな明るい期待が、今回の「キラリ☆サイエンスFes!」からは垣間見えました。
執筆/フリーライター・黒川すい





