子どもの「体験格差」を解消して自己肯定感を育むフローレンスの「こども冒険バンク」とは?――フォレストアドベンチャー・よこはまで体験プログラムを開催
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認定NPO法人フローレンスが展開する「こども冒険バンク」の無料体験プログラムのひとつ、フォレストアドベンチャー・よこはまでの体験アクティビティが10月某日に開催されました。プログラムには、5組の家庭が参加し、未就学児から小学生まで、たくさんの子どもたちが自然豊かな森での冒険を楽しみました。
子どもたちの「体験格差」を埋める「こども冒険バンク」
小さい頃、家族で海や山のレジャーに出かけたり、キャンプやアトラクション施設などのアクティビティに出かけたりした経験は、大人になっても色鮮やかに思い出せる大切なものです。ところが、家庭の経済的な理由などから、夏休みなどの長期休暇であってもどこにも出かけられない子どももおり、子どもたちの体験機会には格差が生じてしまっているのが現状です。
世帯年収300万円未満の家庭では、3人に1人が学校外の体験がゼロとなってしまっており、学校外での体験や経験がない子は、自己肯定感が下がってしまう傾向がみられ、就学や就労の意欲が低下し、貧困の連鎖にも繋がります。
このような「体験格差」を埋めるべく、認定NPO法人のフローレンスが新規事業として「こども冒険バンク」を設立しました。「こども冒険バンク」は、経済的に厳しい家庭などに年間を通して体験プログラムを提供するプラットフォーム。企業や団体と連携して、さまざまな無料プログラムを提供していきます。
今回のプログラムは「こども冒険バンク」の理念に有限会社パシフィックネットワークが共感し、自社事業のフォレストアドベンチャーで実施することになりました。フォレストアドベンチャーは、大自然の中で思いっきり体を動かし、大人も子どもも本気で遊ぶことのできる、自然共生型のアウトドアパークを全国40カ所以上で展開しています。なるべく環境負荷を抑え、自然の森をそのままの形でジップラインなどのアクティビティ施設を設置しており、森の中の非日常を体験できるようになっています。
怖さや緊張を克服し、森の中で大冒険!
森に到着した子どもたちは、目をきらきらさせて、たちまち樹上のアクティビティに夢中になっていました。でもまずは、安全のためのレクチャーから。ハーネス、命綱やカラビナの使い方をスタッフやビデオ講習で学びました。
講習や装備の着用が終わり、早速木に登った子どもたち。ロープや木板、網などを使って作られた橋が木から木へとかけられており、少しずつ高いところへと移動できるようになっています。
樹上は思いのほか高さがあって、緊張してしまう子もいれば、高さも気にせずにスイスイと木から木へと歩いていく子もおり、それぞれのペースで冒険に踏み出していきます。ちょっぴり怖がっているお子さんには、親御さんやスタッフが「頑張って!」「ゆっくりで大丈夫だから」声をかけ、子どもは勇気を出して慎重に足を進めていました。木から木へと移動する際は、カラビナのかけ替えがありますが、子どもたちも大人の手を借りることなく、自分の手で真剣にかけ替えていました。
アクティビティの最後はジップライン! まるでターザンのように、一気に地上まで滑り降ります。意外とバランスが難しく、カッコよく足から着地とはならず、背中から降りてしまう子が多いものの、滑り降りた子どもたちは弾けるような笑顔を親御さんに向けていました。
最初は少し怖がっていた子どもも、いつの間にか高い場所も平気になって、もっと高いところや難しそうなアクティビティにもどんどん挑戦するようになっていました。後半は、親御さんの方がバテてしまって、「もう1回行ってくる!」と、何度も何度もアクティビティに挑戦する子どもたちをそばで見守るように。時間ギリギリまで、たっぷりと森での大冒険を漫喫しました。
「こども冒険バンク」の取り組みについて、運営に携わる認定NPO法人フローレンスの皆川春菜さんは、次のように語りました。
「フローレンスでは、子育てをはじめ子どもたちの未来のための社会課題の解決を目標に活動をしています。これまでにも、病児保育や障がいのあるお子さんの保育を行ったり、お困りごとのある子育て家庭へ食品をお届けしたりと、さまざまな取り組みを行ってきました。
子育て家庭の方々とコミュニケーションを取っていく中で、「夏休みが終わっても学校に行きたくない」と言っているお子さんが少なくないことに気付きました。理由を尋ねると「絵日記に書くようなことが何もなかったから」だと。学校ではみんな、どこに行ってきた、何が楽しかったと話しているのに、どこにも行かなかった子はその会話に入れないんです。
そして、周りが当たり前にできていることを自分はできていない、ということが積み重なると、自己肯定感を得られず、何かを頑張ってやってみようという気持ちをなかなか持てなくなるんですね。特に最近は、学力だけでなく、学生生活の中で何を頑張ってきたか、という部分も重視されるようになってきています。そういう風潮の中で、子どもの頃の経験というのは非常に大切なもの。だからこそ、この体験の格差をなくしていきたいという想いで、「こども冒険バンク」のプロジェクトに取り組んでいます。
今日、たくさんのご家族が楽しんでいらっしゃる様子を目の当たりにして、みなさんに喜んでいただけたことが本当に良かったです。体験にも、文化的なものや学習性のあるものなど、いろいろな種類がありますが、今回のような自然体験は特に自己肯定感に関わってくるものなんです。幼少期に自然体験が多かった子と少なかった子を比較した場合、多かった子の方が自己肯定感が高いというデータもあるんですよ。今回は、パシフィックネットワークさん、フォレストアドベンチャーさんに企画にご賛同いただき、実現できたことを、とても感謝しています。
子どもたちも、最初はうまくできるかな?と不安を感じていたかもしれませんが、やってみたらできた!という体験を、きっとできたのではないかと思っています。今回、参加してくれた子どもたちにとって今日という日が親御さんとの素敵な思い出になって、将来に…特に何もなくてもいいのですが、何か良いものとして残ってくれると嬉しいです。
今後もいろいろなパートナー企業様、団体様と、いろいろなプロジェクトを企画して、子どもたちの体験格差を解消してくために取り組んでいきたいと思います」
この日参加したご家族にも、少しだけお話を聞きました。小学生のお子さんと父親とで参加したお母さんは「普段はお出かけする回数もあまり多くなくて、こういう場所に行きたくても、家からの交通費に加えて施設利用費も、となると、なかなか選択肢には上がってこないというのが正直なところ。今日は子どももとても喜んでいて、私自身も自然は大好きなので、来られて良かったです。なかなかできない体験を、子どもと一緒にできました」と、自然豊かな場所で、家族みんなで遊べたことが嬉しかったと話していました。お子さんも「最初はちょっと怖かったけど、やってみようと思ってやったら、いっぱいやれた。4番(のアトラクション)が一番好き! ビューってすぐ終わって、何度も行けるから」と、インタビュー後もすぐに駆けだしてしまいました。
別の男の子にも話を聞いてみると、「(網の中をくぐるところで)靴が脱げちゃったりして、難しかったけど、楽しかった! ママはちょっと遅かった」と、疲れて少し遅れてくる母親を茶化すように答えてくれました。男の子の母親は「子どもは何度も何度も、無限にチャレンジしていたんですけど、親は思ったよりハードで大変でした。うちの子どもは体を動かすのが好きなので、参加できてよかったです。また機会があれば参加したいですね」と、少しお疲れ気味ながらも、やわらかな笑顔でお子さんを見守っていました。
子どもたちにたくさんの体験を届けて、未来で頑張る力を育んでいくプロジェクト「こども冒険バンク」。未来を託す子どもたちのためになるような思い出を、いっぱい作っていってほしいですね。
<サービス概要>
様々な事情により体験が不足しがちな家庭が、企業などが無料で提供した体験コンテンツを自由に選び申し込みができるプラットフォーム。
対象となるご家庭は「こども冒険バンク」LINE公式アカウントを友だち追加のうえ、プラットフォームへの会員登録申請を行い、対象家庭の認証が完了すると、「こども冒険バンク」の会員となり、LINE公式アカウントを通して希望の体験に申し込み、実際に体験に参加できる。
サービス名:こども冒険バンク
運営団体:認定NPO法人フローレンス
URL: https://bokenbank.florence.or.jp/
サービス利用対象者:様々な要因によって体験が不足しがちな家庭
・経済的に厳しい状況の世帯:世帯年収が400万円以下の世帯
・ひとり親、実質ひとり親世帯
※対象については今後変更の可能性がございます
※1会員につき大人2名、こども4名の最大6名までご家族を登録可。
登録人数に応じて月初に体験枠に応募するための冒険チケットが付与される。