牛乳が飲めなくなる?!100%国産の牛乳を未来の子どもたちに残すために
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皆さん、牛乳は好きですか?「毎朝必ず飲んでいる!」という方もいるかと思います。牛乳はたんぱく質やビタミン類など栄養バランスが豊富で、コップ1杯で1日の活動に必要なカルシウム量の約3分の1が摂れると言われています。そんな自然の恵みともいえる牛乳は、乳牛を育ててくれる酪農家の人たちがいなくては生産されません。
ところが先日、国内の酪農家の数が1万戸を割ったというニュースが報道されました。今回は日本の酪農家の現状や、牛乳・乳製品の消費拡大に向けた様々な取り組みについて考えてみたいと思います。
日本の酪農家の6割が赤字、約半数が離農を検討?!
一般社団法人中央酪農会議の調査によると、全国の酪農家の戸数は、2024年10月時点で9960戸まで減少したことがわかりました。2022年以降減少が加速していましたが、全国で1万戸を割るのは2005年に調査が始まってから初めてのことだそうです。
また、全国の酪農家236人を対象に行った経営状況に関する緊急調査によると、酪農家の6割が赤字経営で、8割が経営環境の悪さを感じているといいます。そして半数の酪農家が生産コストの上昇や収入の減少に直面し、離農を検討しているという現状です。
経営環境に悪い影響を与えている要因としては、円安や原油高、ウクライナ情勢が挙がっています。日本の酪農はエサの多くを外国から輸入した飼料を与えることで成り立っているからです。
このまま日本の酪農家の減少が続けば、私たちが当たり前のように飲んでいる新鮮な国産牛乳が入手しにくくなる可能性もあります。今回の発表を受けて、江藤農林水産大臣は会見で「生乳については国内生産をしっかり守っていくことが大事」とし、乳製品の消費拡大を含めて、酪農家の経営を支援していく考えを示しました。
牛乳購入者の65%に認知されていない「酪農家減少」の現状
月に1回以上牛乳等を購入している生活者へのアンケート調査では、3人中2人が酪農家の減少について「知らない」という実態であることもわかっています。とはいえ、98%が「国産の新鮮な牛乳が飲める環境を維持したい」と回答しており、「日本の酪農家を応援したいと思いますか?それとも思いませんか?」という問いには、9割以上が「応援したい」「何か支援する行動をしたい」と答えています。
私も冷蔵庫には常に牛乳やヨーグルト、バターが入っていて、チーズやアイスクリームなどの乳製品が好きな消費者です。今回の報道で日本の酪農家の現状を知ったことで、微力ながらも応援したいという気持ちになりました。ひとりひとりの小さなアクションが、少なからず牛乳の消費拡大につながるのではないでしょうか。
SNSでも拡散されて回避できた3年前の「生乳大量廃棄危機」
今からちょうど3年前、2021年12月の「生乳危機」を覚えていますか。コロナ禍で需給バランスが崩れ「大量に牛乳が廃棄される恐れがある」と農林水産省が発表しました。
事前の推計では約5000トンの生乳が行き場を失う可能性がありましたが、官民あげて「牛乳飲んで!」とアピールし、当時の岸田首相も「年末年始に牛乳をいつもより1杯多く飲んで」と訴えるなどして消費を呼びかけました。コンビニでは牛乳の値引きを実施したり、SNSでも拡散されるなどして廃棄を回避することができました。
牛乳の消費拡大に向けた「牛乳でスマイルプロジェクト」
2022年6月に農林水産省と一般社団法人Jミルクが共同で立ち上げた「牛乳でスマイルプロジェクト」は、様々な企業や団体・自治体などが参加して牛乳乳製品の消費拡大に取り組んでいます。
「日本酪農発祥の地」である千葉県は、県内のショッピングセンターで「冬も牛乳をいっぱい飲モ~!キャンペーン2024」として、牛乳1000本の無料配布イベントを実施しています。また、「土日ミルク」という取り組みでは、子どもたちのカルシウム不足の解決を目的に、学校給食がない日も牛乳を飲むことを促進しています。
牛乳の生産量は季節によって変動します。牛は暑さに弱いため7〜10月は生産量が少なく、冬から春にかけては生産量が多くなります。全国的に牛乳のとれる量が少ない時に消費が増えて、とれる量が多い時期には年末年始や春休みで学校給食がなくなるため消費は逆に減っています。酪農家は冬場の牛乳が余らないように、保存がきくバターなどの乳製品に加工するなどして調整しているのです。
安全な牛乳を365日休まず生産し続けてくれている日本の酪農家さんを応援するために、そして100%国産の牛乳をこれからもおいしく飲み続けられる未来のためにも、年末年始は意識して牛乳を買って飲んでみませんか。 冬の牛乳は乳脂肪分やたんぱく質などの成分が増え、コクが増しておいしいですよ。
執筆/フリーライター こだまゆき