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7月1日にスタートした「レジ袋有料化」とSDGsの関係性 “ミスターSDGs”が強調するのは「まず第一歩」


この記事に該当する目標
14 海の豊かさを守ろう
7月1日にスタートした「レジ袋有料化」とSDGsの関係性 “ミスターSDGs”が強調するのは「まず第一歩」

持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」をリスナーとともに学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』の第4弾が7月16日に放送された。今回のテーマは「14.海の豊かさを守ろう」につながる「レジ袋有料化」。SDGs研究の第一人者として「ミスターSDGs」の愛称も持つ慶応義塾大学大学院政策メディア研究科の蟹江憲史教授をゲストに迎え、有識者ならではの視点で解説してもらった。

今回、司会進行を務めたニッポン放送・新行市佳アナウンサーは2016年のリオデジャネイロパラリンピック、2018年の平昌パラリンピックを取材する中で、 SDGsを身近に感じてきたという。

「取材をしていて、最近パラスポーツを巡る環境が変化しているなと感じるのが、障がいのある人もない人も関係なく、一緒にパラスポーツを楽しむ環境ができてきているということです。パラスポーツは、もともと戦争で傷ついた兵士たちのリハビリテーションとして考案されたものなので、障がいのある方のためのスポーツというイメージが強かったかもしれません。ただ、現在は車いすバスケットボールのクラブチームナンバーワンを決める天皇杯に、健常者の選手もチームの一員として出場してプレーすることができるようになるなど、お互いが刺激し合って競技力向上につなげる環境になってきています。これはSDGsでいうと『10.人や国の不平等をなくそう』の2番目のターゲット『2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する』に当てはまるのかなと思いました。
SDGsというとピンと来なかったり難しいなと感じたりすることもありますが、意外と自分と身近なところ、興味を持っているところにつながってくるのかなと感じます。今回は、なるべく身近なものをテーマに、ということで7月から始まった『レジ袋有料化』、それに伴うSDGsの14番目のゴールである『海の豊かさを守ろう』について、お話していこうと思います」

そして、有識者としてオンライン会議システム「Zoom」を通じて番組にゲスト出演したのが、今年3月の放送に続いて2度目の登場となった「ミスターSDGs」ことSDGs研究の第一人者である慶応義塾大学大学院政策メディア研究科の蟹江憲史教授。7月1日にスタートした「レジ袋有料化」と、それに繋がるSDGsの話を解説してもらった。

まずは、番組リスナーから届いたのは基本的な質問。「レジ袋有料化は正直、何に効果があるのか分かりません」というもの。蟹江教授は「『海の豊かさを守ろう』という14番目の目標に、直接的には関係してきます。というのも、レジ袋はプラスチックでできていて、これがいろいろな形で海に流れていってしまうと、すごく小さなプラスチックゴミになって、それを魚が食べてしまったり、それを結局我々が食べる魚にも戻ってきてしまったりするということです」と説明した。

SDGsの目標14『海の豊かさを守ろう』は、海洋・沿岸生態系の持続可能な利用を推進し、海洋汚染を予防するとともに、海洋資源の持続可能な利用によって発展途上国などの経済的利益を増大させようとするもの。そして、その1番目に「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」とのターゲットが定められている。

蟹江 「レジ袋の問題は温暖化、つまり13番目の目標である『気候変動に具体的な対策を』につながり、目標12『つくる責任、つかう責任』にもつながってくる。いろいろな広がりを持っているのがSDGsの一つの特徴ですが、それはレジ袋の問題にもいえることです」

新行 「レジ袋の海洋への影響というのは、そもそも大きいのですか?」

蟹江 「本当に“塵も積もれば山となる”ということだと思います。環境省によると1964年から2014年までの50年間で、プラスチックの製造量は20倍以上増えている(1,500万→3億1,100万トン)。そのうち海に流れていってしまうものが、少なくとも毎年800万トン(ジャンボジェット機5万機相当)くらいあると試算されています。このままいくと、2050年までに海のプラスチックの量が海の魚の量よりも多くなるとまでいわれているのです。極端な話、海に釣りへ行ったら2回に1回はプラスチックが釣れてしまう、そんな世界になってしまうことが予想されている。それを防ぐ一環としてレジ袋の問題があるということですね」

Sergei Tokmakov, Esq.によるPixabayからの画像

今回のレジ袋有料化、蟹江教授は何より“意識の変化”を生むことが最大の効果ではないかと分析する。

「レジ袋はゴミ袋にも使える何かと便利なものですが、元々無料でもらっていたものに、お金を払わなければいけなくなった。それによって使う量を減らすことを考えると思うんです。これからはゴミ袋を買わないといけなくなる。そこにもお金がかかってくる。ただ、それが本来の姿。『高くつくから、じゃあゴミの量も減らしましょう』ということにもなってくる。ゴミの量を減らすというのはSDGsの目標12にも載っていますが、そこへの効果も出てくるのではないかと思いますね」

では、実際に年間800万トン出る海洋のプラスチックゴミの中で、レジ袋はどれほどの割合を占めているのだろうか。蟹江教授は「これくらい・・・というのは難しいが、かなりの量が海に流れてしまっていることは分かっています」とし、大阪湾に沈むプラスチックごみのレジ袋を推計したところ、300万枚に上ることが判明したことなどを紹介した。

このレジ袋の問題に、積極的に解決に取り組む企業も増えてきている。前回の記事で紹介した株式会社セブン&アイ・ホールディングスもその一つであり、さらに当サイト「SDGs MAGAZINE」の記事(https://sdgsmagazine.jp/2020/07/15/321/)にもなっているワタミ株式会社もそう。「から揚げの天才」「鳥メロ」「ミライザカ」などで知られるワタミは、有料化の対象にならないバイオマス素材の配合率25%以上のレジ袋を導入。テイクアウトやデリバリーなど、どうしてもビニール袋が必要な場面で「エコビニール袋」として使用している。

蟹江 「バイオマス素材25%以上のレジ袋を使うと、地球温暖化対策に寄与するという面で、非常にいいことだと思います。少し前からスターバックスコーヒーなども紙のストローにする活動をしていますが、プラスチックじゃなくても大丈夫なものを別のものに変えていくことも大事なことだと思うんです。それによって、いろいろな人が考えるきっかけになるという意味でも、こうした行動はすごく大事なんじゃないかなと思います。新型コロナウイルスの問題では、一人がマスクをすることで社会全体を守ることができる。レジ袋も同じこと。一人の行動だけかもしれないが、それをみんなでやれば温暖化を防いでいける。そうした大きな動きにつながっていくのではないかなと思います」

一人一人の意識の変化、努力がSDGs達成に重要なポイントとなる。そう強く訴える蟹江教授だが、一方で“少しずつ”意識を変えていくことが重要であることも強調する。

「まずは第一歩。レジ袋を有料にすることで意識が高まってくる、その効果が重要なんじゃないかと思います。エコバッグにしても、毎回持っていかなきゃと思うとプレッシャーになるが、2日に1回とか気が付いた時に使うだけでも、これまでより半減になりますよね。それだけで大きな効果が出ます。そんなに気張らないで、できることからやっていくことが大事。それが積もり積もれば大きな流れになっていく。少なくともポイ捨てはしないとか、そういう気持ちが大事なのかなと思います。プラスチックは便利なので使うことも必要ですが、使い捨てはしないという意識を持つことだと思います」

そして、蟹江教授は最後にリスナーにメッセージを寄せた。

「まず第一歩から進める。あまり気張らずに気楽に、それが自分のお金の節約にもなる。そういう楽しみを見つけながら、やっていくのが良いのではないかなと思います」

蟹江教授が代表を務める慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボのサイト(http://xsdg.jp/)では「SDGsの観点から見た適切な日本のプラスチック利活用の実現に向けて」というレポートを掲載中。さらに専門的な理解を深められる内容となっている。