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「地球の緊急事態にアートこそ出来ること」東京藝術大学のSDGsへの想い


「地球の緊急事態にアートこそ出来ること」東京藝術大学のSDGsへの想い

「アートはSDGsにどう関われるのか?」
世界的にみてSDGsの認知度が低いと言われている日本。そんななかアート業界でもSDGsを推し進めるための取り組みが行われていることをご存知でしょうか? 日本で唯一の国立総合芸術大学、東京藝術大学(以下、藝大)では2021年6月にSDGs推進室を設置。SDGsの達成に貢献するために検討を進めています。
そして2022年2月15日には「東京藝術大学SDGsビジョン発表及び無料公開ウェビナー」と題し、学長の澤和樹氏らによる藝大が目指す「SDGsビジョン」についてのオンライントークが公開されました。

「藝術はずっと前からSDGs」 語り継がれる名作に込められたもの

はじめに澤和樹学長は藝大の目指す「SDGsビジョン」として4つのテーマを紹介。

• 東京藝術大学は、SDGsが掲げる社会変革に貢献します。独創的な視点からイノベーションを生み、人の心を動かす藝術の力によって。
• 東京藝術大学は、社会との結びつきを強化します。SDGsを共に目指すことで新たな連携の広がりを。
• 東京藝術大学は、持続可能な大学を目指します。学内の自然の”美”と多様性の”鮮やかさ”を守ることで。
• 東京藝術大学は、藝術と社会の架け橋となる人材を育成します。藝術によって社会課題の扉を開くことを目指して。


「SDGsが掲げる17の目標の中に芸術の文字は一つもありません。それは17の目標全てに芸術が接続すべき必要と出番があるということ」(澤和樹学長)。 そしてベートーヴェンやダヴィンチ、バンクシーらの芸術家を例に挙げ「大量生産大量消費、大量廃棄が引き起こす地球の悲鳴、そして貧困差別、暴力による人間の悲鳴。すべての芸術家たちは遥か以前からその悲鳴に心を向け作品を生み続けてきました」と語りました。

SDGsの目標到達には芸術の力が必要

さらに澤和樹学長は芸術がもつ力について、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章の“歓喜の歌”を挙げ「まだ自由を叫ぶことがタブーとされてた時代に自由を叫び、それがいま国を超え人種を超えたメッセージになっている。人の心を動かす原動力になりうるということ」と語ったうえで、「音楽とか芸術には国境とか人種とかそういったものを超越し、共通の感動を呼び起こす力があるはず。SDGsで謳われている地球規模の問題解決というのに対し、芸術の力がすごく発揮されなければいけないのでは」と指摘しました。

これまでの時代の流れにアートが「ギアを入れる」

「SDGsの文字のなかには芸術がない。けれども数値(目標)はたくさんある。この数値を達成するには芸術は必要なんだと思います」(日比野克彦美術学部長)。
続けて日比野学部長は「人間がすべてコントロールできるっていうような方向に進んでいたなかで『あれ?』っていう時代が今。思いっきりアクセル踏んでたものを、やっとちょっとギアを入れようとSDGsの目標を掲げた。でもどのギアに入れたらいいか分からない。アートというギヤに入れることによって絶対安定するんですよ。緊急事態である今の地球に対してSDGsのなかに芸術を入れていかないとSDGs自体が持続できないのではと感じる」と言及。

芸術がもつ本来の力でSDGsを推進していく

ちなみにトーク会場となっていたのは藝大の食堂。ここの食堂では環境負荷の低いカレーが提供されるなど、食品ロス削減への取り組みを進めているのだとか。学内との連携はもちろん、まず学内の認知や取り組みを積極的に広げていることが伺えます。
最後に国谷裕子理事は「藝大の取り組みはまだ始まったばかり。どのようなアクションができるのか、これから積極的に発信していきたい」と締めくくりました。

2021年には「SDGs×ARTs展」を開催

これまでに藝大では2021年「SDGs×ARTs展」を開催。芸術活動とSDGsを結びつけることを目的とし、「芸術はSDGsに接続できるのか」についての様々な取り組みや試行錯誤のプロセスが作品から多様に感じさせるアート展は、来場者へはもちろん、作品をつくった芸術家たちのSDGsへの認識も深めることができた取り組みとなりました。

芸術には人の心を動かす力がある。だからこそひとりひとりの意識を変えていかなければならないSDGsにとって、芸術はとても大切な存在だという気づきを与えた今回のウェビナー。数値目標が目立つSDGsですが、その実現には数値化できない、私たち自身の心の変革こそ根本的に求められています。