【取材レポート】”音の無い世界で対話する”プログラム「ダイアログ・イン・サイレンス」で見つけた、SDGs達成へのヒントとは?
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※画像出典:https://dis.dialogue.or.jp/
突然ですが、みなさんは“エンターテインメント”という言葉からどのようなものを思い浮かべますか?
テーマパークや音楽ライブ、アートミュージアムといったコンテンツが頭に浮かぶの方も多いのでは。今回、SDGs MAGAZINEの記者が体験したエンターテインメントは、それらとは一味違うものでした。その名も、ダイアログ・ミュージアム「対話の森®️」(以下、ダイアログ・ミュージアム)です。
「ダイアログ・ミュージアム」では、現在2つのプログラムを体験することができます。視覚以外の感性を使い、見た目や固定概念から解放された対話を体験できる「ダイアログ・イン・ザ・ライト」と、言葉を発さずに表情やボディーランゲージのみで言語や文化の壁を超えた対話を体験できる「ダイアログ・イン・サイレンス」です。
今回記者が体験した「ダイアログ・イン・サイレンス」は、1998年にドイツで開催されて以降、世界で100万人以上が体験したプログラム。日本でも2017年に初開催された後、約1万人が体験しました。(出典:https://dis.dialogue.or.jp/)
今回の記事では、この「ダイアログ・イン・サイレンス」の体験取材レポートをお送りします。
音が存在しない、”静寂の世界での対話”とは?
音が存在しない世界「ダイアログ・イン・サイレンス」を体験する前に、ミュージアムのスタッフの方から「目の前の扉が開いたら、声を出してはいけません」という説明がありました。
扉が開くと、いよいよプログラムがスタート。今回アテンドをしていただいたのは、聴覚障がいを持つ”かりんさん”という方。マスクから溢れんばかりの笑顔でお出迎えいただきました。部屋の中には「ようこそ静寂の世界へ」という文字も。かりんさんから渡されたヘッドホンを装着すると、完全に音が遮断されました。
プログラムのルール説明を受ける際も、ボディーランゲージのみ。参加者全員がボディランゲージで”喉のカギ”を締め、そのカギをかりんさんに預けます。音の遮断で少し不安を感じながらも、これからのプログラムに期待に胸が膨らみます。
プログラムでは、いくつかの部屋を移動しながら、聴覚に頼らない様々な方法でコミュニケーションを体験していきます。
「手のダンス」という部屋では、アテンドの方からの指示を受けながら手遊びを体験。1人で手遊びをするだけでなく、参加者全員で協力し合って”1つの影絵”を創作します。
続く「顔のギャラリー」という部屋では、参加者の前に様々な表情をした写真が投影され、写真の真似をしながら喜怒哀楽の感情を顔の動きだけで表現していきます。
その後もプログラムは続き、音のない世界でのコミュニケーション手段を増やしていきながら、みるみるうちに参加者同士の距離が近づいていくことを実感しました。
終盤には、体験後の発見や感想を共有し合う「対話の部屋」というプログラムが登場。
「普段の生活の中で、どれだけ言葉や音に頼っているかを実感した」「世界中の人たちとコミュニケーションが取ることが出来るのでは」といった声も。普段は何気なく存在していた“音”のありがたみを感じることが出来ました。
他者の声に耳を傾けることで見えてくる未来
今回の「ダイアログ・イン・サイレンス」の体験を通して、たとえ言葉や音を発さなくても、身体全体で表現することで対話やコミュニケーションが出来ることを実感しました。
ですが、プログラムの中で全てのコミュニケーションをスムーズに出来た訳ではありません。「伝えたいのに伝わらないこと」や「伝えられているのに理解できないこと」に、もどかしさを感じたのも事実です。
そんな状況下でも、「自分の意志を伝えよう」「相手の意志を汲み取ろう」と参加者全員が必死でした。これほど全身を使って必死にコミュニケーションを取ったことは、今まで無かったかもしれません。
プログラムの体験後の館内で、聴覚障がいを持つ男性の方と筆談ボードを通してコミュニケーションを取る機会がありました。「ダイアログ・ミュージアム」にどんな想いを抱いているか尋ねてみると、「世の中には色々な人がいる」という返答が。続いて、「少数派」「多くの人は、初めての人と対話することを避ける」という言葉が筆談ボードに書かれました。
たとえ耳が聞こえて言葉を話すことが出来ても、そこに”他者への理解や思いやり”が無ければ、その対話の意味は失われてしまうでしょう。一人ひとりが「世の中には色々な人がいる」こと自体を理解し、真摯に向き合うことができれば、SDGsの目標達成に近づくことが出来るのではないでしょうか。
他者への声に耳を傾けること。SDGs達成への、小さいけれども大切なヒントを見つけられたような気がしました。
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