東京・京橋エリアに開業した『TODA BUILDING』とは。SDGs要素満載の超高層複合ビルと戸田建設の取り組みに注目!
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当WEBメディアと連携し、パーソナリティの新内眞衣さんとともに未来の地球をより良くするための17の持続可能な開発目標からなるSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。2024年11月3日の放送では建設大手、戸田建設株式会社のSDGsに関する取り組みにフォーカスを当て、東京・中央区の京橋エリアに誕生した超高層複合ビル「TODA BUILDING」をSDGsの視点から“徹底解剖”した。
■話題の複合施設「TODA BUILDING」がオープン
企業によるSDGsの取り組みにも注目してきた「SDGs MAGAZINE」。今回は2024年2月25日の放送でも取り上げた戸田建設の取り組みを再び深掘りするべく、戸田建設株式会社建築設計統轄部より上席主管の中川康弘さん、主任の一本松亜祐さんを招いて話を聞いた。
戸田建設は、1881(明治14)年、初代・戸田利兵衛氏が戸田方として請負業を開始した140年以上の歴史を持つ建設会社。建築工事や土木工事、不動産事業、浮体式洋上風力発電などの再生可能エネルギーによる発電事業など、さまざまな事業を展開している。教育施設も多く手掛け、慶應義塾図書館旧館や早稲田大学の大隈講堂を建設。詳細は戸田建設の公式サイトで紹介されている。
そんな戸田建設によって昨年11月2日に東京・中央区京橋1丁目に開業したのが、芸術文化施設や商業施設などが入る「TODA BUILDING」。SDGs的にも注目の要素が満載の超高層複合ビルについて、まず新内さんは「こちらは、どういったビルなのでしょうか」とたずねた。
中川 「簡単に言えば100年に1度の建て替えを行なった戸田建設の本社ビルです。中央区京橋の地で120年以上社業を営む戸田建設が本社建て替えを機に、隣接した街区と共同して都市再生特別地区制度、『特区』と呼ばれるものを活用し、街に開かれた『芸術・文化拠点の形成』『街区再編』『防災対応力の強化』『環境負荷低減』といったものをテーマに、超高層複合用途ビルを建設しました」
この「特区」とは都市計画において、用途地域などの規制の適用を除外して自由度の高い計画を定めることのできる制度、この制度によって指定された区域のことで、都市再生特別措置法(2002年施行)により創設された。街に開かれた『芸術・文化拠点となるような施設を誘致する、『街区再編』により細い道路を整備して『防災対応力』を強化するといった創意工夫により適用された建物の容積率緩和などの特例を利用することで、幅広い不動産開発を実現できる仕組みとなっている。
新内 「『TODA BUILDING』は何階建てなんですか」
中川 「地上28階建てで、最高高さは165メートルです」
新内 「大きいビルですよね」
中川 「そうですね。かなり大きいビルになります」
新内 「その『TODA BUILDING』では、具体的にどういった取り組み、挑戦を行い、どういった点がSDGsにつながっているか、うかがえますでしょうか」
中川 「コンセプトとしては『人と街をつなぐ』というところに重きをおいておりまして、中央通りに面して大きな広場とロビー空間を設けています。京橋で創業させていただき、長年の感謝の意を含めて、地域に寄り添って喜びを分かち合う場をつくろうと考えました」
新内 「他にはどういった特徴があるのでしょう」
中川 「ビルの特性としては、安心安全な施設をつくるということで、『コアウォール免震構造』というものを採用しています。建物の中央に1メートル幅を超える非常に厚い鉄筋コンクリート造の壁『コアウォール』を配置することで建物中央部の心棒となり、建物の揺れを超高層階までかなり少なくできます。われわれとしては、これにより世界最高峰の安全性を担保していると考えております」
新内 「すごいですね」
中川 「また、事業を継続していかないといけないので、今回は敷地全体を免震化した『安全大地』というものをつくり、地域防災活動も含めた計画とすることで、災害時に必要な情報提供や電源提供を行う設備も備えています」
こうした技術により、耐震グレードは最高レベルの「免震特級」を実現。震度7程度の地震が起きても通常通り業務が継続可能な「軽微な被害」で済むことが想定されている。
中川 「環境技術もかなりふんだんに使っておりまして…」
新内 「おお、さすがです!」
中川 「ZEB(ゼブ)と呼ばれる」
新内 「ZEB?」
中川 「『ネット・ゼロ・エネルギー・ビル』の略称なんですけれども、消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことをZEBというんです」
建物の中では人が活動しているため、エネルギー消費量を完全にゼロにすることは当然できない。ただ、省エネによって使うエネルギーを減らし、使う分のエネルギーをつくる(創エネ)ことでエネルギー消費量を正味(ネット)ゼロにすることができる。ZEBには4段階あり、「50%以上の省エネ+創エネ」で100%以上の一次エネルギー消費量を削減した「ZEB」(カギゼブ)、「50%以上の省エネ+創エネ」で75%以上の一次エネルギー消費量を削減したnearly ZEB(ニアリーゼブ)、省エネで50%以上の一次エネルギー消費量を削減したZEB ready(ゼブレディ)、一次エネルギー消費量の削減を実現し省エネに向けた未評価技術を導入しているZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)からなる。
中川 「『TODA BUILDING』は超高層複合用途ビルにおける建物全体では、2021年の設計認証でZEB Readyを達成しており、53%以上のエネルギーを削減した建物になっています」
新内 「すごいですね。逆に、弱点とかってないんですか」
中川 「なるべく弱点はつくらないようにつくるのが設計の役割だと思っておりますので(笑)」
新内 「(笑)かっこいい!」
■オフィスもSDGs
新内 「新本社のオフィス内にも、さまざなな工夫がなされているんですよね」
中川 「脱・炭素社会を目指した取り組みを行おうと思い、2つのことに着目しました。1つ目が日本の木材の有効活用、2つ目が再生材の利用です」
一本松 「今回、新本社オフィスで木材を利用したいという話が上がった際に、社内で声掛けをさせていただいて、共同事業を行っている北海道の下川町さんに辿り着き、そこで木材の流通を教えていただくことから始めました」
北海道下川町は、政府が創設した「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に選定されているSDGsの先進都市で、ここに着目した戸田建設は下川町と2023年7月に「地方創生に関する包括連携協定」を締結。共同事業を行う中で農業による地域活性化の手段として、いちごの栽培に着目。「つくった先の事まで考えてつくる」という同社の想いを込めたいちご栽培は、大きな注目を集めている(詳細は2024年2月25日の放送レポート「https://sdgsmagazine.jp/2024/03/15/12477/」に掲載)。
一本松 「この下川町産材の価値を高めるため、FSCプロジェクト認証…森の木のマークが紙だったり机だったりとかについていると思うのですが、それをもっと大きな建築のプロジェクトだったり、空間だったりを認証するものとして受賞させていただきました」
FSC認証とは、持続可能な森林管理を促進するための国際的な認証制度で、その認証を取得している北海道下川町は循環型の森林経営を続けていけるよう森林整備計画を定めている。戸田建設は、下川町との包括連携協定締結を契機に下川町の林業の活性化と下川町木材の付加価値向上に取り組んでおり、その一環として不燃化処理をした内装材としてトレーサビリティを確保(調達から消費までを追跡・記録)した木材を多く使用し、ゼネコン本社ビルとして国内初のFSCプロジェクト認証を取得するに至った
一本松 「その他に行なっている取り組みとしては、木材のトレーサビリティの仕組みを確立する『森を忘れないプロジェクト』というものを実施させていただいています。木の一本一本が伐採から加工を経て製品に至るまでの全ての過程を写真や動画で記録し、それをWEBサイトにまとめて、机の上のQRコードなどで読み込むことで『木の記憶』という形で木材の流通を知ることができるプロジェクトを進めており、それによって付加価値をお客様に提供できる取り組みとして行っています」
新内 「この一本一本も、ちゃんとFSC認証をとっている木っていうことですよね」
一本松 「そうですね。FSC認証の中でも、この森林を認証するFM認証(森林管理認証)というものを下川町さんが持たれていて、そこから提供していただいている一本一本認証の取れた木材を管理していたことで、今回プロジェクト認証にもつなげていけたという経緯があります。もう一つの取り組みが再生材利用です。当初、脱炭素の取り組みを本社オフィスで行いたいなというときに、廃棄衣料を素材に変換していらっしゃるメーカーさんがあるという話をうかがって、それを弊社として取り入れました」
戸田建設では全国の作業所に勤務する社員が着用するユニホームを2021年10月に一新。デサントジャパンの協力で、濃紺のスタイリッシュで機能性の高いものにリニューアルされた。その中で廃棄される作業着が8500着、4.4トンほど集まったため、これを粉砕・成形して100%自社の作業着を使った内装ボードを製作。併せて、廃棄されるヘルメットも粉砕・圧縮・成型してテーブルの天板として再生した。
一本松 「こういったように、廃棄となる予定だった材料を使用して新しい材料にアップサイクルできたことで無駄なゴミを出さず、エコにもつながり、そのものの色だったり質感だったりが残ったことで社員の中で愛着を持てるものができたかなと思っております」
新内 「(こうした取り組みの背景には)戸田建設さん全体にSDGsへの取り組みの熱があるということなのでしょうか」
中川 「常に注目というか、何か利用できないかなというところを日々考えているので、そういったところをいかに行動に変えられるかが社員の自己発動につながっているのではないかなと思います」
新内 「本当にSDGsを象徴するようなビルになっていますね」
■「TODAtte?」って?
また、「TODA BUILDING」内の注目施設としてオープンが待たれるのが「TODA CREATIVE LAB(トダ・クリエイティブラボ)“TODAtte?(トダッテ)”」だ。
中川 「8階に戸田建設の受付があり、その受付のフロアに戸田建設グループのミュージアムとして『TODA CREATIVE LAB“TODAtte?(トダッテ)”』というものを創設させていただきました。戸田建設グループのみならず、建設業の過去・現在・未来の姿を見て、触って体験して、楽しく学習していただけるとともに、社会や皆さまが抱えるさまざまな課題を一緒に考えていこうということで、解決する場として広く一般の方々にも見ていただけるミュージアムとしてつくりました」
同ミュージアムは以下の3つのゾーンで構成されている。
(1)「企業文化」:戸田建設の前身となる『戸田方』の創業から現在までの「TODAグループ」としての歩みを、木立を巡るように各テーマを辿る体験ゾーン
(2)「知恵と技術:より良い社会の実現に向けた「知恵」と社会課題に応える技術、社会資本を整備する建設の仕事を、幅15メートルのダイナミックな巨大映像とジオラマで見渡す大空間の体感ゾーン
(3)「未来を考える」: 価値ある未来を創造するための研究開発や体験・実験、他分野の先端企業との協創活動、そして「TODAグループ」の2050年の未来像を緑豊かな丘のシアターで描き出す未来ゾーン
新内 「こちらは、いつから観に行けるのでしょうか」
一本松 「一般公開は2025年3月を予定しておりますので、ぜひ訪れていただきたいなと思います」
そして最後に恒例の質問、新内さんは2人に「今、私たちができること」=「未来への提言」を2人に聞いた。
中川 「私からの提言としましては、境界をつくらないことが新たな喜びにつながるのではないかということです。今回のプロジェクトを通して思うこととして、多様化が進む社会に対して境界をつくらないことが大切だと感じました。これまでの前提条件を見つめ直して、本当に人のため、地域のため、地球のために何ができるかを考え、自分事にして、自分にできるところから行動に変えていくというところが大切だと思っています。多くの人にその部分で助けてもらうことが大切だと思いますし、それによって一緒に良いものづくりをしていきたいなと考えています。結果的に関わった方々の歓びや訪れた方々の歓びを生み出すことにつながれば、私もうれしいです」
一本松 「私は、皆さまに建物や建設業界への興味を持っていただきたいなと思っています。戸田建設はSDGsの目標の中では11『住み続けられるまちづくりを』というものを行っている企業です。ただ、建物の快適性や安全性といった大きな括りでは建設業という仕事がどういうことを行っているのか、あまりピンとこない方も多いのではないかなと思っています。今回の『TODA BUILDING』は、そういった安心安全で使いやすい建物を戸田建設が一丸となって考えてつくったものになりますので、そういったところを知っていただく施設として、ぜひ来ていただきたいなと思っています」
新内 「ありがとうございました!」
中川・一本松 「ありがとうございました!」
新たに誕生した複合施設「TODA BUILDING」の建設哲学に触れ、「ビル自体にSDGsに特化した部分がたくさんあって、戸田建設さんのものづくりに対しての熱い思いとSDGsへの感度の高さを改めて実感できました」と新内さん。3月に一般公開予定という「TODA CREATIVE LAB“TODAtte?”」にも興味津々で「とりあえず、一回行かせていただきたいなと思います!」と体験レポートの実現に意欲を見せていた。