世界初のフランスの衣類廃棄禁止法から考える私たちができること
この記事に該当する目標
みなさんは着なくなった洋服や不要な洋服は、どのような方法で手放しますか?最近ではメルカリをはじめとしたフリマアプリで、着なくなった洋服を販売するなどの方法もありますが、環境省が実施した調査では、68%にものぼる人が不要な洋服は可燃・不燃ごみとして処分しているという報告がされています。
可燃・不燃ごみにだされる洋服のうち5%は再資源に、残りの95%は焼却・埋め立て処分されているそうです。なんと1日あたりに焼却・埋め立てされる洋服の総量は平均1,300トン、大型トラック130台分だといわれています。
このように、アパレル業界では洋服の廃棄処分も環境に影響を与えるとして問題になっていますが、フランスでは、企業が売れ残った新品の洋服を焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止した世界初の衣類廃棄禁止法が施行されました。
世界初のフランスの衣類廃棄禁止法とはどんな法律?
2022年1月に施行された衣類廃棄禁止法は、企業が売れ残った新品の衣類を焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止、リサイクルや寄付によっての処理が義務づけられた法律になります。違反した場合は、最大15,000ユーロ(約190万円)の罰金が科せられます。
これまではスウェーデン・ランド大学の環境経済学トーマス・リンドクビスト教授によって初めて提唱された、生産者が製品の廃棄やリサイクルまで責任を負うという拡大生産者責任(EPR)の考えにもとづいた包装廃棄物に関するEPR法がありましたが、繊維廃棄物に対する在庫廃棄の規制に踏み切ったのはフランスが世界初となります。
2018年にイギリスを代表するブランドの一つであるバーバリーが、盗難や安価で販売されることを防ぐために、売れ残った服やアクセサリーなど3700万ドル(約42億円)相当を、新品のまま焼却処分したことが世間から批判、不買運動にまで発展しました。
その後バーバリーは、余剰在庫の廃棄処分を全面廃止、失業した女性の就職支援のために面接用の洋服を提供することや、慈善団体に洋服を寄付することを発表しています。このように、アパレル業界では必要な量だけを生産するなどの変化が求められています。
スウェーデンやドイツ、世界に広がる洋服の廃棄問題を改善する意識
今回のフランスの衣類廃棄禁止法は、2020年2月に発表された廃棄物対策法のうちの一つとなり、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済社会から、廃棄物を最小限に抑えて、資源をできる限り再利用する循環型経済に転換することを目的としています。
この洋服の拡大生産者責任(EPR)法の導入は、フランスの他にも、スウェーデンでの導入が決定、2024年1月から施行される予定です。また、オランダでも2023年から繊維廃棄物に対する拡大生産者責任(EPR)法が導入される予定で、ブルガリア、イギリス、スペイン・カタルーニャ州も、同様の法案作成が進められているそうです。
日本国内での洋服の廃棄問題の取組みは?
世界で急速に広がっている洋服の廃棄問題の取組みですが、日本においては、各企業の取組みといった限定的なのが現状です。日本を代表する大手アパレル3社の取組みを見てみましょう。
1)ファーストリテイリングの取組み
国内のアパレル業界で売上高1位のファーストリテイリング。ユニクロを運営している会社であり、海外進出も積極的に展開している企業になります。
ファーストリテイリングでは、生産数量の予想精度の改善や物流改革により、必要な量を最適なタイミングで消費者に届けて、生産や販売における無駄をなくす取組みを進めています。また、在庫として残った商品は、値下げや翌シーズン以降に持ち越すなど、最終的に全てを売り切り、廃棄をしない方針で運営しています。
販売後の商品に関しても生産者としての責任を果たすため、全商品を回収、リサイクルし、リユースする取組みを積極的に行っています。
2)しまむらの取組み
「ファッションセンターしまむら」の名前で、求めやすい価格が魅力のしまむらですが、日本国内を中心に、台湾や上海など海外展開もしている企業になります。
しまむらでは、店舗に入荷した商品は、最後の1枚まで売り切ることで、余剰在庫の廃棄処分は行っていません。全店舗の商品動向を分析し、店舗間での商品の移動や適切な値下げを行い、各店舗の在庫を適正な量と内容に保てるように管理する取組みを行っています。
3)青山商事の取組み
紳士服などのビジネスウエアのイメージがある青山商事ですが、カジュアルウエアや雑貨などの分野も展開している企業になります。青山商事では、下取り衣類の循環スキームに積極的に取り組んでいます。
店頭で回収した衣類を選別し、フェルト生地に加工したり、自動車の断熱材や荷物の緩衝材に利用するリサイクル、再流通可能な衣類を古着としてリユースするというように、資源循環スキームを構築しています。
企業に適正な在庫管理を求められる流れは変わりませんが、私たち消費者も、着なくなった洋服を店舗に持ち込むなど、企業と一緒に取り組めることが多くあります。
また、洋服を適切なケア、リペアするなどの工夫で、長く大切に着ることも、消費者として取り組めることの一つです。洋服の廃棄問題は、企業にも、消費者にも、具体的な行動がいま求められているのではないでしょうか。