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流行期真っ只中!ビタミンDの摂取でインフルエンザに負けない体づくりを


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を
流行期真っ只中!ビタミンDの摂取でインフルエンザに負けない体づくりを

昨年秋は、本来冬に流行するインフルエンザが季節外れとも言えるタイミングで大流行しましたね。
そしてインフルエンザの本格的な流行期の今、屋内外や朝晩の気温差、そして暖かくなったと思ったらまたぐっと冷え込んだり、季節の変わり目の自律神経の乱れなどから人々の免疫力も低下し改めて免疫対策への意識が求められています。

一方、連日のように感染症流行のニュースをメディアが取り上げていることからも、免疫ケアへの意識や、対策を実際に行っている方も少なくないでしょう。免疫力を高める方法は食事、睡眠、運動など多岐に渡りメディアで紹介されていますが、その中で今回おすすめしたいのが健康に幅広く関与する昨今注目の栄養素「ビタミンD」の摂取です。

今回は、大阪公立大学大学院生活科学研究科教授でビタミンに関する研究を日々行っている桒原 晶子先生にビタミンDと免疫の関係性や、効率の良い摂取方法などを伺いました。

冬に感染症が流行する理由とその予防策

冬に感染症が流行する大きな理由に、①空気の乾燥、②気温の低下、③日照時間の縮小による免疫力の低下、の3つがあります。

冬は乾燥や気温の低下によりウイルスの感染力が高まる一方、体温の低下や疲労、栄養不足によっても免疫力が低下し、風邪や感染症を発症するリスクが高まります。これらには特効薬がないため、重症化を防ぐ予防策として実は一番重要なのが免疫力の調整です。

免疫力を高めるためには、「食事」「睡眠」「運動」の三つの要素が大切とされていますが、ここで意識したいのが”ビタミンD”の摂取です。

ビタミンDはカルシウムの代謝を調節する重要な役割のある栄養素で、健康な骨を維持するために欠かせない、脂溶性のビタミンです。加えて、免疫機能を調整する働きがあります。殺菌作用を発揮する抗菌ペプチドを作ることを促し、体内に侵入したウイルスや細菌などに対して必要な免疫機能を促進します。このため風邪やインフルエンザ、気管支炎や肺炎などの感染症の発症、悪化の予防にも関与することがわかってきています。

また、COVID-19 で重症化を起こす要因であったサイトカインストームを減衰させる働きもあるといわれていて、免疫力を高めるためには欠かせない栄養素です。

現代の日本人のビタミンDの摂取量は著しく少ない

私たちの健康に貢献しているビタミンDですが、実は摂取量は少ないのが現状です。「平成30年国民健康・栄養調査結果」によると、1日あたりのビタミンD摂取量の中央値は3.5㎍/日と、成人の摂取目安量8.5㎍を大きく下回っていることが分かっています。ただし、この8.5 µg/日は、一定量の日光を浴びているという条件で、不足しないと考えられる摂取量です。

前述にもあるように、ビタミンDは食事だけでなく、紫外線の照射によっても生成される栄養素です。現代人は紫外線を避ける傾向が強く、過剰なUV対策や夜型生活などライフスタイルによって、不足傾向が指摘されています。

ビタミンDの摂取は免疫力を高めてくれますが、逆にビタミンDが欠乏したり不足したりすると、様々な病気のリスクが高まる可能性があることも示唆されています。また、最近では妊婦の健康や胎児の成長にも関わることが報告されており、早い段階で改善に取り組むことが望ましいです。

ビタミンDを効果的に摂取する方法は?

ビタミンDはサンマや鮭、アジなど、魚類に比較的多く含まれています。卵、きのこ類からも摂取できますが、含まれている量は魚類に比べると多くはありません。また、ビタミンDは油と共に摂取することで吸収率が高くなります。ただし、油の摂りすぎには注意しましょう。

また、皮膚で産生されるビタミンDは食事よりも、血中濃度に与える影響が大きいとされています。冬季でも天気の良い日などは、1日15分〜30分程度、日光に当たることもおすすめだと桒原先生は言います。そして、人と同じく食べ物にも、紫外線に当たるとビタミンDが増加する物があります。乾燥きくらげなどがその例ですが、なかでもしいたけは、紫外線に当たるとビタミンD2の「エルゴステロール」が増加し、天日を当てて乾燥した干しシイタケは、生のものに比べビタミンDを多く含んでいます。乾物はぜひ「天日干し」を選びましょう。

普段、日光を避ける生活をしている方や、今回ご紹介したビタミンDを多く含む魚などを摂取する習慣のない方は、すでにビタミンD不足、欠乏の双方の恐れがあります。そんな方には、できるだけ日光に当たる機会を増やし、食生活の改善や必要に応じてサプリメントで補うなど、ビタミンDの摂取量を増やすことをおすすめします。

とくに冬季は皮膚でのビタミンD生成が難しい分、食事の選び方を意識したいですが、食事で摂りきれない場合には、日常的にサプリメントを取り入れるなど少し栄養を意識した生活を送り、ウイルスに負けない健康体を手に入れたいですね。

SDGsの目標3には「すべての人に健康と福祉を」がありますが、1人1人のこうした心掛けの積み重ねが健康な毎日を作ります。小さなことと見過ごさず、ぜひ今日から少しずつ意識してみてくださいね。

(監修者)
大阪公立大学大学院生活科学研究科教授
桒原 晶子(くわばらあきこ)先生
管理栄養士 


経歴/京都女子大学家政学部食物栄養学科卒業
京都女子大学大学院家政学研究科
生活環境学専攻博士後期課程修了
大阪樟蔭女子大学、旧大阪府立大学などで教鞭をとり、現在に至る主な研究テーマは脂溶性ビタミン。日本人におけるビタミンの臨床研究データの必要性を感じ、ヒトを対象とした脂溶性ビタミンと疾患、疾患予防のための適正量を探るべく研究に邁進する。現在は、次世代の健康にビタミンDが関係することに着目して若年女性のビタミンD欠乏の原因を探る研究を進めている。2009年日本骨粗鬆症学会研究奨励賞、2017年日本栄養・食糧学会奨励賞、2022年日本ビタミン学会奨励賞、日本栄養改善学会奨励賞受賞。


執筆/フリーライター Yuki Katagiri