和牛農家のためのヘルパー事業・「おいしさ日本一 宮崎牛」の生産を支える、畜産業の未来を見据えた取り組み
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WAGYUとして世界的にも年々注目を浴びている日本の和牛。日本全国さまざまな美味しい黒毛和牛ブランドはありますが、世界でも特に注目されているのが「宮崎牛」です。米ロサンゼルス・ハリウッドで2024年3月10日(日本時間11日)に開かれた米映画の祭典、第96回アカデミー賞にて、日本映画がダブルで受賞を獲得したのは記憶に新しいニュースですが、授賞式後のアフターパーティにおいても「宮崎牛」が提供されています。特定産地の和牛として2018年に初めて採用されて以降、6年連続で提供されており、今年も数々の受賞者から美味しさに対して賞賛を受けていることでしょう。
そんな、世界に誇る和牛ですが、畜産農家の数は減っているにも関わらず、1戸当たりの飼養頭数は年々上昇しているという課題があることが分かりました。それはどういうことでしょうか。
畜産農家数が年々減少傾向にあるにもかかわらず、農家1戸当たりの飼養頭数は年々増加
農林水産省が公表している全国の肉用牛の飼養戸数の推移をみると、前年(R4)に比べ、畜産農家は全ての地域で減少していることがわかります。一方、飼養頭数は、前年(R4)に比べ全ての地域で増加しています。
農林水産省 畜産統計(令和5年2月1日現在)
飼養戸数減少の背景としては、畜産農家の高齢化に加え、新規参入するには土地や牛舎、農業機械の購入など数千万円規模の初期投資や牛に関する知識が必要なため、経済力に加え経験や知識などがないと新規参入は厳しいという現実があります。また、育てるのは生き物であるため、決まった休暇を取ることが難しいという側面もあります。全国各地でこのような問題が発生しており、和牛の飼養頭数が全国3位を誇る宮崎県内も例外ではありません。
宮崎県発のユニークな取り組み 農家のための「和牛定休型ヘルパー」
既存の農家だけでなく、新規就農を目指す人を支援する事業が、宮崎県ではじまっていました。「和牛定休型ヘルパー」を派遣する会社「Moo Company」です。
「Moo Company」では、新規就農を希望する人材を働き手が不足している畜産農家に派遣し業務委託をすることで、受け入れ先の畜産農家には定休が生まれ、同時に、新規就農者や新規就農を目指す方はヘルパー員として働くことで畜産の知識と経験が培われ、将来的な独立も後押しできる新しい取り組みです。
会社を立ち上げたのは、畜産農家の両親を持ち自身も和牛農家(親元)で11年間働いた経験のある、飯盛将太さんです。
代表の飯盛さんと、新規就農希望の研修生である中原もえみさんに、お話をお聞きしました。
和牛畜産業界全体を盛り上げていきたい
今回、お話を聞いた中原さんは、宮崎県都城市にある繁殖農家「飯盛農場」で研修生として勉強しています。中原さんは、父親が経営していた畜産農家を配偶者と共に継ぐことを決め、研修しながら就農のための経験や知識を得ています。
中原さんは、「毎日が分からないことだらけです。だから毎日疑問に思ったことを聞いて、それをすぐに実践します。上手くいかなかったらまた聞いて、教えて頂いたことを素直に実践することで、段々と牛との距離も縮まってきていると思います。私のような農業系の大学も出ていない、素人を受け入れて下さった飯盛農場の皆さんには本当に感謝をしていますし、その分頑張ろうと日々奮闘しています!」と明るい笑顔でお話し下さいました。
代表の飯盛将太さんは、「今後も地域の農家さんに幅広く利用してもらえるように実績を積み上げ、牛飼いのサポートを担う会社として発展させていくと同時に、後継者のいない農家さんに継承を視野に入れた社員の新規就農モデルを確立し、畜産業全体を盛り上げて行きたい。」と畜産業の未来を見据えて語りました。
宮崎牛は、5年に1度開催され「和牛のオリンピック」と呼ばれる全国和牛能力共進会で、 史上初の4大会連続の「内閣総理大臣賞」を受賞した、名実ともに日本一の和牛。この賞は、種牛の部、肉牛の部の優等賞首席の中から、各部の1点に与えられる最高位の名誉賞で、4大会連続は史上初の快挙となります。
宮崎県公式チャンネル(YouTube)では、宮崎牛の生産現場から食肉処理を経て、流通に至るまでを1本の動画で紹介しています。美味しそうですね。
「おいしさ日本一宮崎牛」動画はこちら
名実ともに「おいしさ日本一」を誇る宮崎牛は、その美味しさから世界でも注目を浴びており年々、海外輸出量も増えています。そんな日本を代表する「黒毛和牛」を支える畜産農家に寄り添う「和牛定休型ヘルパー」の取り組みは今後も注目です。