食品ロス削減を目的に生まれた日本初の無人販売機『fuubo』。取り組みの裏にある“思い”とは
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パーソナリティの新内眞衣さんとともにSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。1月28日の放送では、食品ロス削減につながる「fuubo」を取り上げた。同サービスを展開するZERO株式会社の冨塚由希乃さんをゲストに招き、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に関わる食品ロスの問題を深掘り。取り組みをスタートさせた舞台裏や、そこに込められた思いに迫った。
駅やショッピングモールでは最近、無人販売機やさまざまなサービスを提供するBOXを目にする機会が多くなった。ただ、今回の放送で取り上げた「fuubo」は、これまでのそうしたサービスとは一線を画すもの。日本初の非対面・非接触対応の食品ロス、およびCO2削減を目的とした無人販売機として、鉄道、オフィス、ホテル、ショッピングモール、官公庁など、さまざまな業界の支持を受け、話題を集め始めている。
新内 「今回は、食品ロスの問題について掘り下げていくべく、食品ロス削減を目指すサービス『fuubo』を展開しているZERO株式会社の冨塚さんをお招きしました。よろしくお願いします」
冨塚 「お願いいたします」
新内 「冨塚さんの会社、ZERO株式会社は、食品ロスの削減に注力している企業の一つで、無人販売機『fuubo』というサービスを展開されています。今日はその『fuubo』について、掘り下げてお話を伺っていきます。まずは、早速その『fuubo』というサービスが、どんなものかをお伝えいただきたいのですが・・・」
冨塚 「SDGsに取り組む企業の方に対して、フードロスと、CO2の削減を目的に、この無人販売機『fuubo』を提供しています。使い方としては、まずスマホなどからサイトで商品を購入していただいて、購入した後に、実際に『fuubo』の設置場所に行っていただいて商品を受け取るという流れになります」
世界の食料廃棄量は年間約13億トンで、生産される食料全体の実に約3分の1を占めている。うち日本の食品ロス量は2021年の数字で年間523万トン。毎日、大型トラック(10トン車)で約1433台分、1人当たりに換算すると毎日おにぎり1個分(114グラム)を食べずに捨てている計算になる。ここ数年は、食品ロスへの問題意識が高まり、少しずつ減少傾向にあるものの、まだまだ多くの食料が廃棄されている現状に変わりはない。さらに、食料が廃棄されれば焼却炉で燃やされ、CO2が発生する。そうしたことを背景に、おいしく食べられるのに行き場を失ってしまった商品を無人販売機を通して消費者の手に届けることで、この問題と向き合っているのが、ZERO株式会社であり、同社が展開するサービス『fuubo』だ。
冨塚 「『fuubo』の中に今あるものをサイトに反映させているので、その中からサイトで選んでいただいて、それを即時に取っていただくこともできますし、お仕事帰りに商品を買ってから、次の日に取りに行くこともできます」
新内 「BOXに入っている商品は、どこから仕入れているものなのでしょうか」
冨塚 「主にはメーカーさんです。あとは卸さんとか、小売さんとか、いろいろな食品を扱う企業さんから買い取って、商品を流通させている形ですね」
新内 「具体的にどういう商品があるのでしょう」
冨塚 「一番多いのは賞味期限が近い商品ですね。お菓子とかレトルト食品、カップ麺とか。あとは、栄養食品のプロテインバーですとか、結構多岐にわたる商品が入っています。あとは外国のお菓子とかも」
新内 「めちゃめちゃ、いいですね。もちろん賞味期限が切れていないもの・・・ということですよね」
冨塚 「はい。大体1カ月以内から、長いものだと1年とか期限があるものもあります。パッケージ変更があったとか、そうした理由で売れなくなったものなどですね」
新内 「あー、なるほど」
冨塚 「季節限定のパッケージのもの、例えば夏のものって冬に売れないじゃないですか」
新内 「確かに、コンビニとかでも見ますよね。季節の商品とかって、売れ残ってしまうと棚に置けないから、ちょっと安くなっていたり、レジ前にあったりします。別に全然期限は問題ないのに」
他に食品ロス問題で避けて通れないものとして、この賞味期限を巡る「3 分の 1 ルール」というものがある。食品の流通過程において製造者、 販売者、消費者の 3 者が製造日から賞味期限までの期間を均等に分け合うという考え方に基づく商慣習で、納品期限までに納入できなかった商品や、販売期限までに小売りが消費者に販売できなかった商品は返品されることになっている。例えば、製造日から3カ月先に賞味期限が設定された食品の場合、最初の1カ月以内に卸は小売店に納品できなければ、賞味期限が残り2カ月近くあっても返品となり、多くは廃棄されることになる。商品の鮮度や消費者の安全性を担保するものであると同時に、食品ロスを多く生む一つの要因にもなっている。
新内 「1個の『fuubo』には何個ぐらいの商品が入るんですか」
冨塚 「商品の大きさにもよりますが、大体150個から200個程度です」
新内 「結構入るんですね。価格とかは、仕入れ値から計算しているということですか」
冨塚 「そうですね。例えば、企業の中に設置する福利厚生としての利用だと、0円で販売するっていうこともしています。消費者にとって、お得に買えるメリットがあります」
新内 「それで利益はどうやって・・・」
冨塚 「そこは利用料という形で、企業の方からいただいているので。その代わりに企業としては福利厚生だったり、食品ロスとかCO2に取り組んでいるというPRをできるというメリットがあったりと、本当にいろいろな使い方をされています」
新内 「なるほど。でも、『fuubo』は企業のみが対象の取り組みではないんですよね」
冨塚 「そうですね。例えば、自治体さんとか、大学とかにも、設置しているので、企業に限らず皆様にご利用いただいています」
『fuubo』は北海道から沖縄まで全国に設置されており、例えば東京だとセレオ八王子、nonowa武蔵小金井などJRの駅に隣接するモールや新宿郵便局などの公共施設で利用可能。簡単な事前登録さえすれば、誰もがそのサービスの恩恵にあずかれる。
新内 「私は多分、最初にインスタかなにかで見て知ったのですが、まずはスマホで商品を購入して、(送られてきたQRコードをかざすと)ドアが開くというシステムですね」
冨塚 「そうですね」
新内 「今のところ、一番利用が多いのはどこなのでしょう」
冨塚 「月によってバラバラなのですが、東京だと、西国分寺の駅とかですね。駅の改札の中にあるので、すごく利用が多いですね」
新内 「確かに通勤通学の時とかに便利そうですね。駅にあったら、そりゃ利用するってなりますよね」
冨塚 「(笑)はい」
新内 「サイトで購入すると、すぐに反映されるんですか」
冨塚 「そうですね。ドアの前で買われる方もいますし、通勤途中とかに買われる方もいます」
新内 「便利ぃ!」
そんな新しい価値観で生まれた『fuubo』だが、「そのサービスを、そもそも始めようと思ったきっかけはあるんですか」と新内さん。すると冨塚さんは、その裏に運営会社の共同代表を務める沖杉大地氏の大学時代の経験があったことを明かした。
冨塚 「沖杉は学生時代にバックパッカーとして世界一周をしていたんです。各地を回る中で、アフリカの貧困地域に行くと、たくさんの子供たちに『ギブミーマネー』と何回も何回も言われたっていうことがあった。そのときに、お金はなかったものの、たまたま(荷物に)入っていたビスケットを渡したところ、一番の笑顔を見て、本当に子供たちが欲しいものってお金じゃなくって食べ物なんだなっていうのを感じたらしいんです。その後に帰国すると、日本では食品ロスの問題が起こっていた。その格差に疑問を感じ、サービスを始めたという経緯があります」
新内 「なるほど」
冨塚 「本来であれば、食べ物をそのまま途上国に送ろうという考えもあると思うのですが、なかなか難しいところがあったんです」
新内 「そうなんですね」
冨塚 「やっぱり、腐ってしまうというのもあるので。そこで、どうしたかといいますと、日本で出る食品ロスとなる商品をいったん日本の中で流通させて、そこで得た収益を貧困地域に還元できれば、と考えた」
新内 「それで、日本で『fuubo』を始めた」
冨塚 「はい」
新内 「でも、最初からうまくいくものなのでしょうか」
冨塚 「いや、そんなことはないですね」
新内 「そうですよね。このサービスは何年前くらいから始められたのでしょうか」
冨塚 「2021年からあるんですけれども、当時はこうした取り組みをしている会社さんもなく、日本初のサービスっていうところで、本当に一から始めて分からないことだらけでした」
新内 「知られるようになったな・・・みたいに思えたのは、ここ何年くらいですか」
冨塚 「テレビやラジオでも、SDGs、食品ロスっていう言葉がすごく聞かれるようになってから浸透してきたかなっていうのはあります。それまでは、メーカーさんとしても、すごく食品ロスを出しているっていう印象がついてしまうこともあって、なかなか言い出しにくいような雰囲気があったかと思います」
新内 「そうですよね」
冨塚 「それが、今は逆にフードロスをなくしているという形で、ブランディングにつながるようになったように思います」
新内 「確かに『fuubo』さんとお話ししていると、『この商品は、これぐらい売れるんだ』とか、客観視できますよね」
冨塚 「あっ、そうなんです。普通の自動販売機と違うところとして、スマホからサイトで買うことができるので、どういう方が、どこで、どんな商品を買ったのかっていうのが、全部分かるというのがあります。データが取れるので、メーカーさんだったりとか、設置していただいている場所の方々だったりにも、そういったデータをお送りできる。活用の仕方はいろいろあるかなと思っています」
新内 「確かに、このお菓子、意外とご年配の方に人気・・・みたいなこととか」
冨塚 「あっ、はい。そうですね」
新内 「再発見がある!」
冨塚 「(再発見に)繋がりますね」
新内 「でも、『fuubo』さん的には食品ロスをなくすっていうのが目標じゃないですか。食品ロスがなくなると、だんだん商品もなくなっていくかもしれないってことですよね、本当にうまくいけば」
冨塚 「でも、それで本当にフードロスをなくせれば、それは本望なので。その先で、先程の貧困をなくしたい、ゼロにしたいっていうところに繋がれば、本当にいいかなと思っています」
新内 「ところで、『fuubo』の中でも、あまり売れないな、みたいな商品ももちろんあるとは思うんですけど・・・」
冨塚 「はい。なかなか売れないときは、もうほんとに価格を徐々に下げていって、賞味期限近づくにつれて最大9割引とかにして売ることもします」
新内 「めちゃめちゃ画期的なサービスです」
冨塚 「ありがとうございます」
新内 「さらに、将来的なビジョン、今後どうしていきたいみたいなのとかはあるのでしょうか」
冨塚 「そうですね。たくさんあります。『fuubo』自体のBOXをどうしていくっていうことと、あとはその中の商品っていうものをいろいろと変えていきたいんです。まずBOXでいうと、顔認証で開けることができる技術も開発している途中です」
新内 「すごい!」
冨塚 「今までは、メールに届いたURLから受け取るっていう形だったんですけど、BOXの前に行ったら読み取ってくれて本人だと認識して開いたりとか、サイネージを『fuubo』につけて企業の広告を流したりとか」
新内 「なるほどー」
冨塚 「今は冷蔵のBOXだけなんですけど、冷凍の食品ロスっていうのもかなりあるので、冷凍タイプのBOXも今後開発していこうと思っています」
新内 「冷凍の食品ロス?! 冷凍ってしちゃえば、何かほぼ永久だと思っていました」
冨塚 「私も、そう思っていたんですけど、キャパシティの問題で、かなりのロスがあるらしいんです。そこにも取り組んでいけたらいいなと思っています。冷凍のBOXがあれば、今まで扱えていなかったお弁当とか、お惣菜とかを流通できるかなとも思います」
新内 「めちゃめちゃ良くないですか」
冨塚 「はい」
新内 「今月ちょっとピンチかも、みたいな時とかにお弁当とかあったら大人気になっちゃうかもしれないですね」
冨塚 「今、ちょうど物価高騰ということもあるので、食品がすごく値上がりしている中で、ユーザーさんからはすごく良いっていうお声をいただいています」
新内 「登録も、すごく簡単なんですよね」
冨塚 「お名前とかメールアドレスとかを入れていただければすぐできるので、いったん登録してしまえば、本当に簡単にできます」
新内 「これを聞いている方でも、見たことがある人、絶対にいると思うんですよ。ただ、BOXがあるのは知っているけど、そのまま素通りしちゃうみたいなことが結構あるのかなと」
冨塚 「そうですよね。なんだろうっていう」
新内 「そうそう。最近、何か置いてあるけど、これ何なのみたいなのことを考えている人も多分いらっしゃると思うので、ぜひ体験してみてほしいですね」
冨塚 「ええ、ぜひぜひお願いしたいです」
そして、最後に番組恒例の質問。新内さんは富塚さんに「今私たちができること=未来への提言」を聞いた。
冨塚 「まずは食に対しての意識を変える必要があるかなと思うので、食に感謝することが、すごく大事かなと思っています」
新内 「めちゃめちゃ大事なことです」
冨塚 「私がフードロスの事業に関わった理由でもあるんですけれども、食品っていうのは命から来ているわけなので、その命を大切にいただくとか、残さないとか、そういった気持ちを忘れないでいてほしいなというふうに思います」
新内 「ありがとうございます。確かに、こういう番組をしたりとか、こういうサービスを目の当たりにしたりするたびに食品ロスって、すごくもどかしいなって思うことがたくさんあるんですけども、本当に食に感謝しながら私も生きようと思います」
冨塚 「ありがとうございます」
新内 「ありがとうございました!」
『fuubo』のサービス、その裏側にある思いに迫った今回の放送。新内さんは「担当の方ともお話しさせていただいたんですけど、ニッポン放送の6階とかに来ないですかね。皆さんもぜひ、お近くに『fuubo』がある方は利用してみて欲しいなと思います」と、SDGsにも強い関わりのある取り組みに興味を深めた様子だった。