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服を売らない異色のアパレルブランド energy closetとは新内眞衣さんも「SDGsの第一歩に」と共感した洋服の循環を生み出す取り組み

服を売らない異色のアパレルブランド energy closetとは新内眞衣さんも「SDGsの第一歩に」と共感した洋服の循環を生み出す取り組み

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パーソナリティの新内眞衣さんとともにSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送の『SDGs MAGAZINE』。3月17日の放送では、衣類のエクスチェンジサービス「CLOSETtoCLOSET(クロクロ)」を展開するenergy closetの代表、三和沙友里さんを招き、「ファッションとSDGs」をテーマにサステナブルファッションに関する話を聞いた。

energy closetは洋服の循環をつくり表現していく「服を売らないアパレルブランド」がコンセプト。「クローゼットをお気に入りの服で満たす」「着なくなった服は引き継いでいく」という、まさにファッションとSDGsをつなげる取り組みを行い、注目を集めている。今回は、その代表を務める三和沙友里さんをゲストに招き、「ファッションとSDGs」について考えた。

新内 「よろしくお願いします」

三和 「よろしくお願いします」

新内 「若いんですよね。若いのにすごいことをされている方で」

三和 「いやいや(笑)」

新内 「今日は(年齢が)5個も下なんですけど、同世代だと思ってお話しいただければと思っています」

三和 「ありがとうございます」

新内 「ちょっと厚かましいですか、私(笑)」


【三和沙友里さんプロフィール】
1996年生まれ、千葉県出身。学生時代からウエディング、カフェ事業に参画し、フラワーやフード・食品のロス問題に取り組む。2019年にエシカルファッションを軸にした「服を売らないアパレルブランド」energy closetを設立し代表を務める。設立4年目にして大手百貨店や商業施設と手を組んで全国キャラバンを行い、2トン以上の着られずに眠っていた古着を循環させる取り組みなどを進める。現在は千葉・市原市南部の古民家と東京都内の2拠点生活をしながら、さらなる“循環”を目指して活動中。

不要な服と古着を“物々交換”

新内 「そんな三和さんですが、もともとフードロスや食品ロス、フラワーロスに興味があったんですか」

三和 「そうですね。物が大切にされていない現状や、物が町の中で巡っていく仕組みには、ずっと興味がありました。お花でも食べ物でもお洋服でも、うまくまわっていないとちょっと気になる、みたいなところから、学生時代はいろいろなことに興味を持っていました」

新内 「すごいですね。興味を持っても、行動するきっかけみたいなのがなかったり、どう行動していいか分からなかったりみたいな時、あるじゃないですか」

三和 「はい」

新内 「でも、学生時代からやられていたんですよね」

三和 「そうですね。 調べてSNSの情報を見たりとか、友達に同じような興味を持っている人とかがいたので一緒に会いに行ってみたりとか、イベントに行ったりみたいなことができる環境にありました。環境に助けられたな、とも思っています」

新内 「そうなんですね。そんな三和さんが代表を務めるのが『energy closet』です。それが“服を売らないアパレルブランド”ということでとても注目されており、私も気になっていたのですが、改めてどのようなお店なのでしょうか」

三和 「『energy closet』として今、一番人気と言っていただいているのが、『CLOSETtoCLOSET(クロクロ)』っていうお店です。着なくなったお洋服を3着持参していただくと、うちの店にあるお洋服が3つ持って帰れるっていう、ちょっと物々交換に近いような感覚のお店をやっています)

東京・渋谷エリアを中心に「服の循環」をテーマにした期間限定ショップを展開。これが「CLOSETtoCLOSET」で、事前に入場チケットを購入し、当日不要となった服を3着持ち込むと会場に並んでいる古着から好きな3着を持ち帰ることができる、服のスリフティング(物々交換)が楽しめるショップとなっている。

新内 「これは、どんな服でもいいんですか」

三和 「はい。大人用のものであれば、どんな服でも大丈夫です」

新内 「小物とかじゃなくて、お洋服」

三和 「ファッション小物は靴以外OKなので、鞄とかネクタイ、スカーフ、帽子とかも大丈夫です」

新内 「(それ)も、1点?」

三和 「はい。1点カウントでお持ち帰りいただけます」

新内 「えっ!! すごいですね」

三和 「毎月第1日曜日は必ず渋谷区で開催していて、あとはポップアップ形式なので、その都度いろいろな地域でやってもいます」

新内 「これは、行きたい人、多いんじゃないですか」

三和 「そうだとうれしいんですけど」

新内 「これは男女とかも関係なくってことですか」

三和 「関係なくって感じです」

新内 「すごい。『ちょっと丈感が』みたいな時とかってあるじゃないですか。そういうのを売る手間とかを考えると、持っていく場所があるのはめちゃめちゃいいですよね」

三和 「そうですね。『売るのはちょっと』みたいに持ち込んでくださる方が多いです。何か面倒臭い、ハードルを感じる、みたいな方だったりとか、思い出があるから値段をつけられるのが嫌だったりとか」

新内 「あ〜」

三和 「例えば、お母さんから譲ってもらって自分は着ないけど、でも大切にしたいとか、そういうお洋服を持ち込んでくださる方が多い印象です」

新内 「そうなんですね。えっ、利益は…」

三和 「入場料として事前予約チケットを3000円(税別)で販売しています。3000円と3着を持ってきていただくと、古着が3つ持って帰れます」

新内 「すごいですね。もう、ある意味持ってきた人の巡り合わせじゃないですけど、その時の一点ものしかないってことですもんね」

三和 「そうです」

新内 「『他にサイズ、ありますか』とかではなく、お気に入りの3点を持って帰れるってことですね」

三和 「はい、そうなんです。なので、私たちもどんなお店になるか分からない状態で、いい意味でドキドキしながらやっています」

新内 「そうですよね。3着持っていったけど、何かしっくりくるものがないな、みたいな人とかはあんまりいないんですか」

三和 「意外といらっしゃらなくて。もちろん、想像していた、こういうアイテムが欲しかったのにみたいなものが具体的にありすぎると、それが見つけられないっていうことはあるんですけど、この機会にこういう色に挑戦してみようかなといったような感じで、3着お持ち帰りいただく方がほとんどかなと思います」

新たなファッションとの出会いの場に

いわば、買う以外の新たな服を手に入れる選択肢としての提案。普段は着ない服に挑戦する機会としても、多くの人に受け入れられているという。

新内 「結構、リピーターの方もいらっしゃるんですか」

三和 「いらっしゃいますね。毎月、絶対来てくださるお客様もいらっしゃいますし、1シーズンに1回とか、年に1回みたいに、自分のクローゼットを整理するタイミングで来られる方もいらっしゃいます」

新内 「それ、いいですね! 確かに衣替えのタイミングとかで、着られなくなったみたいなものって絶対出てくるじゃないですか。3着以上を持参するのは駄目なんですか」

三和 「3着以上であれば大丈夫です。たまに、スーツケースに詰めてこられる方もいます」

新内 「(笑)」

三和 「『引っ越すから、もう全部いらなくて』みたいな方とか」

新内 「そっか〜」

三和 「あとは髪色を変えたから、全部似合わなくなっちゃったとか」

新内 「あっ、系統変わっちゃったみたいな(笑)」

三和 「そうです。もう、すごく大きい袋を持っていらっしゃる方も(笑)」

アップサイクルの仕組みも導入

さらに、energy closetでは「upHAND(アップハンド)」という事業も展開。「CLOSETtoCLOSET」で集まった洋服をアップサイクルして販売する仕組みが構築されている。

三和 「『CLOSETtoCLOSET』では皆さまの大切なお洋服をお預かりしているんですけど、どうしてもそのままの状態で着られないお洋服だったりとか、サイズバランス的に着てくれる方が見つからないお洋服っていうのがあるので、それをハンドメイドでリメイクだったりとか、アップサイクルだったりをして、新しい商品をつくって売るお店が『upHAND』です」

新内 「汚れとかは別でしょうけど、本当にどんな状態のお洋服、形が古いお洋服とかでも…」

三和 「もちろん大丈夫です。一部、多少の汚れとかがあっても、思い出が詰まっていて、捨てたくないし、売れないし、あげられないし、みたいなものとかは私たちの出番だと思っているので、預けていただけるとうれしいです」

新内 「そこから新しい商品というか、いろいろなものを組み合わせたりして商品をつくっている」

三和 「そうです。そのままリユースでお客さまに引き継ぐか、つくり直すか、私たちの方で判断はさせていただいているので、お客さまは何も考えずに、手放したいお洋服を持ってきてくださってほしいなと思っています」

新内 「すごい事業をされています」

三和 「(笑)」

新内 「このビジネススタイルに行き着いた理由、きっかけみたいなのは、あるんですか」

三和 「きっかけは、私自身が大学に入って自分のお金でお洋服を買えるようになり、自分のファッションを探していた時に、一番好きだったのが古着の中でも結構くたくた、ボロボロ系の古着だったんですね。でも、東京に来て、そういう服を探そうって思った時に、全然見つけられなかったんです。その時の古着屋さんって、ブランド物や海外輸入品を扱うところが多かった。みんなが服を着古しているはずなのに、なんでぼろぼろの古着って見つけられないんだろうみたいなところから、着られなくなった服がどうなっているんだろうっていうのを調べるようになって、アパレル業界の大量廃棄問題もそうだし、古着が上手に活用されていない、みんながクローゼットに服を溜め続けている現象に気づいたんです。それなら、何か私がみんなのクローゼットづくりに役に立つお店がつくれるんじゃないかなと思い、考え始めたっていうのがきっかけになります」

新内 「最初の事業は」

三和 「『CLOSETtoCLOSET』です」

新内 「3着持っていって、3着もらえるっていう」

三和 「そうです」

新内 「3着っていうのは、最初から決まっていたんですか」

三和 「それも、いろんなことを考えた結果、3000円で3着なら覚えやすいし、ちょっとお金のない学生さんでも頑張って払えるし、と」

新内 「確かに」

三和 「服好きのお金をかけたい層も期待できるお店だし、分かりやすいしみたいなので、いろいろと考えて、やっぱり3000円、3着がいいなってなりました」

SDGsの取り組みとしても高い評価

2023年、energy closetは「いちはらSDGsアワード2023」で奨励賞に輝いた。「いちはらSDGsアワード2023」は、アトリエがある千葉・市原市の市制施行60周年記念事業の一つとして創設された、市原市SDGs宣言企業・団体によるSDGs達成に向けた先進的な取組を表彰する千葉県内初の表彰制度で、衣類の循環をつくり表現するブランドづくりが評価されての受賞となった。

新内 「まだまだ『SDGs』にはいろいろと課題とかがあると思うんですけども、ファッション業界について、何か課題として感じることはありますか」

三和 「『SDGs』というと、例えばフードロスとか、ゴミの問題、労働環境の問題とかジェンダーの問題のような、みんなが考えやすい身近な社会問題みたいなところばかりフォーカスされがちだなとは思うんです。でも、アパレルとかファッションの業界は、消費者がとれるアクションがすごく少ないように感じます。企業さんだったり、事業者さんだったりができることはあると思うんですけど」

新内 「はい」

三和 「市民のみんながとれるアクションがすごく少ないことで、みんなが関心を持ちにくかったりとか、関心を持ったとしても何もできなくて、ちょっともどかしいから距離を置きがちになったり。そんな問題になってしまっているなっていうのは感じます」

新内 「うーん」

三和 「でも、私も起業した時は『SDGs』って言葉は知らなかったですし、あったかもしれないんですけど国内ではあんまり流行っていなかった。その中で、誰でも参加できるものが良いと、もともと考えていたので、形になって評価してもらえるようになり、うれしく思っています」

そして、新内さんは最後に番組恒例の質問、「今、私たちができること=未来への提言」を三和さんに聞いた。

三和 「私はお洋服が好きで、大切にしたくて、こういうお仕事をしているんですけど、お洋服もそうだし、他のどんな物でも、つくっている人が絶対に世界のどこかにいて、それを忘れないで物を買ったりとか選んだりとかをしてくれるみんながたくさんいる世界になったらいいなと思っています。ちょっと考えてみるとか、ちょっと背景に興味を持ってみるみたいな機会が増えたらいいなって思っています」

新内 「確かに背景を考えるって大事なことかもしれないですね。改めてありがとうございました。ぜひ、聴いている方でお近くに『CLOSETtoCLOSET』が来た際には、一回参加してみてください」

三和 「はい。ぜひ、会いに来てくださればと思います」

新内 「今週のゲスト『energy closet』の三和沙友里さんでした。ありがとうございました!」

三和 「ありがとうございます」

新内さんは「お洋服って、手放すときにいろいろな選択肢があるっていうのは知っているんですけども、なかなかそこにちょっと面倒臭さが入っちゃったりとか、後ろめたさが入っちゃったりして、アクションを起こしにくいなって思うんです。でも、それを“捨てる”ではなく、3着持っていって3着と交換するっていう循環があると新しく知ったので、今回はもう『やろう!』って思いましたね。自分とはあまり接点のないお洋服と出会えることもあると思いますし、『SDGs』に参加する第一歩として、ぜひお勧めしたいような取り組みでした」と、特に強い関心を抱いてきた「ファッションとSDGs」に新たな可能性を見出し、大きな感銘を受けた様子。

また、SDGsに関する多くの知識や企業などの取り組みを学んだこれまでを振り返り、「この2年間を通していろいろお伝えできたとは思うんですけども、一つアクションしてみるとしたら一番絶好の機会だと思います!」と、よりSDGsを身近なものとして考える大きなきっかけになるものとして、今回の放送で取り上げた“服の循環”への共感をリスナーに期待した。

energy closet 公式サイト
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