化粧品用スポンジで地球を変える世界のトップシェア企業、雪ヶ谷化学工業が取り組むSDGs活動に迫る
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パーソナリティの新内眞衣さんとともにSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送の『SDGs MAGAZINE』。4月7日の放送では、第7回「ジャパンSDGsアワード」でSDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞した雪ヶ谷化学工業株式会社に注目した。同社のSDGs プロジェクトリーダーを務める野村みのりさんをゲストに招き、民間企業で初めて内閣官房長官賞を受賞した、その取り組みに迫った。
「ジャパンSDGsアワード」は、SDGs達成に資する優れた取り組みを行っている企業・団体を、全国務大臣を構成員とするSDGs推進本部が表彰するもの。NGO・NPO、有識者、民間セクター、国際機関などの広範な関係者が集まるSDGs円卓会議構成員からなる選考委員の意見を踏まえ決定される。そして、内閣官房長官賞の受賞は雪ヶ谷化学工業株式会社が民間企業で初めての快挙だった。
新内 「今週も『SDGsとビジネス』をテーマに、とっても“SDGsな企業”をご紹介します。化粧用スポンジで世界シェアの7割を誇る雪ヶ谷化学工業という会社なのですが、昨年12月に行われた第7回『ジャパン SDGs アワード』で、SDGs 推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞しました。どういった取り組みをしているのか、雪ヶ谷化学工業株式会社SDGs プロジェクトリーダーの野村みのりさんに聞いていきます。よろしくお願 いします」
野村 「よろしくお願いします」
新内 「お若いですよね」
野村 「新内さんと同い年なんです」
新内 「同い年!? 見えなーい!」
野村 「(笑)1992年生まれです」
新内 「じゃあ、この会社に入ってから長い感じですか?」
野村 「はい、そうですね。入社8年目になります」
新内 「今日は、そんな野村さんが働く雪ヶ谷化学工業株式会社について、いろいろうかがっていければと思います」
野村 「はい、よろしくお願いします」
化粧品用スポンジの世界的トップ企業
【雪ヶ谷化学工業株式会社】
1951年に創業された特殊発泡体の専業メー カー。1960年代から化粧品用スポンジの生産をスタートさせ、1976年にはそれまで天然ゴムを使用していた化粧品用スポンジを合成ゴムに置き換えることに成功。その発想の転換により、世界のトップシェア企業として認知されるまでになった。化粧品用市場で培ってきたノウハウを別の分野に応用し、自動車部品、建材、音響機器などで同社の弾性素材が欠かせない材料として大きな役割を果たしており、現在は環境分野への挑戦にも取り組んでいる。本社は東京・品川区。坂本昇代表取締役社長。
新内 「そもそも、野村さんはなぜ雪ヶ谷化学工業株式会社に入社されたのでしょう」
野村 「化粧品がもともと好きだったんですけど、こういう化粧用のスポンジをつくっているメーカーがあるのを知り、入社しました」
新内 「本当に数ある化粧品系のメーカーさんとか、いろいろなところを見ていて、 その中の一つだったっていう感じなんですね」
野村 「そうですね」
新内 「会社はSDGsにも力を入れているとのことで、私もホームページを拝見しましたが、本当に本格的に取り組まれているんですね」
野村 「はい」
新内 「そんな中で、SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞された、と」
野村 「はい」
新内 「民間の企業では初めてなんですよね」
野村 「そうですね」
新内 「どういった取り組みが評価されたのでしょうか」
野村 「主な取り組みとしては2点ありまして、『サステナブルスポンジ』シリーズっていう新たなスポンジを開発したことと、『雪ヶ谷サステナブルチャレンジ2030』という2030年 までに向けた目標を掲げて、社内のプロジェクトチームで目標達成に向けて推進しているというところが評価され、受賞のきっかけになりました」
新内 「そのリーダーが野村さん」
野村 「そうですね。その『SDGsプロジェクトチーム』という社内で発足したチームのリーダーをやらせてもらっています」
新内 「SDGsの取り組みをされるようになったのは結構前からなんですか」
野村 「そうですね。2019年頃から活動していまして、社内で勉強会を重ねて、全社員の意識をSDGsにもっていったっていう形になります」
新内 「でも、結構SDGsをやるとなると、足並みが揃わず、何から始めていいんだろうみたいな会社さんもたくさんあると思うんです。何か大変だったこととかってありましたか」
野村 「やはり、2019年に活動を始めた頃は、まだSDGsっていう言葉も浸透していない時代だったので、そこから何かを始めるっていうのは難しいことではありました。ただ、社内でワークショップなどをしてSDGsの勉強を進め、やっぱり必要な取り組みなんだなっていうところが社員全体に浸透したようで、思っていたよりは楽しく、全社員の意識が同じ方を向けたなと思っています」
新内 「ちなみにリーダーは立候補制なんですか? 推薦制なんですか?」
野村 「(笑)一応上司から任命を」
新内 「『私、やります!』とかじゃなく」
野村 「そうですね」
新内 「『やってみないか?』みたいな感じだったんですね」
野村 「そうですね。もともと初代リーダーがおりまして、その初代リーダーが産休育休に入るにあたって、2代目をやらせていただいてという流れです」
「サステナブルスポンジ」シリーズとは
新内 「さきほど話に出てきた『サステナブルスポンジ』っていうのが気になったのですが、どのようなものなんですか」
野村 「スポンジは今、ほとんどのものが石油由来原材料100%の合成ゴムを原材料にしているのですが、そちらに植物由来原材料を少し混ぜるという技術を開発し、いわゆるCO2の排出量を減らした製品をつくることができました」
新内 「今、目の前にあるものは全部『サステナブルスポンジ』ですか」
野村 「あっ、そうですね」
新内 「見ていいですか?」
野村 「もちろんです!」
雪ヶ谷化学工業では「サステナブルスポンジ」シリーズとして、奴隷労働・児童労働がなく公正な取引をしていることを確認したフェアトレードの天然ゴムだけを使用したものや独自配合により石油由来原材料を10%-80%削減した製品などを展開。目標12「つくる責任 つかう責任」や目標13「気候変動に具体的な対策を」などSDGsに直結する技術を開発し、市場を変革している。
野村 「これは植物由来の原材料を10%配合したものです」
新内 「えっ、全然やわらかい!」
野村 「そうなんです。風合いも非常に良いものになっています」
新内 「全然、普段使っているスポンジと変わらないですね」
野村 「そうですね」
新内 「というか、むしろ気持ちいいくらい」
野村 「ありがとうございます」
新内 「こちらの製品の天然ゴム原料も、フェアトレードに則ったものなんですね」
野村 「そうです。タイから仕入れているんですけれども、実際私も2月にタイの農園のほうに行きまして、強制労働、児童労働していないですよっていうところを、この目で確認してきました。そうしたフェアトレード100%の原料を使って、メリッ トとして打ち出させていただいています」
新内 「他にも排水や下水の処理のフィルターとして使える…『Y-CUBE(ワイキューブ)』ですか?」
野村 「こちらは化粧用途ではなく、産業資材用途なんですけれども、そういった排水をきれいにするようなスポンジも取り扱っています」
SDGsへの意識を醸成できた理由
新内 「野村さんは、その中で『SDGsプロジェクト』のリーダーというポジションに就いているとのことですが、こちらはいつ頃からですか」
野村 「引き継いだのは2020年頃からですね」
新内 「もう4年目」
野村 「そんなになりますかね」
新内 「最初に言われた時、どうでしたか」
野村 「やっぱり私も最初の意識としては、業務が増えるんじゃないかっていうので…」
新内 「あ~」
野村 「通常の営業の活動とSDGsの活動の2つをやらないといけないんじゃないかということで、ちょっと不安はあったのですが、業務とSDGs活動に一貫して取り組めるっていうところが非常に自分としても良かったなと思っています」
新内 「そこからSDGsのことをいろいろ学んでいったんですか」
野村 「そうですね。本を自分で読んだり、エシカル協会のエシカル講座というのも受けさせていただいたりですとか、自分なりに勉強をしつつですね」
新内 「そんな中で、実際にどういったことに取り組んでいるのでしょう」
野村 「『SDGsプロジェクトチーム』を社内で発足して、『雪ヶ谷サステナブルチャレンジ2030』という2030年までに達成したい5つの目標を掲げ、それに向けて各チームで目標達成に向けた施策を組んで業務推進をしているという形です」
【雪ヶ谷サステナブルチャレンジ2030】
1.CO2の排出量を実質ゼロに
2.石油由来原材料を減らして、再生可能原材料の比率を50%に
3.調達から納入までの全工程の廃棄物を50%減らす
4.女性管理職の割合を50%に
5.日本で流通する天然ゴムを100%フェアトレードのものに
新内 「2030年までって、あと6年じゃないですか」
野村 「はい」
新内 「達成できそうですか?」
野村 「今、一応達成率っていうのも弊社のサイトに毎年、上げさせていただいておりまして、『再生可能原材料費を50%に』 のところなんかはもう42.8%の達成状況になっています」
新内 「わあ、すごい!」
野村 「ほかに半分以上達成しているものもあるので、2030 年までになんとかやりたいなと」
新内 「すごいですねぇ」
野村 「ありがとうございます」
新内 「高い目標な気がするんですよ」
野村 「そうですね」
新内 「なのに、ちゃんと達成していきそうな心意気を感じる。結構厳しく言ったりするんですか? 指導というか」
野村 「いえ。やっぱり個人の意見を尊重していきたいなというふうには思っています。なるべく出してもらったアイデアは、すぐに採用することを心がけていますね」
新内 「結構風通しがいいというか、意見が通りやすい会社なんですね」
野村 「そうですね。何かアイデアがあれば、すぐ電話してくださいというふうには言っています」
新内 「なんで、そこまで社員の皆さんの意識が高められたのでしょう。何か、きっかけみたいなものはあったんですか?」
野村 「やっぱり最初の4回にわたってワークショップで勉強会をしたんですけれども、そこの入りも良かったのかなと思いますね。SDGsをやる意味っていうのをちゃんと学んで、やっていったら中小企業にとっても、どんないいことがあるかっていうところを最初に実感できるような取り組みができた。そこが良かったんじゃないかなと思っています」
新内 「意識が高いと思うんですけども、何か統一の目標みたいなものがあったりするんですか?」
野村 「弊社内でアンケートをとったりして決めた行動指針があります。『未来を楽しく美しくするものづくり、人づくり』というのが1点と、『挑戦こそが最大のちから』ですとか、最後は『コミュニケーション! コミュニケーション! コミュニケーション!』っていう…」
新内 「(笑)コミュニケーションを3回!」
野村 「3回唱えるっていう」
新内 「大事ですよねぇ」
野村 「そうですね。これを見て分かる通り、ものづくりの会社ではあるんですけれども、未来を美しくするようなまさにSDGsを目標として、ものづくりをしていく。そこが、やっぱり一つの大きな会社としての目標になっているのかなとは思いますね」
新内 「本当にいろいろとやっているのに楽しそうなのが一番素敵ですよね」
野村 「ありがとうございます! そう言っていただけると」
新内 「何か分かんないですけど、とりあえずやってみようっていうところも多分たくさんあるし、最初はきっとそうだったと思うんです。でも、それが今4、5年経って、ちゃんと楽しそうにできているっていうのが、やっぱり素晴らしいなと思いました」
野村 「ありがとうございます」
そして最後に番組恒例の質問、「今私たちにできること」=「未来への提言」を野村さんに聞いた。
野村 「小さなものにも意識を向けてほしいと思っています。私たちがつくっているような小さな化粧品用パフって、普段は何の意識もなく使っている方が多いかなと思うんです。でも、こういった小さなものをつくっているメーカーが、こういったSDGs活動をしていて、SDGsな商品もつくっている。パフ一つで地球を変えることができるというところに、皆さんの意識を向けていただけたらうれしいなと思います」
新内 「確かに私も今日使ってきたんですけども、背景を考えるって大事ですね」
野村 「そうですね」
新内 「私にとっても、小さいものに目を向けるきっかけになりました。今週のゲストは雪ヶ谷化学工業株式会社の野村みのりさんでした。ありがとうございました」
野村 「ありがとうございました」
新内さんは、今回の放送を振り返り「本当に社員の皆さんの意識が一人一人高いっていうのがうかがえますし、当たり前にやるってなかなかできないことじゃないですか。その高い目標を着実に達成していこうっていう心意気がすごいなって思いました」と、雪ヶ谷化学工業の全社的な方向性に強い感銘を受けたことを明かした。さらに「達成率、これからも多分更新していくと思うので、また2030年の直前ぐらいに話を聞きた いですね」と、今後のさらなる進展にも大きな期待を寄せた。