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史上最も環境に配慮したオリンピック!パリ五輪のSDGsな取り組みとは


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14 海の豊かさを守ろう
史上最も環境に配慮したオリンピック!パリ五輪のSDGsな取り組みとは

史上初の“船上パレード”に注目が集まっていたパリオリンピックが開幕し、さまざまな競技で熱戦が繰り広げられています。日本勢も連日メダルラッシュが続いて盛り上がっていますね。深夜時間帯のテレビ観戦が続いてしまい、寝不足気味という人も多いのではないでしょうか。
今回のパリ五輪は、史上最もサステナブルな大会を目指していると言われています。今回は「Games wide open(広く開かれた大会)」をスローガンとするパリ五輪のさまざまな取り組みを見ていきましょう。

大会用の「新しい競技施設」の建設をなるべく抑えた大会

10,500人のアスリートが32競技329種目に出場しているパリ五輪は、使用する設備全体の95%を既存施設と仮設でまかなっている大会です。仮設会場には、パリの観光名所である「コンコルド広場」や「ベルサイユ宮殿」なども含まれます。

例えば、パリ中心部にある「グラン・パレ」は、1900年のパリ万国博覧会のために建設された建物ですが、ここはフェンシングやテコンドーの競技会場になっています。数年前から大規模な改修工事を行い、この大会をきっかけに老朽化が進んだ設備を再生させる計画です。パリオリンピックは、大会終了後も地域で利用できる施設のみを建設することで、気候や環境への影響をできる限り抑制しようとしています。

ジェンダー平等の大会、選手村には五輪史上初めての託児所!

ジェンダー平等を推進している本大会では、五輪史上初となる男女同数の出場枠が実現しています。1896年にギリシャで開催された第1回アテネ大会では、出場選手は男性のみでした。女性が初めて参加したのは1900年に開催された第2回のパリ大会で、参加した997人中、わずか22人。124年の時を経て、同じパリで男女同数が実現したことになります。
また今回、選手村に初めて託児所が設置されました。授乳スペースやおむつ替え施設、遊び場が設けられ、おむつ着用年齢の子供を持つアスリートの親が利用できるようになっています。

託児所設置に関して、アイスホッケー女子で五輪5大会出場経験のあるIOC選手委員会のエマ・テルホ委員長は次のように語っています。
「多くのアスリートがスポーツ選手としてのキャリアと家庭を両立させています。私は幼い子供を持つ母親として2014年冬季オリンピックに出場したので、その気持ちはよくわかります。妊娠と母親になることは人生の自然な道であり、女性アスリートにとってキャリアの終わりを意味するわけではありません。」

脱プラスチック!使い捨てペットボトルの持ち込み禁止

パリ五輪は、使い捨てプラスチック使用禁止の大会です。パリ市内の競技会場へのペットボトルの持ち込みは原則禁止されており、観客はマイボトル持参で会場内に設置された給水スポットを利用します。
メディア関係者や大会スタッフには、100%リサイクルされた素材で作られた赤い水筒が無償提供され、報道側からの給水スポット活用を呼びかける狙いもあるようです。

陸上競技のマラソンでは、給水所に再利用可能なコップが用意されるそうなので、テレビ観戦の際にチェックしてみてはいかがでしょうか。

選手の移動を最小限に!移動にはゼロエミッション車を使用

パリ五輪の競技施設の85%は、選手村から30分以内で移動可能な場所にあるといいます。
選手や大会関係者の移動に使われるバスなどの乗り物は、走行時に排出ガスを出さない電気自動車等のゼロエミッション車が使われています。

ワールドワイドパートナーのトヨタからは、2,650台以上の電動車が提供されました。なかでも、水素を燃料とし、CO2排出ゼロの移動を実現する燃料電池自動車『MIRAI』は500台用意されました。大会終了後はタクシーとして利用されることが決まっており、パリの持続的な社会の実現に貢献される予定です。

食事面からのSDGsアクションも

オリンピック・パラリンピック開催期間中に、観客や選手、関係者、メディア、ボランティアなどに提供する食事は1300万食以上といわれています。これは、サッカーワールドカップ10回分に匹敵する規模なのだそうです。

大会組織委員会は、“すべての人が環境や社会に対する責任を果たしながらも、美味しく食べることを目指す”という理念のもと「フード・ビジョン」という食の指針を発表しています。フード・ビジョンは、フランスの食品および農業部門の関係者120人によって策定されたものです。

1.使用する植物性食品(プラントベース)を2倍にして、二酸化炭素の排出量を2分の1に
2.フランス産の食品を80%使用し、そのうちの25%は会場から250km以内の産地から調達
3.使い捨てプラスチック製品の使用量を半減
4.食品廃棄を制限し、食べ残しを100%リサイクル
5.大会で使用された施設や設備を100%再利用
6.食事サービススタッフの最低10%は職業統合プログラムから雇用

ただ単に“美味しい”だけではなく、健康的で環境に配慮した食を提供する重要性をアピールしている今大会。さすが食の都パリ!といえるのではないでしょうか。選手村の食事が気になりますね。

前回の東京2020大会で注目された選手村の段ボールベッドは、耐久性と持続可能性に優れていると判断され、パリ五輪でも再び採用されました。さらに、パリ五輪の選手村にはエアコンを設置せず、その代わりに地下のパイプに水を通した床冷房を採用していることも話題となっています。

4年に一度、多くの人々が注目するスポーツの一大祭典、オリンピック。開催期間中、パリから発信されるメッセージは、大きな影響力をもって世界中の人々に届き、未来の大会のスタンダードになっていくような気がします。8月11日まで開催されるパリオリンピックに引き続き注目です!


執筆/フリーライター こだまゆき