• トップ
  • 記事一覧
  • 私たちの健康性を高める建物とは?「WELL Core」最高ランクの実態に迫る
SHOW CASE

私たちの健康性を高める建物とは?「WELL Core」最高ランクの実態に迫る


この記事に該当する目標
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 11 住み続けられるまちづくりを
私たちの健康性を高める建物とは?「WELL Core」最高ランクの実態に迫る

今回注目したいのは、森ビル株式会社が運営する3つの建物。「麻布台ヒルズ 森 JP タワー(以下、麻布台ヒルズ)」「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(以下、虎ノ門ヒルズ)」「JAKARTA MORI TOWER」です。それぞれ日本初、インドネシア初の快挙を成し遂げたのだとか。その快挙とは、「WELL Core」において、最高ランクとなるプラチナ本認証を取得したこと。ここでは「WELL Core」の解説とともに、街づくりについてSDGsの視点で考えていきましょう。

米国で定められた世界初の建物基準「WELL」

まず「WELL(WELL Building Standard)」というのは、米国のIWBI (International Well-building Institute)が開発した、世界初の建物基準のことを指しています。建物が人々の健康やウェルネスに与える影響に着目して生まれた認証制度なのだそう。建物の環境性能に加え、その中で過ごす人々の健康性や快適性を評価しています。ちなみに評価の対象となる部分は、全3種。「Building=建物全体」、「Interior=テナント内装」、冒頭でもご紹介した「Core」です。この「Core」は、オフィス及び商業区画の共用部を対象としており、たとえば、「麻布台ヒルズ」と「虎ノ門ヒルズ」では、「室内への清浄な空気の提供を目的とした高性能空調フィルター実装」などが高く評価されました。こちらは一例にはなりますが、そのほかにも評価ポイントは盛りだくさん。

なお、森ビルが運営する3つの建物が取得した「WELL v2 Pilot」版では、「空気(空気のきれいさ)」や、「水(水の安全性やおいしさ)」、「食物(健康的な食物の提供)」など10のコンセプト・200以上の項目から成っているとのこと。膨大な数字ですね。そして、それぞれの必須項目を達成した上で、加点項目の総合点に応じて、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナまでの4段階にランク付けされるのです。

それぞれの建物の評価ポイントとは?

ここからは3つの建物について、どのような点がプラチナ本認証を取得のポイントとなったのかを見ていきます。

「麻布台ヒルズ」は、全てのランクを含む「WELL」認証取得物件において、日本最大の登録面積を誇っている建物です。計画時点から「GREEN&WELLNESS」や「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」をコンセプトに据えており、利用者の健康や快適性に配慮してきました。
さて、ここで特に着目したいのは、中央広場の活用方法。ウェルネス関連のイベントを開催し運動の促進を進めたり、給水スポットを設置して誰もが水を気軽に飲むことができる環境を確保したり……。このように人々が集いやすい場を作り出すことは、SDGsの11個目の目標「住み続けられるまちづくりを」に深く関わっていると言えそうです。地域活動=ウェルネス関連のイベントに参加することで、心身の健康や、利用者との交流、また、施設への愛着が増して、地域の活性化にも繋がるのではないでしょうか。

DBOX for Mori Building Co., Ltd.

続いて「虎ノ門ヒルズ」は、「国際新都心・ グローバルビジネスセンター」を目指しています。グローバルプレイヤーが集まることで、多様なビジネスが展開し、新しいアイデアや価値が日々発信されるここでは、デッキ歩行による運動の促進など、ビル単体でなくエリア全体の回遊性をも考えられた設計が評価されました。また、駅と街の一体的な開発による駅前広場や地下歩行者通路にも力を入れており、自由で安全・快適な移動の手段が整えられています。こちらも先ほど同様に11個目の目標に関連しているポイントですね。

最後に取り上げる「JAKARTA MORI TOWER」は、ジャカルタ最高水準のスペックを備えた大規模オフィスタワー。ここでは、SDGs7つ目の目標「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に沿って、「空気」「光」に焦点を当ててみました。この地域の特徴と言えば、屋外のPM2.5の濃度が比較的高いこと。だからこそ、建設段階から汚染物質の室内混入を最小限に抑制していたのだとか。建設中からの十分な養生、竣工後は高性能空調フィルターの実装により、人体に有害な物質の建物内への侵入を防ぐことが可能に。また、昼光を十分に室内へと取り入れる設計により、節電にも繋がっているそうです。評価されたこれらの要素から、クリーンかつ効率的なエネルギーの循環が垣間見えます。

そのほかの認証の実績も豊富

DBOX for Mori Building Co., Ltd. – Azabudai Hills

今回は、「WELL Core」という認証基準を中心に深堀りしてみましたが、実はほかにもたくさんの指標において、高い評価を得ているこれら3つの建物。建築物の環境配慮に関する認証制度「LEED ND」をはじめ、資源循環型の都市づくり、さらには都市と自然の共生を証明するかのような実績がとても充実しているんです。
人が存在しなければ、街は空っぽな箱になる。持続可能な街づくりにおいて、人、街、自然それぞれを優しく結びつける場・建物が大切であることが、「WELL Core」などの認証基準を通して、改めてよく分かりました。効率的なエネルギー利用や、交通インフラ、地域交流……あらゆる要素を網羅した森ビルの建築物から、街づくりの基盤について学ぶことがたくさんありそうです。

アイキャッチ画像:DBOX for Mori Building Co., Ltd. – Azabudai Hills


執筆/フリーライター 黒川すい