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知ってほしい! 希少・難治性疾患のこと。―製薬会社による体験型の取り組み―

知ってほしい! 希少・難治性疾患のこと。―製薬会社による体験型の取り組み―

#SHOW CASE
  • すべての人に健康と福祉を

去る2月末日は、「世界希少・難治性疾患の日(Rare Disease Day:RDD)」でした。RDDとは、2008年にスウェーデンで始まり、より良い診断や治療によって、希少・難治性疾患患者のQOL(Quality of Life、生活の質)を向上することを目指すために定められたものです。
毎年、この日に向けて世界各地で取り組みがおこなわれていて、2024年の日本では全国75カ所で関連イベントが実施されました。

希少・難治性疾患は、患者数が少ないことや、病気のメカニズムが複雑なことなどから、治療・創薬の研究が進まない疾患を指します。例えば、筋肉が縮んでしまい、筋力が低下する脊髄性筋萎縮症(SMA)や、小腸などの消化管が炎症を起こし、激しい腹痛に見舞われるクローン病(IBD)などがあります。
希少・難治性疾患は、その希少性から一つ一つの病気はまだ広く知られていません。それによって、診断や治療が遅れたり、周りから誤解されて偏見を受けたりすることがあります。

このような課題を解消していくためにRDDでさまざまな活動が行われ、その中の一つに製薬会社である協和キリンと、RDD Japan(希少・難治性疾患の患者と家族を一般社会とつなげることを目標とした活動)の取り組みがありました。本記事では、製薬会社が取り組んだ事例をご紹介します。

体験型の企画を通じ、当事者についての理解を深める

2024年のRDDに合わせて、協和キリンが社内イベントとして実施したのは、「たべる」・「知る」・「見る」・「聞く」・「感じる」などをキーワードとした体験型の企画でした。国内の研究・製造拠点のうち、宇部工場(山口県)では、RDD Japan事務局と協力し、下記4つの施策が実施されました。

画像提供:協和キリン株式会社

1.RDD Japan事務局によるブース
事務局の局員3名に来場してもらい、ブースの出展を行いました。事務局の方と直接話したり、寄付グッズを購入する機会になりました。イベント終了後も、RDD Japanのロゴが刻まれた寄付グッズを使用されている方を多く見かけているそうです。

2.RDD Japan 事務局によるレクチャー
事務局の局員から30分程度、RDDや事務局について、また製薬工場に伝えたいことについてのレクチャーがありました。安全安心な医薬品を多くの方が待ち望んでいることを再認識する機会となりました。

3.RDD弁当の提供
希少・難治性疾患の中でも、患者数が多いクローン病(IBD)に関連したメニューを、お弁当会社の協力のもと提供しました。IBD患者さんの食事の基本である、①高カロリー、②低脂肪、③低残渣、④低刺激に配慮した2種類のお弁当です。RDDやIBDに関する小冊子をお弁当と一緒に配り、病気について理解を深める機会としたそうです。

4.RDDに関する掲示
協和キリンの宇部総務部で作成したRDDに関する掲示を食事スペースに展示しました。疾患啓発資材なども閲覧でき、訪れた従業員が患者さんとのつながりを感じるスペースとなりました。

画像提供:協和キリン株式会社
画像提供:協和キリン株式会社

今回のイベントを企画した担当者からは、「多くの方に参加いただき、『お弁当や展示ブース、小冊子などで病気や患者さんへの理解が深まった』といった声をいただきました。工場では、日々ルールに則って製造を行っており、プレッシャーや不安を感じる瞬間もあります。私たちが製造に携わった薬が、患者さんのもとに届いていることを実感できる機会にできるよう、今後も考えていきたいと思います」と当日を振り返るコメントをいただきました。

「ペイシェント・セントリシティ」という考え方

このような、病気そのものやその患者さんについて広く知ってもらう活動は各地で行われていますが、製薬会社で行われているということには大きな意味があります。

近年、医療・製薬・ヘルスケア業界では、「ペイシェント・セントリシティ」という言葉がキーワードとなっています。
ペイシェント・セントリシティとは、患者さんを取り巻く医療機関、規制当局、製薬会社が「患者を常に中心にとらえ、患者に焦点をあてた対応を行い、最終的に患者本人の判断を最大限に尊重すること」といわれています。(協和キリンより:https://www.kyowakirin.co.jp/stories/20220630-02/index.html

今回の協和キリンの取り組みは、まさしくペイシェント・セントリシティに沿ったものといえるでしょう。疾患を持っている患者さんを一人の生活者として認識し、病気そのものではなく、病気とともに生きる人を知ることは、製薬会社で働く人にとって必要なものだと考えられます。今後は、病気だけでなく患者さんにも焦点を当てた研究・開発が行われていくことになるでしょう。

社会を構成する私たちは、まだ知らない病気がたくさんあることや、些細に見える症状にも大きな困難があることを理解するということが必要です。国が指定する難病については、難病情報センターのHPや、各病気の患者団体、専門医の学会などのHPで紹介されています。
私たちの隣にいる人が、難病患者である可能性は十分にあるのです。まずは興味関心を持ち、上記のようなところから調べてみることが大切です。


アイキャッチ画像提供:協和キリン株式会社

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