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CO2を固定化するCPコンクリートで社会課題の解決を目指すCPコンクリートコンソーシアム――大阪・関西万博 未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオンにも展示


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9 産業と技術革新の基盤をつくろう
CO2を固定化するCPコンクリートで社会課題の解決を目指すCPコンクリートコンソーシアム――大阪・関西万博 未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオンにも展示

2025年4月から10月にかけてEXPO 2025 大阪・関西万博が開催されます。万博ではたくさんのイベントや催し、パビリオンでの展示などが行われますが、中でも未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」(以下、「未来の都市」)のパビリオンでは、万博博覧会協会と12者の企業・団体による共同出展。「幸せの都市へ」をテーマに経済発展と社会課題の解決を両立することを目指した未来の都市を考え、描いていくパビリオンです。

この「未来の都市」パビリオンに協賛する「CPコンクリートコンソーシアム(CPCC)」は、地球温暖化の大きな原因と考えられているCO2を、製造時から建設後も吸収し続ける次世代のコンクリートを開発しています。個者展示では、エアシップに乗って、地球温暖化の危機を乗り越えた未来と、地球温暖化が進んでしまった未来の両方を滑空し、CPコンクリートがCO2問題のカギとなることを体感する映像アトラクションを展示する予定です。

はたしてCPコンクリートとはどのようなものなのか、そしてどのような想いでパビリオンでの展示を行うのか、その狙いや意図をCPCCの幹事会社を務めている安藤・間のCPコンクリートプロジェクト 研究開発責任者の坂本守さん、技術研究所 フロンティア研究部の笠 博義さん、営業本部 副本部長の弘末文紀さんにそれぞれの視点を交えてお話しいただきました。

コンクリート廃棄物を再利用、製造過程で発生するCO2も固定化

CPCCは建設会社や生コンクリート工場、大学など15の企業や団体が集結した共同事業体です。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)によるグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」の採択を受けて、2022年よりCARBON POOLコンクリート(CPコンクリート)の開発を進めています。技術開発関係だけでなく、コンクリート建築の施工関係、道路等のコンクリート舗装関係、そしてCPコンクリートに関する技術を標準化するにあたってのルールや取り決めなどをまとめるための団体が参加しています。

「私たちは、CPコンクリートの技術開発と実証実験を行い、その技術を評価して標準化することを目的に、2030年度までの長期プロジェクトとして取り組んでいます。CPコンクリートはコンクリート廃棄物を有効活用し、コンクリートにCO2を最大限に吸着させることができる新しい技術です。資源を循環させつつ、カーボンニュートラルを目指しています(弘末さん)」

従来のコンクリートは、セメントの焼成などの製造過程で多くのCO2を排出してしまうものでした。また近年は老朽化が進んだ建物の再建築などにより、たくさんのコンクリート廃棄物が発生しています。その再建築に、従来のコンクリートを使ったのでは、さらに多くのCO2を排出してしまうことになります。

画像出典:安藤ハザマ

CPコンクリートは、製造にコンクリート由来の産業廃棄物を再利用することが大きなポイントです。さらに、CPコンクリートの材料として利用する産業廃棄物に製造過程で発生するCO2を固定化させ、大気中に出てしまうCO2をなくしていくことができます。固定化には、再利用される廃棄物に排ガスなどCO2を豊富に含むガス環境下でCO2ナノバブル水を噴霧したり、アルカリ炭酸塩へ浸漬したりすることで、CO2の固定量を増加させています。また、コンクリート構造物にアルカリ炭酸塩を通水させることでもCO2の固定量を増加させることができるそうです。CPコンクリートには再利用材料が使われますが、一般建築などに使われるコンクリートとして十分な強度を持っています。

画像出典:安藤ハザマ

「コンクリートの産業廃棄物はあまり使い道が無く、路盤や埋め立てに使うことくらいしかできませんでしたし、処分にも多くの費用がかかっていました。CPコンクリートはこの廃棄物が材料になることに大きなメリットがあります。コンクリートを再利用することで資源を循環させることができ、さらにそこにたくさんのCO2を固定化することで、コンクリートが抱えていたCO2に関する課題を解決することができると考えています。

また、日本の道路は現在アスファルト舗装が中心で、コンクリート舗装の道路はわずか5%程度しかありません。一方、諸外国ではコンクリート舗装の比率はもっと高く、ライフサイクルコスト的にもコンクリート舗装の方が有利なため、今後はCPコンクリートを舗装に使うことを推進していきたいです(坂本さん)」

CPコンクリートを使って固定化できるCO2の量は、おおよそ10階建てのビルで東京ドーム34個分の面積の杉林が1年間に固定化するCO2の量と同じくらいになるそうです。建造物や道路など、身近でたくさん使用されるコンクリートがCPコンクリートに変われば、私たちが暮らす街も森林と同じくらいの能力でCOを固定化できることになります。

エアシップで臨場感のあるリアルな体験を提供したい

大阪・関西万博「未来の都市」パビリオンでは、CPコンクリートの持つ可能性を体感できる映像アトラクションを展開。エアシップの搭乗者が座るイスなどにもCPコンクリートが使われます。さらに個者展示部分のほか、万博会場内の通路やベンチの一部にも、CPコンクリートが使われる予定となっています。

しかしながら、これまで展示会などビジネスの場で同業者などに広報や営業活動を行うことはあっても、万博のような場で子どもたちにも伝わるような展示物を手掛けるのは初めて。手探りながらも、CPコンクリートの持つ可能性とたくさんの人々に伝えたいことに真摯に向き合い、試行錯誤を繰り返して、実感を得られる展示を目指して現在も制作を進めています。

「来てくださる方のほとんどが、きっとCPコンクリートコンソーシアムってなんだろう?という方ではないかと思います。まずは、どんなことをやっているんだろうと私たちに興味を持っていただき、そこからコンクリートの性質や私たちが開発していることの可能性をわかっていただけるようなコンテンツにしていきたいです。体験としての臨場感は大切にしたいと思っています。照明やモニターの色などはAIが操縦しているようなリアル感を出せるように、実は1つ1つにちゃんと意味を持たせて、かなり詰めて考えています。そして、温暖化が進んでしまった未来と技術によって温暖化の問題が解決した未来のコントラストをしっかりと強調したいですね(笠さん)」

広がるCPコンクリートの可能性

「今後、相当量のコンクリート建築が建て替えなどに進んでいくことになります。そうすると、リサイクルに回るコンクリート廃棄物も多くなりますが、それをすべてCPコンクリートが請け負うくらいにしていきたいですね。将来的には、自治体の建築物などにもCPコンクリートを使っていただきたいです。やはり、公共施設で率先して使っていただかないと、なかなか民間に広がっていきませんからね。(坂本さん)」

「CPコンクリートは、もともとCO2をたくさん固定化していますが、外気に触れられる状態であれば作られてからもCO2を固定化する余力が残っているんです。その性質もCPコンクリートのCO2固定量にカウントできるような国際的な標準化の指針が作られようとしています(弘末さん)」

建築業界の中でもCO2を大量に発生させてしまうコンクリートは大きな課題のひとつでした。そんなコンクリートが、新しい技術によってCO2を固定化して閉じ込める救世主として生まれ変わろうとしています。CPコンクリートでカーボンニュートラルが実現された未来に触れるべく、ぜひ「未来の都市」パビリオンを訪れてみてはいかがでしょうか。

大阪・関西万博 未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」詳細はこちら

株式会社 安藤・間 
GI基金 CPコンクリートプロジェクト 研究開発責任者/工学博士、技術士(建設部門) 坂本 守さん
技術研究所 フロンティア研究部 シニアリサーチャー/工学博士、技術士(総合技術監理部門、応用理学部門) 笠 博義さん
営業本部 副本部長/上席理事 弘末 文紀さん