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同性婚は憲法違反?憲法で定められた「結婚の自由」とは


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5 ジェンダー平等を実現しよう
同性婚は憲法違反?憲法で定められた「結婚の自由」とは

10月30日、戸籍上の同性カップルなどが国を訴えていた裁判で、東京高等裁判所は、同性同士の結婚を認めない法律規定は「憲法に違反する」という違憲判決を下しました。

今回の東京高裁の判決は、テレビのニュース番組などで大きなインパクトを持って報じられ、全国各地の新聞社も「国会が一刻も早く動き出すべき」「社会の意識の変化や国際的な流れから見ても当然の判決」などといった社説を掲載しています。

全国各地で進行中の「結婚の自由をすべての人に」訴訟

婚姻を異性カップルだけに限っている現行法が、憲法14条1項が定める「法の下の平等」や、24条2項「個人の尊厳に立脚した立法」に反するという原告の訴えが明確に認められた形となった今回の訴訟は、法律上の性別が同じカップルが結婚できないことが憲法違反だと正面から問う、日本で初めての訴訟「結婚の自由をすべての人に」訴訟です。

2019年2月14日に札幌、東京、大阪、福岡の各地方裁判所で提訴され、現在全国5か所で6件の裁判が進行中です。判決が出揃った1審では「憲法違反」が2件、「違憲状態」が3件、「合憲」が1件という判断に分かれました。

2審の判決は今回の東京高裁が2件目です。1件目の札幌高裁も今年3月、同性婚を認めないのは「憲法違反」とする判断を示しました。これまでの8件の判決うち7件で「違憲」もしくは「違憲状態」と判断されたことになります。

憲法違反となった今回の裁判とは?

2019年2月の集団提訴直前に、弁護団の有志や当事者などによって「一般社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」(略称:マリフォー)が設立されました。2021年に公益社団法人化され、同性婚の実現を目指して活動しています。

そのマリフォーのYouTubeチャンネルでは、10月30日の東京高裁判決後に行われた記者会見を視聴することができます。それによると今回の裁判は、冒頭の要旨読み上げの段階で「憲法に違反する」と明言された判決だったようです。

判決全文の冒頭【判断の骨子】には、こう書かれています。
現行の法令が、民法及び戸籍法において男女間の婚姻について規律するにとどまり、同性間の人的結合関係については、配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定(=婚姻の届出に関する民法739条に相当する規定)を設けていないことは、個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益について、合理的な根拠に基づかずに、性的指向により法的な差別的取扱いをするものであって、憲法14条1項、24条2項に違反する。

弁護団の一人は、判決に対して「婚姻とは、“自らの自由意志により人生の伴侶と定めた相手との永続的な人的結合関係を結び、配偶者としての法的身分関係を形成すること” ということで、配偶者としてきちんと法的に保障される、それが大事なんだと認めてくれたこと、そこが私たち弁護団としては嬉しいポイントだった」と喜びを表しています。

さらに、「現行の民法は夫婦間に子供が生まれ、家族が形成されることを想定していると言いながらも、これに当てはまるものだけを社会的に正当な在り方と認めているわけではないと明言してくれた。多様な家族の在り方がある、それをきちんと保障しなくてはいけないんだと裁判所が強いメッセージとして伝えてくれたことが、とても意義のあることだった」と述べています。

憲法で定められた「婚姻の自由」とは

実は日本では、同性婚は法律で明確に禁じられてはいません。 戸籍上の性別が同性同士のカップルが結婚できないのは、「民法」の結婚に関する条文で、「夫婦」や「夫」「妻」などの用語を使っているために、異性のカップルのみに認められていると解釈されているからです。
ちなみに民法では「婚姻は、18歳にならなければ、することができない」と、結婚できない場合が定められていますが「同性同士の結婚はできない」とは書かれていません。

では憲法はどうなのでしょうか。70年以上前に施行された日本国憲法第24条1項では「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、、、、」とあります。

「両」性の合意、つまり「男」と「女」の両方が合意して成立するということは、「男」と「女」がする場合に限定されるのではないか?という考え方があります。しかし、その主旨としては、戦前の日本において結婚相手が親や戸主によって決められていたことを問題視し、個人の尊重や男女平等の実現を目指して定められたものだから、という考え方もあるようです。つまり「両当事者の意思だけで結婚できますよ」という意味として捉える解釈です。現に、憲法にも「同性同士は結婚できない」とは明記されていません。

これらのことから、手続きが大変な憲法の改正ではなく、民法や戸籍法の法解釈の変更のみで同性婚が認められるようになるだろうという考え方が有力になりつつあるようです。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟の舞台は最高裁へと移るはずです。それを待たずに国会で立法されるのか否か、日本では引き続き注目される裁判となるでしょう。

東京高裁判決の一週間ほど前ですが、タイの人気男性俳優同士が、イベント中にサプライズで公開プロポーズし世界中のファンを驚かせました。実はタイは、9月24日に同性婚を認める法案を国王が承認したばかりで、来年1月に施行されます。同性婚の法制化はアジア全体では台湾、ネパールに続いて3例目、東南アジアでは初となります。

婚約した本人たちはもちろん、ファンも大喜びした公開プロポーズの様子をSNSで見ながら、ニュージーランドのモーリス・ウィリアムソン前国会議員の有名なスピーチを思い出しました。

「この法案で我々がやろうとしていることは、愛し合う二人の人間に結婚という手段を認める、それだけのこと」

多くの人々の胸を打ち、語り継がれるこんなスピーチを、日本の国会でも聞ける日が来るといいですよね。


執筆/フリーライター こだまゆき