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今注目されるクリーンな燃料!バイオエタノールとは?自動車燃料への活用について解説


この記事に該当する目標
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 9 産業と技術革新の基盤をつくろう 13 気候変動に具体的な対策を
今注目されるクリーンな燃料!バイオエタノールとは?自動車燃料への活用について解説

近年、気候変動対策が世界的な課題として注目される中、バイオエタノールが注目を集めています。2024年11月11日(月)、経済産業省は自動車燃料(ガソリン)へのバイオエタノール導入拡大の方針を示しました。その方針では、2030年までにバイオエタノール10%混合ガソリン(E10)、2040年までに20%混合ガソリン(E20)の導入を開始することを目標にしています。本記事では、バイオエタノールの基本的な仕組みと役割、アメリカでの成功事例、そして日本における現状と課題について解説します。

バイオエタノールとは?

バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビといった植物資源を原料として製造されるアルコール燃料です。その製造プロセスでは、植物に含まれる糖分やデンプンを発酵させ、蒸留してエタノールを抽出します。バイオエタノールは化石燃料に代わる再生可能エネルギーとして位置づけられています。

資料提供:アメリカ穀物協会

バイオエタノールが注目される理由の一つは、「カーボンニュートラル」という特徴です。植物は成長する過程で二酸化炭素(CO2)を吸収します。バイオエタノールを燃焼させる際に発生するCO2は、成長時に吸収された量とほぼ相殺されるため、環境への影響が抑えられるとされています。この特性は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを削減するための重要な要素です。

バイオエタノールはガソリンと混合して利用されます。この混合には2種類の方式があり、一つは直接混合方式、もう一つはETBE(エチル・ターシャリ・ブチル・エーテル)混合方式です。直接混合方式は、エタノールをそのままガソリンに加えるシンプルな方法で、国際的に主流です。一方、ETBE混合方式は、エタノールを加工してガソリンに混合しますが、日本以外ではほとんど採用されていません。

持続可能なエネルギーの確保と温室効果ガス排出削減が、バイオエタノール導入の主要な目的です。特に運輸部門での温室効果ガス削減は、カーボンニュートラル実現のため不可欠とされています。従来の化石燃料に依存しないバイオエタノールの利用拡大により、以下の利点が期待されています。

・化石燃料依存の低減:輸入される石油などの化石燃料への依存を減らし、エネルギーの安定供給を確保できます。
・温室効果ガスの削減:バイオエタノールの利用はガソリンと比較してCO2排出を大幅に抑えることができます。
・地域経済の活性化:バイオマス資源を利用した国内生産の可能性があります。

 アメリカにおけるバイオエタノールの動向

バイオエタノールの利用が最も進んでいる国の一つがアメリカです。アメリカでは、主にトウモロコシを原料としてバイオエタノールを製造しており、その普及率は世界的に見てもトップクラスです。現在、全土でE10が標準燃料として流通しており、さらに高濃度であるE15(15%混合)の使用も徐々に広がっています。

アメリカ政府は再生可能燃料基準(RFS)を策定し、バイオ燃料の利用拡大を政策的に支援しています。この政策は、農業分野にも大きな影響を与え、トウモロコシの需要拡大を通じて農家の収益向上にも寄与しています。さらに、アメリカはE85(85%混合)の燃料使用を可能にする車両の普及も進めており、今後のさらなる普及拡大が期待されています。

米国産の大麦、トウモロコシ、グレイン・ソルガム、及びその関連製品の輸出市場の開拓を目指す非営利組織である、アメリカ穀物協会日本事務所の浜本哲郎さんは、「バイオエタノールに使われるトウモロコシは、食用のスイートコーンではなく、飼料用のデントコーンです。トウモロコシ穀粒の3分の2を占めるデンプンを酵素で糖化し、酵母で発酵させてエタノールを生成します。また、同時に併産物として得られるジスチラーズグレイン(タンパク質、繊維、ビタミンなど)は、家畜飼料として利用されています。また、エタノールをつくるときに出る二酸化炭素はドライアイスにしたり、炭酸飲料に入れたりして利用し、すべて無駄なく使われているのです」と教えて下さいました。

資料提供:アメリカ穀物協会

日本における現状と課題

日本では、エネルギー供給構造高度化法という法律に基づき、バイオエタノールをETBEの形に変換してガソリンに混合する取り組みが行われています。さらに今後、ガソリンへの直接混合方式を含めた普及を進めていくことが期待されています。

日本はバイオエタノールをアメリカとブラジルから輸入しています。一方、国内での生産は進んでいません。そのため、今後は安定した供給をこれらの輸入によって確保しつつ、輸送や保管に対応するためのタンクや輸送設備といったインフラ整備を進めながら、国産バイオエタノール生産を含めたさらなる利用を図る必要があります。

また、給油される側の車両についてもエタノール混合ガソリンへの対応が求められます。現在、日本国内の自動車はエタノール3%混合のE3ガソリンまで対応していて、多くの車両はE10ガソリンまで対応しています。今後はE10や、さらなる高濃度のエタノール混合ガソリンに対応する車両の普及が求められます。このような自動車メーカーによる対応車両の開発促進や、消費者への理解促進によって、エタノール混合ガソリンの普及がさらに進むことが期待されます。

バイオエタノール導入拡大の意義と今後の展望

バイオエタノールの導入は、環境保護だけでなく、エネルギーの安全保障や経済活性化にも貢献します。化石燃料に依存しない持続可能なエネルギー源として、地域経済への波及効果も期待されています。例えば、コメなどの農産物を活用した国内生産が実現すれば、新たな雇用機会を生むことにもつながるでしょう。

日本におけるバイオエタノール導入拡大の鍵は、技術と政策の両面での対応にあります。まず、国内での生産を促進するために、農産物などを活用した製造プロセスを整備することが重要です。また、流通のためのインフラ整備への助成や、対応車両の普及促進のための政策的支援も必要です。

さらに、アメリカやブラジルといった主要生産国からの、安定した供給体制を構築することが求められます。その際、世界的な技術革新や市場の動向を柔軟に取り入れることが、日本の競争力向上にもつながるでしょう。

まとめ

バイオエタノールは、地球環境を守るための有望なエネルギー源です。その導入を拡大することで、日本も持続可能な社会へと大きく近づくことができます。アメリカなどの成功事例を参考にしつつ、政府、企業、そして消費者が一体となって課題に取り組むことが必要です。未来のエネルギー社会を築くために、バイオエタノールの可能性を最大限に活かしていきましょう。


アイキャッチ 画像提供:アメリカ穀物協会