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未来の科学者が全国から集結!10代の研究者たちが海洋研究の成果を発表


この記事に該当する目標
9 産業と技術革新の基盤をつくろう 12 つくる責任つかう責任 14 海の豊かさを守ろう 17 パートナーシップで目標を達成しよう
未来の科学者が全国から集結!10代の研究者たちが海洋研究の成果を発表

海洋ごみ・化学物質などによる海洋汚染や地球温暖化などにより、世界の海が危機的な状況にさらされています。SDGsの14番目のゴール「海の豊かさを守る」を実現して、持続可能な世界を実現することは、いま喫緊の課題になっています。
海に関わるさまざまな問題を解決しようと、熱心に研究を続けている10代の若者がいます。2025年2月15日(土)、「マリンチャレンジプログラム 2024全国大会」がTKPガーデンシティPREMIUM東京駅日本橋で開かれ、地方大会を経て選出された15名の次世代研究者がこれまでの取り組みの成果を発表しました。

マリンチャレンジプログラムとは?

2017年から始まった「マリンチャレンジプログラム」は、今回で8年目を迎えます。日本財団「海と日本のプロジェクト」の一環として取り組まれ、海洋・水環境分野において課題を自ら発見して、人と海との未来を創り出す仲間づくりのための研究に挑戦する10代の次世代研究者を応援しています。

“好き”から始まり世界を変える共同研究プロジェクト、4チームが受賞

最終審査の結果、15チームの研究の中から4つのチームに賞が贈られました。その中から2チームの研究について紹介します。

最優秀賞
「沖縄産サンゴにおける刺胞毒(しほうどく)の調査とパリトキシンの謎」
鈴木雅人さん(早稲田大学高等学院2年)

日本財団賞
「イカから出る廃棄物の再利用法~イカでイカを釣る~」
松永七海さん(山口県立徳山高校2年)

J A S T O賞
「シナヌマエビの体色はなぜ変化するのか?その要因と効果の検証 
井芝悠貴(西大和学園高等学校)

リバネス賞
「カワリヌマエビ属に共生するエビヤドリツノムシ2種の生息状況」
矢立唯真(熊本県立東稜高等学校)

最優秀賞
毒成分が抗ガン剤治療薬になる可能性を発見

鈴木雅人さん(早稲田大学高等学院2年)。「沖縄産サンゴにおける刺胞毒(しほうどく)の調査とパリトキシンの謎」をテーマに研究発表

世界的にも生息するサンゴの種が多いサンゴ大国日本で、ほとんど研究されていない刺胞毒(毒針から獲物に注入される毒成分)について、沖縄のサンゴの調査から判明した結果を発表しました。
熱帯性の魚の一部の体内に蓄積するパリトキシンという強い毒性を持つ成分の原因とされるイワスナギンチャク(サンゴの一種)が、本当にパリトキシンを持っているのか。また、イソギンチャク由来のたんぱく毒の主成分である「Actinoporin」に抗ガン作用があることから、今後は抗がん剤の開発につながる研究を進めていきたいとの展望を語りました。

審査員長の岡崎敬氏(株式会社リバネス製造開発事業部 部長)
「毒という危険がある一方で、薬にも応用できる可能性を持った素材に着目して、果敢にチャレンジした姿勢を高く評価した。早稲田大学や東京海洋大学の教授や研究室も巻き込んで研究を進めていけたのは情熱による賜物。高校生のレベルを超えた高い研究で、納得の受賞」と講評しました。

日本財団賞
イカの成分で分解プラを生成して作る釣具

「イカから出る廃棄物の再利用法~イカでイカを釣る~」。松永七海さん(山口県立徳山高校2年)

多くの釣り人が集まる山口県では、釣り具が絡まって捨てられたものがごみとなって海を汚す原因になっていました。この問題を山口県独自の解決方法で実現したいと考え、生ごみとなるイカの甲(体内にある殻)にあるキチン質(甲殻類などの外骨格をつくっている物質)から、生分解性プラスチック(以下、分解プラ)生成の着想をしました。
完成したのが自然由来の「エギ」という疑似餌。イカから作った疑似餌でイカを釣ろうという独創的なアイデアです。分解プラは海に放置されても自然に還るため、海の環境破壊を防げることが大きな利点です。

審査員の矢ヶ﨑一浩氏(日本財団 海洋事業部 海洋環境チーム)さんのコメント
「イカのキチンを用いた分解プラの疑似餌の開発まで漕ぎ着けた点を高く評価した。今後は他の製品への利用や耐久性などの点でも研究を進め、さまざまな製品に実際に利用されるようさらなる発展を目指してほしい」と講評しました。

若者たちの可能性に大きな期待

日本全国には、“好き”から始まった好奇心の芽を育て、SDGsの14番目のゴール「海の豊かさを守る」ための研究を熱心に行う10代の研究者がいます。
仮説を立て、調査・実験・分析し、周囲のサポートを受けながら、情熱と熱意を持ちながら社会問題を解決し、社会貢献を目指しています。
今は小さな若木ですが、いずれ大木に育ち、海と陸を隔てることなく人々に恩恵をもたらすそんな若者たちの可能性に期待が大きく膨らみます。


マリンチャレンジプログラムについて
マリンチャレンジプログラム2024の実施概要や全国の採択チーム・研究テーマ一覧は、こちらのサイトからご覧いただけます。

<団体概要>
株式会社リバネス
一般社団法人日本先端科学技術教育人材研究開発機構(JASTO)
日本財団「海と日本プロジェクト」
海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進しているプロジェクト。私たちの生活を支えている海の現状を伝え、海を未来へつなぐためのアクションの輪を日本全国に広げることを目的としています。


取材・執筆/フリーライター 廣瀬智一