日常の洗顔から意識変容を。クラシエとヘラルボニーが挑む「誰一人取り残さない」社会
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2026年の夏、「夢中」を応援するアートが、バスタイムに登場します。
「異彩を、放て。」という力強いミッションを掲げ、福祉のイメージをアップデートし続ける株式会社ヘラルボニー。同社が今回、トイレタリー・コスメティックスや薬品、食品など「暮らし」に深く根ざすクラシエ株式会社とのパートナーシップを発表しました。この取り組みは、単なるパッケージデザインのコラボレーションではありません。背景にあるのは、SDGsの10「人や国の不平等をなくそう」や17「パートナーシップで目標を達成しよう」を具現化する、両社の深い共鳴です。
「夢中」が生み出した共創プロジェクトが、経済を回す
今回の共創は、クラシエのコーポレートスローガン「夢中になれる明日」と、ヘラルボニーが契約する作家たちの「夢中」で生み出される創作活動が共鳴し、実現しました。
その第1弾として、30年以上の歴史を持つブランド「ナイーブ」から、ヘラルボニーの契約作家である杉本かほる氏のアートを施した「ナイーブ クールボディソープ(ヘラルボニーデザイン)」が、2026年5月22日(金)より数量限定で発売されます。杉本氏が紙コップを用いて丁寧に押した「丸」が重なり合う色鮮やかなアートが、夏のバスタイムを彩ります。


この共創の特筆すべき点は、製品化に留まらない包括的な展開です。
ヘラルボニーが展開するDE&I研修を、クラシエ社員を対象として実施することで、社員一人ひとりの強みを生かし、自分も含めた全ての人の多様性が活かされた状態の具現化を目指すそうです。
この共創を支えるのは、ヘラルボニーが構築した「ライセンスビジネス」という持続可能なモデルです。彼らは作家の作品をデザインとして企業に提供し、その対価をロイヤリティとして作家に還元しています。これはSDGsの8「働きがいも経済成長も」に直結する取り組みです。障害のある表現者が「支援を受ける存在」から、自らの才能で経済を動かす「アーティスト」へと役割を変える。今回の「ナイーブ」の購入は、消費者がその経済循環の重要な担い手になることを意味しています。
また、クラシエ内部での変化も見逃せません。同社が掲げるビジョン「CRAZY KRACIE(クレイジークラシエ)」は、常識に縛られない挑戦を推奨するものです 。本プロジェクトの一環として、ヘラルボニーが設立した「HERALBONY ACADEMY」による社内研修がクラシエ社員の管理職に向けて実施されました。研修では、社員一人ひとりの強みを生かし、多様性豊かな組織をつくるために明日からできることを話し合い、その宣言が行われました。単なる商品の発売に留まらず、組織の空気感そのものをアップデートしようとするクラシエの姿勢は、SDGsの17「パートナーシップで目標を達成しよう」における理想的な形といえるでしょう。


福祉を「支援」の対象としてではなく、対等なビジネスパートナーとして捉える多様な個を社会の力に変えていくこれらの試みは、SDGsの理念である『誰一人取り残さない』社会の実装そのものと言えます。
日用品から社会のバリアを取り除く


記者が注目したのは、ヘラルボニーの哲学です。彼らは「障害を持つ」ではなく「障害がある」という表現を用います。これは、障害の原因は個人にあるのではなく、社会側の障壁(バリア)にあるという「社会モデル」の考え方に基づいています。
今回のクラシエとの共創は、まさにこの「社会側の障壁」を、日用品という身近なチャネルを通じて取り除く試みです。ドラッグストアの棚に並ぶ美しいデザインの「ナイーブ」を手に取る瞬間、消費者は無意識に抱いていた「障害」に対する先入観を忘れ、1人のアーティストとして尊敬の気持ちが生まれることでしょう。
ここで特筆すべきは、私たちの「消費」のあり方です。SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」において、消費者の選択は大きな力を持っています。しかし、社会貢献を意識しすぎるあまり、購買が「義務感」になってしまっては持続しません。
ヘラルボニーだからこそ生み出せるプロダクトの魅力は、作家の異彩によるアートの「美しさ」にあります。ドラッグストアでこの限定ボトルを見たとき、多くの人は「素敵だから」「色が綺麗だから」という理由で手を伸ばすはずです。その直感的なワクワクこそが、無意識のうちに抱いていた「福祉=地味、保護すべきもの」というバイアスを溶かしていきます。「良いものを選んだら、結果的に社会が良くなっていた」。そんな軽やかな消費の体験こそが、社会を前進させる原動力になるのです。
心の中の“境界線”を越えるアートの力
SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」社会の実現には、制度の整備だけでなく、私たちの心の中にある「境界線」を溶かしていく作業が必要です。ヘラルボニーとクラシエの共創は、アートの力でその境界を軽やかに飛び越えて見せました。
5月22日に発売される「ナイーブ」を手に取ることは、作家の才能を認め、多様性を尊重する社会への「一票」を投じることと同義です。こうした小さな「夢中」の連鎖が、誰もが自分らしく、異彩を放つ明日を作っていくのではないでしょうか。
※本記事では、ヘラルボニーの表記方針および思想を尊重し、社会の側にある課題を指す意味を込めて『障害』と表記しています。





