オーストラリア生食用ぶどう協会(Australian Taste Grape Association Inc,(以下、ATGA))が、オーストラリア産生食用ぶどうの日本市場への輸入解禁を受け、2025年シーズンより130品種以上の多彩なぶどうを提供することを発表しました。
これまで日本市場では限られた品種のみが流通していましたが、日本政府の規制緩和により、より幅広い味わいや食感のオーストラリア産ぶどうを楽しむことができるようになります。
実はオーストラリアが輸出する果実の中で1番多いのはぶどうです。日本にもおいしいぶどうがたくさんありますが、新しくやってくるオーストラリアのぶどうにはどんな魅力があるのでしょうか。
先進的な栽培技術とそれぞれの農家の技による高品質管理でできるおいしいぶどう

オーストラリアのぶどう農家は、ドリップ灌漑システムを活用することで水分管理を最適化し、ぶどうの甘みや食感を均一に保つほか、精密農業の導入により土壌や気候のデータをリアルタイムで分析し、最適な収穫時期を見極めるなど、最新の農業技術を駆使し、品質の安定したぶどうを生産しています。
ドリップ灌漑システムとは、水源から作物までチューブで灌漑水を移送し、点滴のように根本へ滴下して給水する方法のことです。灌漑水に肥料を加えることで施肥することもでき、無駄な水分を使わず効率的に作物を育てることのできる画期的なシステムです。
オーストラリアのぶどう生産農家は約700ほどありますが、そのうち400以上が家族生産者です。先進技術を取り入れる一方、おじいちゃん、お父さん、そしてその子どもが3世代で協力し合いぶどう作りに取り組むなど、それぞれの農家がその味と品質を守っています。
オーストラリアの気候がぶどうの長期的な供給を可能に
オーストラリアは広大な国土を持ち、地域ごとに異なる気候帯が存在します。ぶどうの栽培に適した気候は、温暖で乾燥していて、日照時間が長く、日中は暑く夜は涼しい環境。オーストラリア最大の生食用ぶどうの生産地であるビクトリア州とニューサウスウェールズ州の境界に位置するサンレイシア地域はまさにそんな気候で、ぶどうの栽培に最適です。
サンレイシア地域以外にもオーストラリアでは各地でぶどうの栽培が行われており、11月から6月まで長期的にぶどうが収穫されています。今回の規制緩和で、特に3月から5月の収穫期には日本市場へも安定的に高品質なぶどうが供給されるようになります。
現在日本が多くのぶどうを輸入しているチリからは、船便でぶどうが届くのに30日ほどかかります。一方オーストラリアからならその約半分の17日程度で届けることができるため、鮮度の面でもいいものが手に入ることが期待できます。
環境に配慮した持続可能な農法を導入
オーストラリアのぶどう農家では、カバークロップ(被覆作物)を畑に植え、土壌の健康を維持し、農薬の使用を最小限に抑えるため天敵昆虫を活用し、化学農薬を使わず害虫を自然に駆除しています。さらに、ソーラーパネルの導入など再生可能エネルギーの利用で、農場のカーボンフットプリント(温室効果ガスの排出量をCO2に換算したもの)も削減します。

オーストラリアのぶどう産業は、環境に配慮した持続可能な農法を積極的に導入しています。こうした取り組みにより、オーストラリアの生食用ぶどうは環境に優しく、より安心して楽しめるフルーツとして世界からも注目されています。
ATGAのCEO ジェフ・スコット氏も、「今回の輸入解禁は、オーストラリア産ぶどうの品質と安全性が高く評価された結果」だと語っていました。
オーストラリアのぶどうはクランチな食感が特徴で、味はジューシーなものからさっぱりしたものまでさまざまですが、つまんで食べるのにちょうど良い大きさのものが多く、色鮮やかでパッと見て美味しそうなものばかり。日本ではほとんど見られないユニークな形のものもあり、非常に魅力的です。
ぶどうの旬は秋ですが、オーストラリアでは日本と季節がちょうど逆になるため、日本の春、まさに今がオーストラリアのぶどうの旬です。店頭で並んでいるのを見つけたら、新しく楽しめるようになったオーストラリア産のぶどうをぜひ味わってみてくださいね。
執筆/フリーライター Yuki Katagiri