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ユニコーン企業を広島から10年で10社創出する「ひろしまユニコーン10」プロジェクトとは


この記事に該当する目標
8 働きがいも経済成長も 9 産業と技術革新の基盤をつくろう 11 住み続けられるまちづくりを 17 パートナーシップで目標を達成しよう
ユニコーン企業を広島から10年で10社創出する「ひろしまユニコーン10」プロジェクトとは

世界に肩を並べるスタートアップを地元で生み出すことを本気で狙った「ひろしまユニコーン10」という取り組みを広島県が展開しているのをご存知ですか。

「厳島神社」と「原爆ドーム」という2つの世界遺産を有し、海外でも抜群の知名度を持つ広島県は、サスティナブルで新しいビジネスを推進し、世界に発信しようとしています。

目標はユニコーン企業を10年で10社創出

「ひろしまユニコーン10」は、“ユニコーン企業を10年間で10社創出する”ことを目標とするプロジェクトです。広島から世界に大きく羽ばたき、成長することを目指す企業を応援しようと、広島県が2022年3月にスタートした取り組みです。

そもそも「ユニコーン企業」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。 一般的にユニコーン企業とは、“創業10年以内にして、企業評価額が10億ドル以上ある、未上場のベンチャー企業”の総称です。ネーミングは聖書に登場する幻獣「ユニコーン」からきています。

世界をみると、起業が盛んなアメリカや中国などがユニコーン企業を多く輩出しているようです。人工知能AIの研究開発を行う「OpenAI」や航空宇宙分野の「スペースX」、動画共有アプリ「TikTok」を運営するBytedanseなどが有名なユニコーン企業です。

広島県が目指す“ユニコーン”は、創業年数や分野、上場未上場にはこだわらず、時価総額10億ドル以上への急成長を志向する企業としています。

スタートアップはもちろん、企業内で新事業にチャレンジしてカーブアウト(自社事業の一部を切り出して新会社として独立させること)を目指すプレイヤーや、引き継いだ会社を存続させるために新たなイノベーションに挑戦しているアトツギベンチャーも対象としています。

10のきめ細かいサポートメニューを展開

「ひろしまユニコーン10」プロジェクトでは、県がそれぞれの会社の成長フェーズに合わせた、以下の10におよぶサポートを行っています。

1.オープンイノベーション
2.実証フィールド
3.スモールスタート
4.アクセラレーション
5.資金調達機会の創出
6.環境・エネルギー/カーボンリサイクル分野
7.健康・医療関連分野
8.海外ビジネス展開
9.広島県への企業移転
10.スタートアップフレンドリー

「1.オープンイノベーション」では、県が「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」という拠点を作り運営しています。ビジネスや地域振興など、様々な領域で挑戦する人同士が対話し、新たな価値を生み出すためのコミュニティスペースとして活用されています。

「6.環境・エネルギー/カーボンリサイクル分野」は、環境・エネルギー分野の新規事業や販路拡大、また今後市場の成長が見込まれるカーボンリサイクル技術の研究開発や実証などを支援する、というものです。例えば、広島県内の高校生や大学生を対象にカーボン・サーキュラー・エコノミーを学ぶイベントなどを開催しています。若い世代が自分の将来においてカーボンリサイクルに関する分野を選択肢の一つとし、広島に貢献したいと思ってもらえるような新たな発見と刺激を与えることを目的としています。

「9.広島県への企業移転」は、多様なプレイヤーの流入を促進する誘致活動です。移転に伴う初期費用をサポートしたり、広島県内に移住することになる社員やその家族など「人の異動」に対する助成制度も用意しています。

“未来の島の暮らし”の第一歩につながる実証実験

それでは、「ひろしまユニコーン10」の具体的な成果として、㈱エイトノットの取り組みをみてみましょう。同社は小型船舶向け自律航行システムの開発・提供をするスタートアップで、前述したサポートメニュー「4.アクセラレーションプログラム」において、2024年度の採択事業者となった企業です。

本州竹原市から南に約10kmに位置し全域離島である大崎上島町には、町民の暮らしを支える航路として竹原港との間を結ぶフェリーが運航されています。日中は高い頻度で往復しているものの、早朝や夜遅い時間の運航はなく、最終便を遅くして欲しいといった声が住民からあがっていました。

そこでエイトノットは2025年1月~3月、フェリーが運航していない深夜と早朝の時間帯に、AI技術による自動航行システム搭載船舶「スマート海上バス ゆき姫」の試験運航を行いました。この自動航行システム「エイトノット AI CAPTAIN」は、障害物や他の船を検知して安全運航が可能なのだそうです。

瀬戸内海エリアでは人口減少などで定期航路が縮小したり、廃止することが多くなっています。自動航行システムを搭載した運航は、継続的な住民の足の確保はもちろん、労働力不足という社会課題の解決にもつながる大きな一歩となったのではないでしょうか。近い将来の実用化に期待が高まりますね。

広島県の湯﨑英彦知事は、「ひろしまユニコーン10」YouTube公式チャンネルで次のように述べています。

「ユニコーン企業の存在は、産業に刺激を与えて新たな価値を生み出し、企業・人材を引き付けて集積させる効果があります。その刺激が次なる挑戦の着火剤となって、イノベーションエコシステムが完成していくと思っています。

ー挑戦しやすい環境ができた暁には、挑戦者の中から先駆者が現れてくると思っています。見本となる先駆者が身近にいるということが、“私にも挑戦できる”という機運をつくり、挑戦の数が増えると挑戦の確度も上がり、その中からまたユニコーンが生まれる。挑戦することが当たり前の土壌・文化をつくっていきたいと思います。」

世界に羽ばたき急成長する若い企業の挑戦を後押しする広島県。もしかしたら5年後、10年後、「◯◯◯をやっているのって広島の企業なんだ!」と知る瞬間があったりするかもしれませんね。今後も広島県の取り組みに大注目です。

「ひろしまユニコーン10」プロジェクト


執筆/フリーライター こだまゆき