4月改正「育児・介護休業法」働き方はどう変わる? 育児・介護を両立しながら働く人の支援強化とは
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2025年4月1日から「育児・介護休業法」が改正されました。子どもの入園(入学)式、卒園式でも
「子の看護休暇」をとることができたり、転職後すぐに家族の介護の必要性が生じた場合でも「介護休暇」を取得できるようになりました。
育児・介護休業法とは?
育児・介護休業法は、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。
結婚、妊娠、出産、育児、介護等のライフステージにともなって退職するケースがありますが、人手不足が社会問題となっている日本では、社員が離れていってしまうのは企業側としてもマイナスです。
このような事態を防ぐため、社員が育児や介護を行いやすくするためのさまざまな措置を定めているのが「育児・介護休業法」です。


1992年4月から施行されたこの法律は、社会の動きにあわせて活発に法改正がなされてきました。
1999年には介護休業が義務化、2002年には子の看護休暇が創設(努力義務)されています。2010年に創設されたパパ休暇は、2022年法改正の産後パパ育休(出生時育児休業)につながっています。
対象は小学校3年生修了までに拡大!入園(入学)式等での活用も可能に
それでは、男女ともに育児や介護の両立ができるように改正された「育児・介護休業法」の改正ポイントとその内容についてみていきましょう。まずは育児に関する改正点です。
「子の看護休暇」の見直しがされ、対象となる子の範囲が「小学校3年生修了まで」に引き上げられました。今までは「小学校就学の始期に達するまで」、つまり、幼稚園・保育園までの子だったものが、9歳になった年度の終わりまでの小学生も対象になっています。
また、施行前は「病気・けが」や「予防接種・健康診断」に限られていた休暇取得事由も、「感染症に伴う学級閉鎖」が追加されています。新型コロナウイルス感染症で子の学級閉鎖を経験し、あたふたした保護者は多いと思います。コロナ禍が教育現場に与えた影響は、法律の改正にまで及んでいるのですね。


取得事由には「入園(入学)式・卒園式」も追加され、行事参加でも子の看護休暇を取得できるようになりました。そして4月からは「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に名称が変更になっています。
育児関連では他にも、所定外労働の制限(残業免除)の対象が3歳未満の子を養育する労働者から小学校就学前の子を養育する労働者に拡大されたり、短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークが追加されています。また、事業主には、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが努力義務化されました。
転職してすぐでも介護休暇が取得可能に!会社側は周知・徹底が義務化
続いて介護に関する改正点です。介護休暇とは、要介護対象家族の介護や世話をするための休暇です。
通院の付き添いや介護サービスの手続き代行、ケアマネジャーさんとの打ち合わせなど短時間の休みが必要な時に活用できます。ちなみに、取得できる日数は対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日までとなっています。
この介護休暇、今までは入社6か月未満の人は取得出来ませんでしたが、この要件が撤廃され、転職してすぐでも介護休暇をとれるようになっています。


また会社側は、介護離職防止のための雇用環境整備を目的に、以下のうちのいずれかの措置を講じることが義務となりました。
① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
さらに、介護に直面している社員に対して、介護休業に関する制度の内容や申し出先、介護休業給付金に関することなどを面談や書面などで個別に周知して意向確認を行うことや、介護に直面する前の早い段階(40歳)での情報提供も義務化されました。要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように就業規則等を見直すことも努力義務となっています。
男女ともにワークライフバランスをはかれる働き方へ
先日、メジャーリーグ ドジャースの大谷翔平選手が第1子誕生に備えて試合を欠場し「父親リスト」に入って話題となりましたよね。大リーグの「父親リスト」とは、選手が出産の立ち会いなどのために最長で3日間チームを離れることが認められる、いわば「産休制度」です。
この「父親リスト」、男女平等の先進国アメリカのメジャーリーグらしい制度だと感じたのは私だけではないと思います。


今回の育児・介護休業法の改正は、少子高齢化・人手不足という大きな社会的背景に伴う労働力不足を解消するため、男女ともに育児・介護といった多様なライフステージに対応しながら柔軟な働き方を選べることを目的としています。ひとつひとつの細かい改正内容は、育児や介護に直面している当事者にとって心強い制度となり、日々の大きな助けとなるはずです。
執筆/フリーライター こだまゆき