メルクバイオファーマのSDGs 前編より輝く人生のための福利厚生「YSP」を支える「3つの柱」とは
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当WEBメディアと連携し、パーソナリティの新内眞衣さんとともに未来の地球をより良くするための17の持続可能な開発目標からなるSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。6月1日の放送ではヘルスケア・ビジネスを展開する「メルクバイオファーマ株式会社」を特集した。今回は医療用医薬品を製造販売する同社を新内さんが取材。目標3「すべての人に健康と福祉を」をはじめとしたSDGsにつながる、その取り組みに2週にわたって迫った。
創業は江戸時代?! メルクバイオファーマとは
今回2週にわたって紹介するのは、人々の人生をより輝くものにするために「ファミリーフレンドリーな社会の構築」を目指す企業「メルクバイオファーマ株式会社」の取り組み。どんな企業で、どんな具体的なアクションを行なっているのか、新内さんが同社の永田一彦さんにインタビューした。


新内 「働き方改革が進む中で、働きやすい職場や社員のライフプランに寄り添う企業制度がますます注目されています。でも実際、仕事と日々の生活をどう両立すればいいのか、悩んでいる方も多いと思います。そこで、今回はこの方にお話をうかがっていきます。人々の人生をより輝くものにするために、さまざまな取り組みを行っている企業『メルクバイオファーマ株式会社』の永田さんです。よろしくお願いします」
永田 「よろしくお願いします。メルクバイオファーマの永田です」
新内 「よろしくお願いします。まず、メルクバイオファーマがどのような企業なのかうかがえますでしょうか」
永田 「本社は、ドイツのダルムシュタットというフランクフルトに近い街にあります。メルクというグループの中のヘルスケア・ビジネス、医療用医薬品を扱っているビジネスの日本法人がメルクバイオファーマです。主に、がんや不妊治療に用いられる医療用医薬品を製造販売する企業です」
驚きなのが、永田さんが「実はすごく昔に…」という、その創業年。日本で言えば江戸時代にあたる1668年に創業された、350年以上の長い歴史を持つ会社で、薬局からスタートしたのだという。
新内 「えぇっ!? ちょっと昔過ぎませんか」
永田 「全くどういう時代だったか、想像もつかないですけれども」
新内 「(笑)。最初から医薬品の研究とか販売を行っている会社だったんですか」
永田 「350年以上前に出来たのが薬局で、それがスタートなんです。そこから、いろいろなビジネスを展開しておりますが、起源はそこにあります」
企業のパーパスとアプローチ


新内 「なるほど。長い歴史の中で企業の成長があったと思うのですが…」
永田 「メルクとしては、『サイエンスとテクノロジーを通じて、人々の人生、生活をより良くする』ということをずっと謳い続けてきています」
新内 「素敵ですね」
永田 「医療用医薬品を扱っていることもあり、それに加えて、特に患者さんのために何ができるか、ということを常に考えなければならないわけです」
新内 「はい」
永田 「ですので、グローバル全体では『患者さんのために一丸となって、生命の誕生、QOL (生活の質)の向上、命をつなぐサポートをする』ということを私たちのパーパス、すなわち存在意義として掲げています」
さらに、日本では2024年から「Brighter lives, together ともに、より輝かしい人生を歩もう」というパーパスを掲げ、そのもとでグローバル・パーパスを達成するための患者主導のアプローチを推進している。
永田 「この『together』っていうのが大事なんです。やはり、患者さんたち、あるいは患者さんのご家族に、より輝かしい人生を歩んでほしいというのは会社の使命上、当然なのですけれども、会社の中で働く社員がより輝かしい人生を歩むことができなければ、患者さんにもそれをお届けすることができないだろう、と」
新内 「そうですね」
永田 「そういった想いをそこに込めて『Brighter lives, together』を掲げております」
新内 「すごいですね! 具体的にはどういった取り組みをなされているのでしょうか」
永田 「企業として、福利厚生制度を整えたりといった職場の環境づくりから、社会全体に向けた啓発活動を行ったりもしています」
2017年にスタートした「YSP」
そんな福利厚生制度の一環として立ち上げたのが「YELLOW SPHERE PROJECT」=「YSP」だ。


永田 「2017年にスタートしたプロジェクトなんですけれども、私たちは不妊治療の事業を行っているという関係もあり、どういう困難が不妊治療を受けるにあたってあるのかという声をたくさん聞いてきました。不妊治療って、今となっては、結構耳にする機会も増えてきているとは思うんですけれども、なかなかオープンにするのも難しいようなシーンもあるかもしれない。どうしても妊活、妊娠、出産というのは『個人の話でしょう』ということで済まされて、なかなか周りからサポートが得られないことも、もしかしたらあったかもしれない。でも、それは『個人の問題』ではなく、『社会全体で、あるいはその方が属する会社の問題として、社会全体でサポートする必要があるのではないか』と考えたのが、このプロジェクトのスタートに至った、私たちの想いです」
新内 「6月は『世界不妊啓発月間』です。確かに仕事と不妊治療の両立って大切なことだと思いますし、実際に私の友人も妊活に向けて会社をどうしても辞めなければならなかったという局面も見たり、聞いたりしています。具体的に『YSP』というのは、どういったプロジェクトなのか教えてもらえますか」
永田 「妊活ですとか、不妊治療と仕事の両立を目指す方々に対して、サポートの輪を広げていくことを目指しています。国立社会保障・人口問題研究所が2021年に実施した調査によると※1、日本では不妊治療を受けたことがある夫婦が、なんと4.4組に1組いらっしゃるんです。結構多いと感じますよね」
新内 「多い印象ですね」
永田 「ただ、その一方で、多くの企業が、これに対する支援制度を持っていないという課題があります」
新内 「うーん」
永田 「厚生労働省が2023年に実施した調査※2からも、やはり仕事と治療の両立、これが非常に難しい、と。つまり社会的課題として厚生労働省も見ているということですから、どれだけ重要なことかがうかがえるかと思います」
新内 「確かに、実際に私の友人も不妊治療をしている子がいるんですけど、仕事との兼ね合いが難しくて退職した友達もいるので、こういった制度があったり、企業が動いてくれたりとなると、すごく安心して働く環境が整っているなという印象です」
そこで同社は企業としてサポートすることが重要と捉え、「YSP」を発足させた。このプロジェクトは3つの柱で構成されており、1つ目が「教育啓発活動」。当事者であるカップル以外に、その周囲の人にも妊活や不妊治療について深く学ぶ機会を提供し、妊娠や出産といったライフプランニングについて理解を深めてもらい、「妊活サポートの輪を広げる」ことを目指している。


永田 「社員を対象にして、年に1、2回のペースで『不妊治療って何だろう』といったようなレクチャーを行っています。治療を受けるのは一部の社員かもしれませんけれど、その周りにいらっしゃる方が、この不妊治療ってどんなものなのか、どういう苦労があるのかといったことを知っておくだけでも、周りのサポートの得られ方というのは大きく変わると思うんですよね」
新内 「はい」
永田 「そういったことで、このような『教育啓発活動』というのは継続的にやっています。時には、患者さんからの声を聞くようなセッションを設けることによって、自分の治療じゃないけれども自分事として誰もが捉えられるようなシーンをできるだけつくりたいなということを考えて行っています」
2つ目は、不妊治療を受ける社員に対して年次有給休暇とは別に月1回の有給休暇を取得できる制度。これにより、社員が仕事を続けながら毎月治療を受けられるようサポートする。3つ目は不妊治療にかかる費用の助成の増額。今年1月に以前の年間上限20万円から在籍期間中の生涯上限315万円まで増やす制度改定を行った。
永田 「会社としても、気持ち良く『どうぞ、治療に行ってきてください』と言いたいわけですので、休みを付与するというのは、それにつながりますね。助成についても、2017年にプロジェクトをスタートさせた当初は年間10万円で、その後に年間20万円まで上限を引き上げました。それを今年一気に引き上げ、年間の金額ではなく、会社に属している在籍期間中という枠組みで、生涯上限315万円まで助成することになりました」
新内 「えっ!? 大幅に。あまり例を聞かない制度だと思いますし、制度があるだけじゃなくて、周囲の理解を育てるっていうのも大変だと思うんですけど、こうした支援があると安心して働こうというか、働きがいを見つけやすいのかなって思います」
永田 「そうですね。自分らしく働けるというのは、すなわち自分のパフォーマンスを向上するということになりますし、そういった環境は結果的に会社としては離職率が低下するというようなことにもつながってくるので、会社と社員がWin-Winの状況をうまくつくれる、そういう仕組みなのかなと思います」
新内 「素晴らしい取り組みですね!」
人々の人生をより輝くものにするためにさまざまな取り組みを行っているメルクバイオファーマ。次回は、より広い視点で「ファミリーフレンドリーな社会のあり方」や「私たち一人一人にできること」について、同社の取り組みを通じて考える。
<出典>
※1:第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)|国立社会保障・人口問題研究所
※2:令和5年度 厚生労働省 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査
(後編につづく)