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無理なく続ける脱炭素 「デコ活」が描く未来のライフスタイルと最新動向


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7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 13 気候変動に具体的な対策を
無理なく続ける脱炭素 「デコ活」が描く未来のライフスタイルと最新動向

猛暑や物価高騰が家計を圧迫する今、持続可能な社会への貢献と日々の暮らしの改善を両立させる動きが注目されています。その中心にあるのが、政府が推進する国民運動「デコ活(脱炭素×エコな生活)」です。エアコンの温度設定を見直す、マイボトルを使う、環境配慮型の商品を選ぶなど、どれも今日からできる、小さな一歩。今回は、暮らしを少し見直すことで未来を守る、そんな「デコ活」の最新プロジェクトをご紹介します。

まずは「できることから」。気軽に参加できるプロジェクトが続々

脱炭素に向けた第一歩は、「何ができるか」を知ることから。そして、その行動が具体的にどれくらいの効果があるのかが見えると、さらにモチベーションが高まります。

2025年の大阪・関西万博にて合わせてスタートした「EXPOグリーンチャレンジ」は、国民参加型の脱炭素プログラム。家庭や職場での行動を、専用のアプリを使って見える化することで、小さなエコアクションを楽しみながら継続できる仕組みです。

アプリで「マイボトルを使う」「食べ残しゼロ」など9つのアクションから取り組みを選び、毎日の行動を記録していくと、実際に削減したCO₂量がスコアとして表示されます。一定のスコアを超えると抽選でプレゼントが当たる特典もあり、家族や学校単位での参加も可能。2025年4月時点で、すでに約340トンの温室効果ガス削減を達成しました。

また、外食の場にも、新しい習慣は広がっています。「mottECO(モッテコ)」は、食べきれなかった料理を専用容器に入れて持ち帰る仕組み。セブン&アイ・フードシステムズをはじめとした民間企業主導のもと、環境省の支援を受けながら、外食チェーンや自治体、大学と連携しつつ展開。

デニーズやロイヤルホストなど、全国1200店舗以上で導入され、2024年度には82トンの食品廃棄物削減につながりました。「もったいない」を当たり前の行動へと変えるこの取り組みは、子どもとの会話のきっかけにもなりそうです。

「楽しい」がエコにつながる。移動・旅・買い物の最新トレンド

旅行もまた、脱炭素を意識するきっかけになります。日産と日本旅行をはじめとする全17社が連携して展開する「GREEN JOURNEY」では、電気自動車のレンタカーやカーボンオフセット付き新幹線を活用したツアーを提供。たとえば、熊本県阿蘇市や三重県志摩市の自然体験や地産地消のグルメを味わうなど、地域の魅力を楽しみながら環境にも配慮できる旅が好評を博しています 。

旅先ではLINEを使ったスタンプラリーや、環境配慮型の施設への訪問などの仕掛けも用意されており、「ただ楽しむ」だけでなく「学び・体験する」旅行として、中高生向けの団体ツアー「GREEN JOURNEY for SCHOOL」も2025年4月よりスタート。2033年までに累計利用者1,000万人以上の実現を目指すという目標も掲げられています 。

一方、移動にともなうCO₂排出量の可視化を試みる「Location-GXプロジェクト」では、スマートフォンの位置情報データを活用し、移動手段ごとのCO₂排出量を自動で計測。歩いた距離や交通手段に応じてスコアが表示され、「昨日より多く歩いた」「今日は電車で移動した」などの日常のちょっとした行動が、環境貢献として実感できる仕組みをと入れています。

2024年11月~2025年2月の実証実験では、延べ約1万8,140人が参加し、合計15,970kgのCO₂削減を達成しました 。

買い物や仕事のなかにも「脱炭素」の視点

「環境にやさしい商品を選びたいけれど、どれがそうなのかわからない」。そんな声に応えるのが、楽天とEarth hacksが連携して提供している「デカボスコア」。商品のCO₂排出削減率がひと目で分かるラベルを付け、製造から廃棄までの過程でどれくらいCO₂を減らしているかを示しています。

環境にやさしい買い物が、気負いなく日常に溶け込む。そんな仕組みを通じて、2024年度には92トンを超えるCO₂削減を実現。今後は、取扱商品の拡充やリアル店舗への展開も検討されており、“選ぶ”という行動の可能性が広がっています。

また、大阪府と日本総合研究所が展開する「おおさかで!減CO₂(ゲンコツ)」プロジェクトでも、カーボンフットプリント(CFP)やエコラベル付き商品で選びやすさを高め、消費行動の転換を目指す取り組みをしています。

スーパーや小売店では、共通デザインのPOPや商品棚を設け、来店者が環境に配慮した商品を手に取りやすいよう工夫。アプリを活用したキャンペーンも展開し、買い物そのものが脱炭素行動につながるように設計されています。

さらに、未来を担う子どもたちへのアプローチとして、大阪府内の全小学校・約21万人に学習キットを配布し、CFPやエコラベルについて学べる出張授業も実施。家庭や地域にも脱炭素の意識を広げるきっかけとなっています。

職場でのエコアクションも広がりを見せています。「One Team Challenge」は、NTTコミュニケーションズが中心となって展開する企業横断型の取り組み。社員の「階段を使う」「PCの省エネ設定をする」といった日常行動を可視化・共有し、チームで取り組む達成感も得られるのが特長です。

2023年度は13社・1,348名が参加し、約3万件のエコアクションが記録され、CO₂削減効果は約15トンを記録。2024年度からは東京都品川区の港南口エリアを中心に“ビル・街区”単位での実施へと拡大しており、都市や地域のGX(グリーントランスフォーメーション)を後押しする仕組みとして注目を集めています 。

暮らしを変える小さな一歩が、社会を変える大きなうねりへ

脱炭素というと、どこか「我慢」や「制限」といったイメージを抱きがちですが、「デコ活」が提案するのは、むしろ、快適で豊かに暮らすための新しい選択肢です。

たとえば、省エネ家電や断熱性の高い住まいは、環境にやさしいだけでなく光熱費も抑えられます。フードロスを減らす行動は、食材への感謝とともに家計にもやさしい。こうした行動が積み重なることで、地球環境と暮らしの両方に良い循環が生まれます 。

2025年は「デコ活」3年目 。現在では全国2,208の企業・自治体・団体などがデコ活応援団に参画し、国・自治体・企業・団体・消費者といった多様な関係者が連携する官民連携協議会として、地域ぐるみでの行動変容が進みつつあります。

国の掲げる「2030年度までに家庭部門66%のCO₂削減」という高い目標の実現には、企業や行政だけでなく、一人ひとりの暮らしの中からの変化が欠かせません。まずは、身近なところから。環境月間をきっかけに、自分にできる小さな「デコ活」を始めてみませんか?

脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動「デコ活」ウェブサイト
https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/


執筆 / フリーライター 小見山友子