「撮る」だけじゃない、その先の安心へ:スタジオアリスが描く、子育て支援の未来図
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スタジオアリスといえば、子どもの記念日を写真で残す“おなじみ”の存在。そんな同社が今、東京都と連携し、地域ぐるみで子どもを見守る「TOKYOこども見守りの輪プロジェクト」に参画し、進化を遂げています。
“写真館”という枠を越え、子どもとその未来に本気で向き合う企業として、スタジオアリスが今どんな歩みを始めているのか。本記事では、子育て世代のひとりとして、そして社会の一員として、その背景と広がりを丁寧に見つめていきます。
「“いつもの写真館”が、地域のセーフティネットになる日」


2025年5月、東京都とスタジオアリスは「子供を守る事業者連携事業に関する覚書」を締結しました。これは、東京都が推進する「TOKYOこども見守りの輪プロジェクト」の一環であり、商業施設や企業と協働して地域の見守り体制を強化する取り組みです。背景には、都内で小学生以下の子どもが被害者となる凶悪事件(暴行・性犯罪・傷害など)が、過去5年平均で年間200件を超えているという深刻な実態があります。
プロジェクトの目的は、親子が訪れる身近な場所から防犯意識を高め、子どもたちの安全を地域全体で支えること。スタジオアリスが持つ全国415店舗というインフラ、そして親子にとって安心できる空間という特性が、この連携に大きな意味を与えています。


同社の具体的な取り組みとしては、まず、子ども向けに制作された30秒の防犯アニメーションを、店頭サイネージやSNSで公開。日常の中で自然に防犯意識が育まれるような仕組みを届けています。来店した子どもには、ぬりえ形式の啓発ツールも配布。遊びながら防犯について考える、親子の対話のきっかけづくりにもなります。
さらに、子どもが下校する時間には、スタッフが店舗周辺で見守り活動を行うなど、地域の安全を支える日常的な関わりも大切にしています。店頭に掲示される東京都提供のステッカーは、地域ぐるみで子どもを守るという意識の“見える化”にもつながっています。


実はスタジオアリスは、以前から子育て支援に力を入れてきた企業です。中でも注目すべきなのが、2018年に始まった「ママのミカタPROJECT」。社会の変化にあわせて2024年には「みんなで子育てPROJECT」へと名称を新たにし、ママだけでなく、パパや祖父母、地域の人々など、子育てに関わるすべての人とともに子どもを育むという視点へと歩みを広げました。


たとえば、一部の店舗では、授乳室を設置し無料で開放するなど、親子にやさしい環境づくりに取り組んでいます(※設置の有無は店舗により異なります)。また、赤ちゃんと一緒に楽しめる「ベビーセミナー」も各地の店舗で開催。身体測定や足型を押した月齢記念シートのプレゼントのほか、ベビーマッサージ、王冠づくり、足型アートなど、親子のふれあいを大切にしたプログラムが用意され、“成長の記録”と“思い出づくり”が自然につながる体験の場となっています。マタニティ期にはヨガや助産師による講座などを組み合わせた妊婦さん同士の交流や学びの場も提供。また、グループ会社によるベビーシッター事業「アリスシッター」では、送迎・病後児保育・家事支援など家庭の状況に合わせた多様なサポートを展開し、育児を“孤立させない”仕組みづくりにも力を注いでいます。
子どもの笑顔を撮ることだけにとどまらず、「日々の暮らしの中でも、こどもたちの笑顔が広がっていくような社会づくり」へとその役割を拡大するスタジオアリス。今回のプロジェクト参画は、CSR(企業の社会的責任)の取り組みとしても、実効性と温かみを兼ね備えた新たな一歩といえるでしょう。
「子育て世代に身近な企業が、家庭と社会を見つめ直していた」


子どもが生まれてからというもの、スタジオアリスは記念日や行事のたびに自然と身近な存在になりました。でも、“写真を撮る”だけではない取り組みをしていたことは、今回初めて知ったのです。ママ友との会話でも定番のように出てくる企業名ですが、防犯や地域連携の活動まで行っているとは思っていませんでした。
そうした「知っているつもりの企業」が、実は社会課題に真正面から取り組んでいる。企業が果たすべき責任という言葉が、少しだけ自分ごとに近づいた気がします。
とくに印象的だったのは、「ママのミカタ」という名称から、「みんなで子育て」へとプロジェクト名を刷新したこと。母親だけでなく、父親や祖父母、地域の人々といった、多様な立場が“主語”になれる育児支援へと視点を広げた姿勢に、企業の柔軟さと誠実さを感じました。
SDGsの観点からも、目標16「平和と公正をすべての人に」、目標3「すべての人に健康と福祉を」や目標8「働きがいも経済成長も」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に通じる取り組みです。身近な企業が動き出すことで、社会全体の意識が少しずつ変わっていく。そんな希望の一端が、このプロジェクトにはあるように思います。


写真には、その瞬間の感情と想いが写ります。そしてその一枚が、家族の未来を照らすこともある。スタジオアリスは、そんな“未来の宝もの”を残す企業から、子どもたちの「安全」や「安心」までをも支える存在へと歩みを進めています。
企業が社会とどう関わり、どんな責任を果たしていくのか。それは数字や実績だけでは測れない“温度”のある姿勢で伝わってくるもの。子どもたちが笑顔で育っていける社会を、誰かではなく「みんな」でつくっていく。その輪の中に、私たち生活者もまた、自然と包まれているのかもしれません。
執筆/フリーライター シナダユイ