AIと音楽が教育現場を変える──Kahoot!が実現する“楽しく学べる教室”とは?
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現在大きな転換点を迎えている日本の教育現場。例えば、読売新聞オンラインの記事によると、公立学校では教員不足が4,300人超にものぼるそう。さらに、OECD調査に目を向けてみると、日本の教員の労働時間は加盟国の中でも最長水準にあり、中学校では週55.1時間、小学校では52.1時間に達しているのだとか。授業準備や教材作成といった“見えない労働”への負担が大きく、「隠れ残業」が社会問題となっています。
こうした状況のなか、教育現場で急速に浸透しているのが生成AIやデジタル教材の導入。そこで今回着目したのは、広告費に頼らず、教育現場の口コミだけで国内参加者1億人を突破したデジタル学習プラットフォーム「Kahoot!」です。このツールこそ、教員不足が深刻化する今、さらに存在感を高めていきそうです。
“学びの楽しさを新発見すること”を掲げるノルウェー発のデジタル学習プラットフォーム
2026年3月の最新調査で、公立小中学校の教員の56%が生成AIを利用していることが判明したほど、今や当たり前になっているデジタルツール。その中で、急速に広まっているのが、今回取り上げるノルウェー発のデジタル学習プラットフォーム「Kahoot!」です。2013年に誕生した本プラットフォームが掲げるのは、“学びの楽しさを新発見すること”。それを実現するべく、クイズ形式のインタラクティブな教材を誰でも簡単に作成・共有できるという特徴を持っています。GIGAスクール構想によって1人1台端末環境が整備された昨今、生徒はスマートフォンやタブレットを使い、ゲーム感覚で授業に参加できるのです。
GIGAスクール構想で浮かぶ教育現場のリアルな課題とは?
なお、Kahoot!で注目したいのは、日本での広がり方。実はKahoot!は、広告費をほとんど投じることなく、教員同士の口コミによって普及してきたという背景を持っているんです。2021年に日本向けサービスを本格展開して以降、国内累計参加者数は1億人を突破。常に20万人以上の教員が活用していることから、爆発的な浸透率が窺えますが、ここには、「現場が本当に必要としていた」という事情があると言えるでしょう。その事情とは、GIGAスクール構想によって、1人1台端末環境は整ったこと。それにつれて、多くの教員が新たなICT対応を求められるようになったこと。しかし、日々の業務に追われる中、ゼロからデジタル教材を作ることは容易ではありません。そこでKahoot!は、授業ですぐ使える教材を共有・再利用できる仕組みを提供。教員の準備負担を大幅に軽減することに貢献してきました。


さらに今回Kahoot!が、ユニバーサル ミュージックが展開する英語教育支援プロジェクト「UM English Lab.」とのパートナーシップを発表したことで、“楽しく学べる教室”への実現に一層の拍車がかかったように思います。
単なる“音楽教材”を越えた体験へ
さて、このパートナーシップ締結を深掘るために、筆者が足を運んだのが教育総合展EDIXです。Kahoot!が初出展した本展覧会で、ユニバーサル ミュージックが手掛ける洋楽×教育プロジェクト「UM English Lab.」 との特別セッションが開催されたのです。
ちなみに、「UM English Lab.」とは、ユニバーサル ミュージックが保有する豊富な洋楽楽曲を活用し、英語教育向けのオリジナル副教材を全国の教員に向けて無償で提供するプロジェクトのこと。Kahoot!とのパートナーシップを通して、この魅力的な音楽コンテンツが、参加型の教材として日本の教育現場に広がっていきます。




具体的には、ジャクソン5の楽曲から単数形・複数形の文法ルールやアーティストにまつわるトリビアに触れたり、カーペンターズの「Sing」を通じて発音時のリンキングを学んだり……世界的アーティストの楽曲を活用し、英語学習コンテンツをKahoot!上で提供される模様。生徒たちは英語を“暗記科目”ではなく、実際に使われる言語として体験できるのです。
英語力や異文化理解が自然に身に付く


筆者も実際に、特別セッションの中でUM English Lab×Kahoot!を体験してみました。上の画像は、そのときのランキング結果。世界的ヒット曲を聴きながら、 Kahoot!上で歌詞にまつわる質問に挑戦することで、エンタメとして純粋に楽しむことができたのが興味深かったです。一人で黙々と行うのではなく、周りの参加者たちとゲーム感覚で競い合うことで、主体的に取り組むこともできたように思います。英語力はもちろんですが、異文化理解の面からも、自然のうちに向上を目指せそうです。これはSDGsの観点から見ても重要な取り組みでしょう。
ただ机に向かって学ぶだけではない。このパートナーシップを通して、より能動的に学ぶ楽しさを感じられること、多様な学習機会へアクセスできること、そして教員自身が持続可能な働き方を実現できることが見いだせるかと思いますが、これはSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」と結びつきます。また、冒頭にも述べたように、教員の長時間労働が問題視される中、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」にも直結する内容と捉えられるはずです。教材準備に追われる時間を減らし、生徒と向き合う時間を増やすことは、教育の質そのものを高めることになるのではないでしょうか。
テクノロジーが生み出す豊かな学習体験
UM English Lab×Kahoot!の提携が示しているのは、効率化だけではない学習の創出。テクノロジーを通して、「楽しい」「参加したい」と感じられる学びを積み重ねていくことが、持続可能な教育環境を形づくっていきます。AIや音楽、ゲームといった一見異なるように感じられる領域の融合が、教員不足をはじめとした、日本の教育現場の課題にアプローチする──“テクノロジー=学びを持続可能にするインフラ”としての第一歩でしょう。
執筆/フリーライター・黒川すい
【参考】
・読売新聞オンライン「公立校の教員不足深刻、昨年4月時点の欠員4317人に…4年前の1・7倍に増加」
・朝日新聞「日本の教員は仕事時間が最長 「授業」は短いのに OECD国際調査」





