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体長1mmの線虫が起こす“検査革命”。HIROTSUバイオサイエンスが目指す、誰もが健やかに暮らせるサステナブルな社会


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を 7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
体長1mmの線虫が起こす“検査革命”。HIROTSUバイオサイエンスが目指す、誰もが健やかに暮らせるサステナブルな社会

「がん」の早期発見という社会課題に、SDGs視点で挑む

いまや日本人の2人に1人が生涯のうちに罹患すると言われる「がん」。技術の進歩によって、早期にリスクを発見できれば適切に対処できる時代になった一方、定期的に検査へ足を運ぶ人は決して多くありません。
仕事や育児の忙しさ、検査に伴う肉体的・精神的な負担、あるいは近くに検査できる施設がないといった、アクセス性の課題が背景にあります。

こうした「検査へのアクセス」という根深い社会課題に対して、全く新しいアプローチでイノベーションを起こしている企業があります。線虫によるがんのリスク検査「N-NOSE®(エヌノーズ)」を展開する、株式会社HIROTSUバイオサイエンスです。

SDGs(持続可能な開発目標)の目標3には「すべての人に健康と福祉を」が掲げられていますが、同社が培ってきた最先端の生物診断テクノロジーは、私たちの健康意識を高めるだけでなく、これからの社会が抱える環境負荷や地域格差を解決する、新しい検査インフラとしての可能性を秘めています。

ポスト投函で検査の「地域格差」をなくす

SDGsの根幹にある理念は「誰一人取り残さない(leave no one behind)」です。しかし、従来の検査システムには、物理的な距離や時間の壁というハードルが存在していました。

N-NOSE®の最大の特徴は、少量の尿を自宅で採取するだけで、手軽にがんのリスクを調べられるという点にあります。痛みを伴わず、検査への心理的・肉定的ハードルを下げるこのシステムは、それ自体が受検の機会均等に貢献してきました。
さらに同社は、大きな技術革新を成し遂げます。それまで必須だった冷温輸送の手間を克服し、独自の技術によって「尿検体の常温輸送」の実用化に成功したのです。

これにより、利用者は自宅近くの「郵便ポストへ投函するだけ」で検体の提出を完了できるようになりました。配送拠点や回収エリアの制約から解放されたことで、近くに提出拠点がない地方エリアや離島に住む人々へも等しく検査の機会を提供できるようになり、まさに住む場所やライフスタイルに左右されない「検査アクセスの平準化」に大きく貢献しています。

生き物の力を借りる、環境負荷の低いクリーンな検査

SDGsのもう一つの主軸として注目したいのが、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」へのアプローチです。一般的な大型の検査機器を動かすには膨大な電力消費が伴い、社会全体のエネルギー負荷の一因にもなり得ます。

それに対し、N-NOSE®のコアテクノロジーは「生き物(線虫)の能力」そのものです。体長約1ミリメートルの線虫が持つ、非常に優れた嗅覚(がん患者の尿の匂いに近づく特性)を利用してリスクを判定します。
検査のプロセスにおいて余分な電気エネルギーを大量に消費しないこの手法は、自然界の力をそのまま応用した、極めてクリーンで地球環境に優しい新世代の検査スタイルと言えます。

また、前述の「常温輸送へのシフト」は、エネルギー効率の向上にも直結しています。特殊な冷蔵・冷凍車両を別途手配・巡回させる必要がなくなり、既存の郵便インフラという共通のアセット(仕組み)に組み込んで検体を回収できるため、輸送にかかるエネルギーやCO2排出量の抑制にも間接的に貢献しています。

常温輸送の実現と、念願の年間黒字化を達成

どれほど素晴らしいSDGsの理念を掲げていても、企業としての経済活動が持続可能(サステナブル)でなければ、そのサービスを社会に提供し続けることはできません。
同社の直近の事業報告によると、常温輸送への切り替えやロジスティクスの抜本的な見直しを行った結果、事業の効率性が大幅に向上。当事業年度において、12か月連続の月間黒字、および年間での黒字化を達成したことが発表されました。

「サービスが普及すればするほど、組織としても健全に存続し、さらなる精度向上や次の研究開発へと投資できる」という好循環に入ったことは、社会的意義のある検査サービスを未来へ残していく上で、非常に大きな意味を持ちます。

パートナーシップで広げる、未来への安心

同社の挑戦は、外部との積極的な連携(目標17:パートナーシップで目標を達成しよう)によっても社会へ広がっています。現在、導入法人数は2,600社を突破しており、企業の職域検診や福利厚生の枠組みを通じて、働く人々の健康を支えるパートナーシップが拡大しています。

さらに、日本相撲協会などスポーツ団体とのパートナー契約を通じ、普段は健康や検査に関心の薄い層へも「早期発見の大切さ」を分かりやすく発信する啓発活動を続けています。
また、社内の従業員構成においても女性比率が半数を超えるなど、ダイバーシティに配慮した持続可能な組織づくりも進められています。

小さな生物が変える、私たちの未来の安心

2026年3月には、世界最大の市場である米国へ本格展開するための現地法人「Hirotsu Global Inc.」を設立し、次世代AI技術との融合(N-NOSE®+AI)による、ヘルスケアビッグデータ企業への進化も始まっています。

研究室の中で生まれた「線虫の嗅覚」という基礎研究のバトンを、徹底的な技術革新によって社会実装へと導いたHIROTSUバイオサイエンス。
「健康を守ること」と「地球環境への負荷を減らすこと」、そして「企業として利益を上げ持続すること」。
これらを三位一体で実現しようとする同社の挑戦は、私たちが目指すべき、これからのサステナブルな医療・社会インフラのあり方に、非常に明快な答えを提示してくれているのではないでしょうか。

小さな線虫が起こした検診革命の未来に、これからも注目が集まります。