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ジェンダー間の運動格差はどう縮める?“女性にとっての運動”について今改めて考えよう


この記事に該当する目標
5 ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダー間の運動格差はどう縮める?“女性にとっての運動”について今改めて考えよう

スポーツメーカーのアシックスが、運動におけるジェンダー格差を解消するため、世界規模の研究調査プロジェクトを実施。 
女性が運動やスポーツをする上での障壁、動機づけ、促進要因を明らかにすることを目的とし、さまざまな年齢、運動機会、地域における女性の運動、スポーツ参加に影響を与える要素を考察しました。

今回の調査は、世界各地から参加した24,772人のアンケート回答者と26のフォーカスグループから得たデータをもとに、ケンタッキー大学の助教授であるディー・ドルゴンスキー博士※1が主導し、キングス・カレッジ・ロンドンのブレンドン・スタッブス博士※2がサポートしました。

また、日本国内においては成城大学の研究機構であるスポーツとジェンダー平等国際研究センター副センター長の野口亜弥さん(文芸学部専任講師)が参画し、日本特有の文化や社会環境などを加味しながら分析を行いました。

※1 ケンタッキー大学スポーツ医学研究所の助教授で女性の運動と健康に関する研究者 
※2 キングス・カレッジ・ロンドン勤務で運動とメンタルヘルス研究の第一人者

精神面にもプラスに働く運動、「したいのにできない」女性が半数以上

この調査の結果わかったのは、女性の運動機会と精神状態には相関関係があることです。調査に参加した女性は、定期的に運動していないときと比較し、定期的に運動しているときは幸福感が52%、自信が48%、集中力が38%増すという結果となりました。 また、定期的に運動していないときは、ストレスやイライラの度合いがそれぞれ67%、80%高まりました。

その一方、調査に参加した半数以上の女性が残念ながら思うように運動する機会をつくれておらず、運動による身体的、精神的メリットを享受できていないこともわかりました。主な理由は「時間が足りない (74%)」、「安全な場所や環境がない(43%)」、「体力がなく、スポーツをする気分にならない(42%)」、「自信がない(35%)」などです。

運動することが体だけでなく精神的にもいいならばぜひ普段の生活に取り入れたいところですが、思うようにその時間がとれないという女性は多いようです。

影響力が大きいのは自分の周りの身近な人?女性が運動をはじめる動機になるもの

また同じ調査で、3分の1以上の女性が、自身の最大のインフルエンサーは友人や自分と同じような女性であると考えていることがわかりました。これは、有名人が影響力をもつ現代社会でも、女性はもっと身近な存在から運動や新しいスポーツを始めようとする可能性が高いことを意味しています。

また、周りの女性だけでなく両親やパートナーも影響力があり、男女ともに女性のスポーツ参加にきっかけを与えうることがわかりました。

なぜ運動するのかという質問に対しては、「身体的健康面でのメリット(96%)」、「メンタルヘルス(92%)」との回答がそれぞれ90%を超えました。

男性より女性の方が運動時間が短い・・解決策は?

今回の調査が女性だけをターゲットに行われたのにはある理由があります。2022年に、アシックスが運動とメンタルヘルスの関係性における調査「ASICS State of Mind」 を実施した結果、世界的に男性と比較して女性は運動量が少なく、その中でも特に若い世代の運動時間が短いことが分かりました。
その結果をふまえ、女性の運動機会を増やすために何をする必要があるかを明らかにするため行われたのが今回の調査です。

この調査を主導したディー・ドルゴンスキー博士は、「ジェンダー間の運動格差は複雑な課題です。一朝一夕に生まれたものではなく、ひとつの方法で解決できるものでもありません。女性の運動機会を増やすためには、身体を動かすことをより身近に感じてもらい、女性がもっと運動しやすい環境をつくっていく必要があります。」と述べました。

また、日本国内で分析を行った成城大学研究機構スポーツとジェンダー平等国際研究センター副センター長野口亜弥さんは、「日本でのグループインタビューを通じて、女性が運動やスポーツに求める価値は、身体的なものに加え、精神的メリットとなる仲間とのつながりなども重視していることが分かりました。運動を行うことで健康になるということはもちろん大事ですが、人生をより豊かにするといった視点で運動を取り入れることもできます。また、運動と聞くと少し身構えてしまう方が多いため、運動に対するイメージを変えていくことも必要かもしれません。日常生活での身体活動、例えば自宅で掃除機をかけることなども運動としてとらえることで、みなさんの運動に対するイメージも変わってくるのではないでしょうか。運動にはさまざまな方法でアクセスすることができます。ぜひ、身体を動かすことを、より身近なものとしてとらえていただければと思います。」とアドバイスしました。

野口さんの言うように、日本では運動に苦手意識を持つ女性も多いかもしれません。日々の家事や移動などに運動の要素をプラスして少しずつ体を動かす習慣をつけていくと、体だけでなく心にもいい作用がありそうです。

調査期間:2023年6月〜9月 
回答者数:40か国以上 24,959人※3
(オンラインアンケート:24,772人 フォーカスグループインタビュー:187人)
調査方法:オンラインアンケート
(定量調査)およびフォーカスグループインタビュー
(定性調査)からなる混合調査方法※3 
調査した国:オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、 韓国、日本、オランダ、ニュージーランド、サウジアラビア、シンガポール、スペイン、 タイ、マレーシア、アラブ首長国連邦、英国、米国など

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執筆/フリーライター Yuki Katagiri